堀口珈琲
横浜ロースタリー

おいしさと、安全と、安心を

堀口珈琲のロースタリーは「コーヒーを、よりおいしく、より多様に、そして衛生的に」と
欲張りな目標を実現するために設立しました。
機械が得意な分野は機械に任せ、人は手仕事の良さが発揮されるパートに集中する、
そんな思想を詰め込んだロースタリーです。

生産国から横浜、
そしてみなさまのお手元へ

日本は世界でも有数のコーヒー消費国です。ただ、残念ながらコーヒーの栽培適地はなく、生豆のほぼ100%が熱帯・亜熱帯の生産国から輸入されています。
生豆が到着するのは、主に横浜港と神戸港。特に日本に到着するコーヒーの半分近くは横浜港で荷上げされます。堀口珈琲が取り扱う生豆も、そのほとんどが横浜港に到着し、港湾地区内にある倉庫で焙煎直前まで保管されます。
堀口珈琲は、基本的に、産地から倉庫まで温度管理されたコンテナで生豆を運びます。到着後も温度管理された倉庫で保管します。生豆を、焙煎直前まで、できるだけ良い状態に保つためです。
さらに、横浜ロースタリーは保管倉庫の目と鼻の先、直線距離で600mほどの場所にあります。そのため、速やかに生豆を運び込むことができ、生豆に余計な負荷を与えることがありません。立地にもこだわり、産地からロースタリーまで大切に管理した生豆に、丁寧に焙煎などの加工を施し、みなさまのお手元においしいコーヒーをお届けします。

流通について

生産国から冷蔵コンテナで運ばれた生豆は、横浜ロースタリーで焙煎やブレンドを行い、みなさまのお手元にお届けします。

ロースタリーを
覗いてみよう

横浜ロースタリーの工程は、正面左側にある入荷前室から始まり、コの字を描くように進み、
正面右側にある出荷前室から出荷されていきます。地図と動画で実際に見学してみましょう。

動画で工程を見学!

生豆の搬入

横浜ロースタリーには、使用する分だけの生豆が近隣の保管倉庫から定期的に届きます。その後、入荷前室で開梱し空気搬送機で生豆を吸い上げ、館内を走るパイプを通じて次の工程(生豆の機械選別)が行われる部屋へと運ばれます。

スタッフ
スタッフ薄波から一言

最初の工程で、最も配慮しているのは『衛生面』。大切な原料である生豆だけを次の工程へ送り、配送用の麻袋や段ボールはすべて入荷前室で脱ぎ捨てます。

生豆の機械選別

入荷前室から空気搬送機で運ばれてきた生豆を色差選別機で一粒ずつチェックします。紛れ込んでいた異物や不良な生豆を見つけると、圧縮空気で吹き飛ばして除去します。選別の基準は生豆の銘柄ごとに変えています。

スタッフ
スタッフ木村から一言

わずかな設定の違いで選別の精度は変わります。生豆の状態や不良豆に合わせて細かな設定を施し、次の工程により良い状態で渡せるように日々調整しています。

生豆の温度調整

選別後の生豆(良品)を銘柄ごとに一時保管します。焙煎機に投入するときの生豆の温度を揃えるため、生豆保管室内の気温も一定に保たれています。焙煎直前になったら空気搬送機を使って焙煎室に生豆を送り込みます。

スタッフ
スタッフ田中から一言

ここが焙煎前に生豆の状態を確認できる最終ポイントです。表面温度、水分値、外観の特徴等、生豆を観察して得た情報を焙煎担当者に伝えています。

焙煎

生豆保管室から送られてきた生豆は空気搬送機の終点にある容器(ローダー)に一時貯留し、焙煎開始時に焙煎機の上部のホッパーを経由して内部の炉に投入します。焙煎者が炉内の状況やコーヒー豆の様子をデータと自身の感覚で把握し、焙煎機を操作しながら焙煎を進めます。

スタッフ
スタッフ秦から一言

外部環境や生豆の些細な変化を逃さず、素材の良さを“取り出す焙煎”を心掛けています。毎日の風味確認から焙煎の安定と向上を追求しています。

焙煎豆の機械選別

冷却後の焙煎豆から異物や不良な焙煎豆を除去します。一次選別には色差選別機を用います。仕組みは生豆の選別機と同じです。不良な焙煎豆とは、色づきの悪いものや焦げてしまったものなどを指します。

スタッフ
スタッフ中島から一言

異物や不良な焙煎豆をできる限り取り除き、次の手選別の負担を軽減します。焙煎豆の色づき方は日々変化するため、細かな調整が必要です。

焙煎豆の手選別

色差選別機で判別しづらい微妙な違いのものを、人が見て判断し手で取り除きます。この部分を機械に任せてしまうと、誤って多くの良品も一緒に取り除かれてしまいます。また、機械をすり抜けてしまったものがないかチェックする役割も果たします。

スタッフ
スタッフ竹内から一言

最後のチェックはやはり人の目。味わいのことを常に考え、的確に、かつスピーディに。「ここが選別の最終関門!」そんな思いで業務に取り組んでいます。

焙煎豆のブレンド

ブレンド商品をつくる場合、複数の銘柄の豆を混合します。均一に混合できるよう専用の機械を用いて焙煎豆を撹拌します。

スタッフ
スタッフ持丸から一言

状況に応じて変更される20種類以上のブレンド要素の管理が主な仕事。実は1日の焙煎スケジュールのコントロールも行う、やりがいのある業務です。

包装・検査

焙煎豆の個別包装は人の手で行います。多品目のため、機械では対応しづらいことが理由です。包装後、ウェイトチェッカーとX線検査機を用いて、内容量(重量)が適切であることと異物が混入していないことを1パックずつ確認します。

スタッフ
スタッフ中島から一言

充填・包装室は最も衛生レベルが高いエリアで、専用の白衣を着用します。製造の最終工程となるため、細心の注意を払って業務に取り組んでいます。

おいしさを
最大化するために

スペシャルティコーヒーのおいしさの源が、生豆の品質であることは間違いありません。そして、どんなに優れたロースターでも、生豆のポテンシャルを超えた焙煎豆に仕上げることはできません。ただ、「生豆の品質さえ良ければ、おいしいコーヒーが約束される」とも言い切れません。生豆のポテンシャルを引き出し切るのは簡単でなく、反対に、台無しにすることはとても簡単だからです。
スペシャルティコーヒーロースターである以上、“生豆のポテンシャルを台無しにしない”は、最低限クリアしなければいけないハードルです。しかし、このハードルはなかなか高く、素材の知識と理解、加工の知識と技術、必要な設備の整備を、ある程度の水準で満たす必要があります。そして、ポテンシャルを引き出し切る道は、さらにその先に開けています。
横浜ロースタリーは、焙煎手法も含め、これまで堀口珈琲が行ってきた加工を、設備とオペレーションの両面から抜本的に見直し、設計しました。そして、「生豆のポテンシャルを引き出し切るにはロースターは何をすべきか」を念頭に、竣工後も、設備とオペレーションの両面から、改善を続けています。

取り出す焙煎

焙煎作業

詳しい技法は一部非公開ですが、横浜ロースタリーでは、
生豆に対し偏った加熱を避ける焙煎を心がけています。
最高品質の生豆からは、そのポテンシャルを自然に取り出すことが大切、と考えているからです。
この“取り出す焙煎”を実現しやすくするために、次のことを行っています。

温度計アイコン

生豆の温度調整

焙煎は生豆を加熱していく工程です。加熱の仕方によって、酸の量や質など、風味の要素は変化します。その中でも、“焙煎の終わり”である“煎り止め”は、浅煎りや深煎りなど焙煎度を決める重要なポイントで、全てのロースターが気を配っているはずです。
一方で、“焙煎のはじまり”は多少配慮されるものの、そこまで重要視されないことが往々にしてあります。
しかし、どのように加熱していくか、に関わる大切なポイントです。“焙煎のはじまり”の一つの要素である“生豆の温度”が焙煎毎に変化してしまうと、加熱の具合も焙煎毎に変わってしまうからです。場合によっては、無理な加熱や過度な加熱に繋がり、風味のバランスを大きく崩してしまいます。安定的に適切な熱を加えていくには、開始温度の設定とその安定に気を配ってあげる必要があります。
横浜ロースタリーでは、生豆を受け入れた後、定温室に一定時間保管し、温度を調整してから焙煎にかけます。こうすることで、季節や天候による初期条件のばらつきを減らし、意図した焙煎が持続的に実行しやすくなります。

パソコンアイコン

焙煎データの計測

全ての焙煎において焙煎機内の温度変化を計測します。そして、焙煎機の操作履歴とともにデータとして蓄積します。風味確認時に焙煎データと照らし合わせ、生豆の状態なども勘案し、次回の焙煎に活かしていきます。
勘違いしてはいけないのは、うまくいった焙煎データの温度変化グラフを再現すれば、同じようにうまくいく訳ではないことです。温度変化以外にも焙煎を変化させる要因はあります。そもそも、計測している温度は、焙煎機内の一部の箇所に設置したセンサーが計測した温度に過ぎません。
焙煎データを参考にし、データ以外の観点も踏まえ、次の焙煎に落とし込めることが、焙煎者には求められます。

工場アイコン

さらなる環境作り

焙煎機を取り巻く環境も焙煎に大きく影響します。外気の取り込み方や取り込む量に、室内の温度や湿度・気圧は影響を受け、これらの変化が、焙煎時の加熱や排気に影響を与えるからです。焙煎を安定させるためには、一定の環境を維持することが望ましいと言えます。
そのため、横浜ロースタリーでは、焙煎機の稼働状況に応じた外気の取り込み量の管理、空調設備の見直しによる温度調整など、できるかぎり環境の安定化をはかっています。
しかし、相手は気候や空気の流れです。現実的には完璧にコントロールすることは難しく、完璧を目指すとなると維持・管理に膨大なコストがかかってしまいそうです。それでも、どうしたらコストをかけ過ぎずにより良い環境を整えられるかを、竣工後も模索し、少しずつ手を加えています。

機械と人で徹底して磨く

機械と人

堀口珈琲で使用する生豆は、スペシャルティコーヒーと呼ばれるものの中から、
さらに選りすぐった素晴らしいものばかりです。これだけの品質の生豆を、
多様に取り揃え続けられることは、私たちの誇りでもあります。
しかし、それだけ高い品質の生豆でも、多少の異物や不良豆は混入してしまいます。
生豆は農産物であること、そして、その形状と加工工程から、いたしかたないことです
(「もっと取り除いてね」と生産者側にリクエストしてしまいますが……)。
そこで、横浜ロースタリーでは、【生豆の機械選別】【焙煎豆の機械選別】【焙煎豆の手選別】の
3つの選別を施し、生産者から引き継いだコーヒーに磨きをかけています。

生豆の機械選別

生豆の機械選別

焙煎豆の機械選別

焙煎豆の機械選別

焙煎豆の手選別

焙煎豆の手選別

【取りすぎ注意!】

徹底して磨くといっても、生産者が丁寧に作ってくれた生豆は、できるだけ使い切りたい大切なものです。闇雲に疑わしいものをどんどん取り除く、はNGで、異物や風味上除去すべき不良豆だけを“的確に”取り除く、を目指しています。
3段階選別は「たくさん取り除いています!」のアピールではなく、不良豆を的確に取り除くために設計されています。

不良豆の取り除き

【機械と人の得意・不得意】

機械が得意な選別
機械が得意な選別

機械が得意なのは、何といってもスピード。比較的わかりやすい差異を的確に捉え、人とは比較にならない圧倒的なスピードで選別してくれます。生豆段階、焙煎豆段階の双方で、わかりやすい差異の選別を担当してもらっています。

機械が苦手な選別
機械が苦手な選別

機械が苦手なのは、微細な差異です。この差異を機械に担当してもらおうとすると、不良豆と一緒に良い豆も道連れにしてしまいます。そこで人の出番です。微妙な差を、豆の種類に応じて、認識し、取り除いていきます。機械にはスピード面で追いつくことはできませんが、機械が取れないもの、見逃してしまったものをここでカバーします。さらに、取り除いた微妙な差異の豆を適宜風味確認し、とるべき豆の認識精度を高めています。

機械も人も苦手な選別
機械も人も苦手な選別

ここまでの工程で、人と機械の得意分野が活かされ、全ての不良豆を選別できました。と、なれば良いのですが、残念ながら、機械も人も不得意な不良豆があります。
“虫食い豆”です。
局所的な変化をピンポイントで発見する必要があるため、機械も人も見落としやすい不良豆です。こればかりは、3回の選別を通して、人と機械が協力し、少しずつ取り除いていくしかありません。

おいしさを支える風味確認

風味確認

横浜ロースタリーでは、焙煎ごとに必ずサンプルを採取し、
焙煎ごとに風味確認を2回ずつ行います。

【1回目の風味確認】

1回目の風味確認

焙煎したコーヒー豆がお客様の手元に届く前に、全焙煎に対し、1回目の風味確認を行います。選別や検査、衛生管理に基づいた安全なコーヒー豆作りに加え、風味においても適切な商品であることを担保するためです。
万が一、焙煎に問題があることが発覚した場合は、出荷を差し止め、再度焙煎したものを出荷することになります。差し止めの発生事例は数える程しかありませんが、おいしさを担保する大切なゲートキーパーの役割を果たしています。
加えて、全てのサンプルをチェックし続けることで、生豆と焙煎、仕上がった風味を紐付けることができるようになっていきます。ロースターが、より良い焙煎を模索する基礎を自然に身につけられる、という副次要素もあります。

【2回目の風味確認】

2回目の風味確認

焙煎豆がお客様の手元に届いた後のタイミングで2回目の風味確認を行います。焙煎に問題があるかの確認は、焙煎直後にチェックすれば十分ですが、よりポジティブに“取り出す焙煎”を目指すには、ある程度時間が経過してからの風味もチェックする必要があります。焙煎直後すぎると、抽出されにくかったり、焙煎直後特有の香りにより、抽出される風味のバランスが崩れやすく、厳密な判断が難しいためです。
また、そもそも、焙煎直後のチェックだけでは、お客様に楽しんでいただく状態からも乖離しています。焙煎直後だけがおいしいロースト豆を目指すことになりかねず、お客様ではなく焙煎者のための焙煎になってしまうかもしれません。したがって、おいしさに向けての検討においては、1回目より2回目の風味確認のコメントが優先されます。

衛生管理もしっかりと

横浜ロースタリーでは、コーヒーのおいしさと多様性を追求するクラフトワークに加え、生産施設としての衛生管理にも気を配っています。焙煎豆の製造には水を使用する加工工程がなく、焙煎豆はリスクの低い加工品と言えます。しかしながら、堀口珈琲では、おいしいコーヒーを、より安全に、より安心してお楽しみいただくために、次の取り組みを行っています。

ゾーニング

ゾーニング

まず、打合せや事務作業を行う“一般区域”と、製造を行う“作業区域”に大きく分けています。
作業区域は衛生レベル別に“汚染区”“準清潔区”“清潔区”の3つにさらに区分けしています。
それぞれの区域は物理的に遮断し、人・物ともに自由に行き来することはできません。
汚染区:生豆を扱う区域です。
準清潔区:焙煎豆を扱う区域です。
清潔区:商品への仕上げと検査を行う区域です。

区分けの基準

区分けの基準

生豆にはチリ(豆の殻に由来するものが多い)などが付着しており、その衛生度は必ずしも高いとは言えません。そこで、生豆を扱う区域と焙煎豆を扱う区域を分割し、焙煎豆を扱う区域の衛生度を高めています。焙煎豆を扱う区域の中でも、商品の封入(袋詰め)と検査作業を行う区域は、さらに衛生度を高め、安全・安心の確保に努めています。

準清潔区への人と物の移動

準清潔区への人と物の移動

生豆の移動には専用の経路を設置しています。汚染区にある空気搬送機の吸入口と準清潔区内にある焙煎機を密閉された専用管で繋ぎ、その内部で移動させることで、生豆は準清潔区内で暴露することなく、直接、焙煎機内に送り込まれます。その後、生豆は焙煎機内で高温処理(=焙煎)され、衛生度が高まった状態となり、焙煎機外に排出されます。
作業者は焙煎・選別室に入る前に、入室準備室で、手洗いや専用の作業服・靴への着替え、衣服に付着したチリの除去、ヘアキャップやゴム手袋の着用を行います。

清潔区への人と物の移動

清潔区への人と物の移動

清潔区への入室には、準清潔区とは別の専用ユニフォーム・靴の着用が求められます。さらに、入室にはエアシャワーを通過する必要があり、衛生度を高めています。
物の受け渡しについても、パスボックスという二重扉の受け渡し口を設置し、衛生度の異なる部屋が直接繋がらない仕組みを採用しています。

HORIGUCHI COFFEE YOKOHAMA ROASTERY

HORIGUCHI COFFEE
YOKOHAMA ROASTERY アイコン

コーヒーチェリーや山々などコーヒー豆が育つ原産国のモチーフ、カモメや客船など横浜を象徴するモチーフ、そして焙煎機や焙煎者など横浜ロースタリーにまつわるモチーフ。
これらの3つの要素を組み合わせ、横浜ロースタリーの建物のシルエット(五角形)になるように配置しています。