パパ日記

M&A-4グリーンマウンテンコーヒーとサードウエブの終焉?

グリーンマウンテンコーヒーは、ボストンから車で3時間半のウォーターバレーにあり、K・カップ(一杯分のコーヒー抽出カプセル)とキューリグ(抽出機械)の開発で急成長しました。

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Kカップは自社ブランド以外に、スタバ、カリブー、マック等様々な会社のものをOEMで作っていますし、抽出が簡単ですので、米国での家庭でのコーヒー抽出がコーヒーメーカーからKカップに移行しています。
更にこのマシンの優位性は、ネスプレッソによるエスプレッソではなく、レギュラーコーヒー仕様であるばかりではなく、米国人の好きなアップルティ―など様々な飲料のカプセルが開発されているということです。ネスレは最近、スペシャルティー(紅茶、緑茶)のマシンを出していますが、キューリングはそれらを1台でカバーしてしまいます。

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したがって、このマシンが家庭に浸透するに従い、コーヒーの袋売りの需要は減り、袋売りはスタバ、ピーツなど以外には、PB(プライベートブランド)商品という方向に向かっています。
スペシャルティーコーヒーのPB商品では、年40万袋(1袋60kg)以上を使用するファーマーブラザースが買収したコーヒービーン・インターナチョナルなどが有名で、小ロットからPB商品を扱い、成長しています。

 

 

 

アメリカには、ハンドドリップやその理論的伝統がありませんので、コーヒーメーカーの代わりにカプセル式が受け入れられています。しかし日本では、よいコーヒーをペーパードリップで抽出すれば「おいしいコーヒーが飲める」ことが浸透していますので、この機械が簡単には浸透しないでしょう。(他にも要因がありますが….)
但し、Kカップは、その簡便性から、日本のホテルなどでコーヒーメーカーの代わりに使用される方向にあります。

 
このグリーンマウンテンコーヒーの成長は驚くべきスピードでした。
生産が間に合わず、2008年にはシアトルのタリーズコーヒーを、2009年には西海岸のデートリッヒを買収し、更にカナダの有名なティモシーコーヒーを傘下に収めています。
その結果、2012年に訪問した際は、全米に4.カナダに2工場を持ち、7日間24時間焙煎機が稼働し、メンテナンスの時間が取れないと説明を受けました。
この時点で生豆100万袋(60kg)を使用し、売り上げが2010年の574億から2011年は1158億に伸びているのですから、驚異的な売り上げ増となります。
したがって、CSR(企業の社会的責任としての活動)として収益の5%を産地の環境問題などに使っていました。
訪問時はニカラグアで水道システムを作ったとの説明を受けました。
 

しかし、その後コーヒーではネスレに次ぐヤーコブス・ダウ・エグバーツ(オランダ)を傘下にもつ投資ファンドJABホールディング(ルクセンベルグ)に身売りしたというニュースが流れました。

 

確認は出来ていませんが、Kカップの売り上げ伸び率の低下やマシンの値引きなどで業績低迷と株価の値下がりが原因とすると、2012年のあの恐ろしいほどの成長はバブルであったのかとさえ思えてしまいます。
買収額は約139億ドル(約1兆7200億円)で飲料業界史上最大と言われています。
この買収劇は衝撃的でした。

 
JABは、巨大企業ネスレを追いかけるのでしょうか?
米国のスペシャルティコーヒー会社は、ファンドによりどんどん資本統一されています。
スペシャルティコーヒーも寡占化の方向に向かうのでしょうか?
巨大資本の傘下になってその創業の理念は維持されるのでしょうか?

 

 

ブルーボトルは、40億(?正確な金額は不明)の資金を得ていますが、それなりの利益を上げなければならない宿命も追うでしょう?
米国のサードウエブは、その終焉を迎えるのでしょうか?
残るはカウンターカルチャーくらいでしょうか?。

 
私が、1990年にこの仕事をし、25年を経ましたが、その間の激動は米国のみではありません。日本のコーヒー業界でも大きな変化がありました。

続く
資)

Bloomberg.co.jp
日経MJ

 

注)
ヨー・A・ベンキーザー(JAB)ホールディング
ルクセンブルクを本拠とする非公開の投資会社
JABは、前述したように、すでに2012年にカリブー・コーヒーとピーツ・コーヒー&ティーを買収しています。コーヒー市場占有率がネスレに次ぐ規模といわれる。

 

ヤーコブス・ダウ・エグバーツ
JABが、オランダのコーヒー・紅茶大手マスター・ブランダーズと米菓子大手モンデリーズ・インターナショナルのコーヒー事業部門を合併して設立した会社。

 

モンデリーズ・インターナショナル
オレオとかリッツで有名。日本ではヤマザキナビスコが製造販売していたが、近々にモンデリーズとのライセンス契約が切れ販売終了となるようです。