パパ日記

パナマ・ゲイシャとティピカと白い果実の味の世界

コーヒーの仕事を長くしているとその時々に、新しい香味に接し大きな衝撃を受けることがあります。
そしてこの衝撃が、コーヒーの香味を追求する原動力になります。

 

 
1990年にこの仕事を初めて最初の衝撃はリントンマンデリンで、それは通常のマンデリンとは別物でした。
その後2000年中盤には産地に入り、その品質を限りなく向上させて今日に至ります。
1990年代の中盤にはエチオピアのイルガチェフェの果実感にショックを受け、それ以降このコーヒーを追い続けています。入手の難しい時期を経て今ではさまざまなステーションのコーヒーを購入していますので隔世の思いがあります。

 

 

 

2000年にはケニアの熟した果実感に大きなショックを受け、その後現地オークションでの落札を繰り返し今のケニアのファクトリーコーヒーの獲得の下地を作ってきました。
またこの時エルサルバドルのパカマラのシルキーな味わいにも驚き、その後この豆を探し続けています。

 

 

 

世界中の多くのコーヒー関係者がその香味を理解するより5~10年早い段階から、先行してその優れた生豆を探してきました。今は、イエメン、コロンビア南部、コスタリカなどを含め100種の生豆を購入できる会社になっています。

 

 

2004年ゲイシャデビューの年「ベストオブパナマ」のインターネットオークションでゲイシャに遭遇しました。
当時、明け方まで世田谷店の2階でオークションに参加していましたのでサンプルで確認しています。
このコーヒーの強烈な果実の香味は、世界中に大きな衝撃を与えました。
しかし、私は数年前には、イルガチェフェショック及びケニアショックを受けていましたので、他のコーヒー関係者ほどの衝撃ではありませんでした。

 

 
しかし、この2004年時を境に「コーヒーは果実」だという認識が世界に広まりました。
1990年代には、私がこの仕事を始めた時には「コーヒーが果実のよう」という認識はほぼなく、酸は劣化の代名詞でしたし、苦みに特徴のある飲み物でした。
コーヒーのよい酸は、柑橘の果実と理解していた人は、世界でもほとんどいなかったと思います。
したがって、2000年以降のスペシャルティコーヒーのムーブメントは、コーヒーの酸に命を吹きかけたがゆえに革命的であったといえるのです。

 

 

 

さて、このような果実感の強いコーヒーに対し、米国のサードウエーブは大きな反応をみせ、「酸と甘み」を表現するという価値観が生まれました。そのため浅い焙煎を選択した訳でしょう。
しかし、これらの対極にあるものがティピカ種で、この香味こそあらゆるコーヒーの香味を判断する上で最も重要な香味の基準値となるということも知るべきと思います。
このことが理解できれば画一的な焙煎から一歩踏み出すことができるはずです。

 
とはいうものの、ティピカは耐病や収穫量の少なさゆえ、植え替えられる運命にあり10.年20年前に比べの香味が曖昧になってきています。きちんとその香味を理解しているのは日本人のごく一部だと思います。
絶滅種に近いような種ですが、官能評価の上では最も価値があるコーヒーというのが個人的見解です。

 

 

話が横道にそれました。
ゲイシャにはさまざまな香味の系列があります。
このゲイシャ「カジェホン」は蔗糖の甘味が基本となる印象です。
蔗糖、蜂蜜の甘みに柔らかなレモンの酸が絡み、レモネード系の香味としてとらえます。
そのような甘味に、フレッシュのライチ、白ブドウのような甘味が加わります。
個人的な官能評価としては「白い果実系の柔らかでやさしい甘いコーヒー」ということになります。
「甘めの白ワインのよう」などと記憶しておいてもよいかもしれません。
そうすると他の農園のゲイシャを飲んだときに、その違いを確認できるかもしれません。

 
みなさんはどのようにお感じになるでしょうか?
お試しください。

 

 

これからテースティング会です。
マンデリン12種ですが、これがまたなかなか良いので、!です。