パパ日記

コーヒーの酸と脂質-1

コーヒーの香味は、5味のうち苦味、酸味、甘味などが基本となりますが、SCAAやSCAJ の官能評価では苦みを除いています。苦みは焙煎度合いにより左右されること、また食では忌避する味としてとらえられていること、さらには苦味そのものの食文化がないことなどから官能評価から除外されたとも推測できます。

 

 

 

しかし、いつもいいますが日本人であれば苦みは春の味としての食文化があり、繊細な表現は多くあります。日本のコーヒー業界には、伝統的に深い焙煎の甘く、柔らかな味を理解できる方も多く、又それらを好む消費者も多くいます。長い間ネルやペーパードリップでそれらの香味が表現されてきています。今後は、何らかの形で苦みの評価を加えることを考えてもよいかもしれません。

 

 

 

さて、コーヒーのテースティングは、これまで体験できなかったような新たな味との遭遇、香味の複雑化や多様性の中でどんどん難しくなっています。ここでは省略しますが、これらは産地における新たな取り組みの成果ともいえるでしょう。

SCAAの「coffee tasters flavor wheel」ができてから10年以上たち、新たにWCRの「sensory lexicon」もできました。しかし、まだグローバルなものとはいえず、さらなる研究の蓄積と国際的なコンセンサスが問われるでしょう。
コーヒーは、まだまだ最高峰レベルの香味の位置つけができていませんし、その体験者も少ないといえます。したがって、まだまだ新たな香味の評価体系は難しい訳です。

 

 

 

しかし、ここではあまり難しくとらえずに、酸とコクという2つの軸でコーヒーの香味を簡単に見てみましょう。
白ワインなどでも簡単な指標軸として見ることができます。
ワイン同様コーヒーの酸は、酸化した味とコーヒーそのもののよい酸とを区別しなければなりません。
コーヒーの焙煎豆を見ても鮮度の違いは判りませんので、抽出の際に炭酸ガスが出ずに粉が膨らまないとか、ある程度官能的にとらえるしかありません。
滴定酸度で焙煎豆の鮮度を判断するというような研究もありますがそう簡単ではありません。

 

 

 

酸の実態は水素イオンで、水に溶けた時に水素イオンを放出します。
PHは水素イオン濃度で、酸性、アルカリ性指標でPH7が中性です。
特徴的なことは生豆の状態より焙煎後の方がPH数値は高く(数字が小さく)なります。
コーヒーのPHは5程度で弱酸性ですが、5未満のものもあり、官能的には酸の強弱は一つの指標にはなりますが、酸の質の指標にはなりません。
レモンはPH2です。コーヒーもケニアやマンデリンの在来種は、ミディアムローストで4.7程度のものもあり、酸をかなり強く感じます。そこで官能的には柑橘系の酸であれば「レモンのような酸」と表現してもほぼよいと思います。
しかし、このあたりは、国際的なコンセンサスがとれているとは思えません。

 

 

 

また、酸の質は、有機酸の組成や総量は酸度でとらえる必要があり、同じ酸の強さでも官能的には異なります。有機酸の総量である酸度は生豆の状態では極めて少なく、焙煎の過熱により酸そのものの組成の変化し、化合物の変化による酸の総量そのものが増加し、コーヒーに複雑な酸味が構成されることになります。
したがって、ケニアやマンデリンには柑橘の強い酸以外にもさまざまな強い果実のような酸がありますので、豆の種類により異なる表現が必要となります。
 

 

例えばあるケニアのスペシャルティのPHは、生豆5.8、ミディアムロースト4.74、フレンチローストで5.30ですのでかなり酸の強い豆であることがわかります。
更に、酸度も他の豆よりは高く、ある程度は複雑な酸を持つコーヒーであることがうかがえます。
したがって、テースティング会では、ケニアの強い酸でも、豆毎にレモン、パッションフルーツ、ソルダム、アンズ、うめなど様々なニュアンスの酸の中から近い感覚のものを選びコメントします。
ある程度優れたケニアの香味の体系が理解できていれば比較的容易ですが、経験値のない場合にはテースティングはかなりの難しさを感じるでしょう。

 

 

続く

明日はテースティング会です。
またもやコロンビアですよ。