パパ日記

完全なる焙煎とコーヒーの風味の可能性

コーヒーの焙煎は、ただ炒るのであれば簡単ですが、生豆のポテンシャルを表現しようとするとアートのような感性が求められます。

 

 

前者は職人技のようなものですが、これまでのスペシャルティコーヒーに対しても何とか対応できてきましたが、特殊なスペシャルティコーヒーが流通し始めたここ5年くらいはそのようなスキルでは対処できなくなりつつあります。
 

例えば、エチオピアの優れたステーションの豆、コスタリカの標高の高い産地のマイクロミルの豆、ポストハーベストにおける様々なイノベーションから生まれた豆などは、生豆のポテンシャルを十分に表現することは難しくなりつつあり、従来の焙煎方法のみでは困難な時代になっていると考えられます。

 

 

 

サンプルローストで生豆の本質を見極められた豆が、商業用の大きな焙煎機で焙煎して優れたコーヒーになるとは限りません。問題ない場合も多く見られますが、ここ何年かは「言うは易し行うは難し」という豆が増加しています。ここに気づいて従来の焙煎から工夫して、その個性を表現しようとするには、職人としてのスキル以外に表現としての感性が強く問われるわけです。

 

 

ですから、焙煎担当は、自ら食文化や他の嗜好品に対する味覚向上の体験を通し、表現者としての素養を身に着ける必要があります。
テクニックは美意識をベースに生かされるものだと考えます。

 

 

例えば、浅い焙煎のみを売りにしていたサードウエーブは、香味の多様性を理解しているとは考えにくいと感じます。もちろん、スターバックスの深い焙煎に対するアンチテーゼという側面や甘い香りや酸を表現しやすいという表現を選択したこと自体悪いわけではありません。
コーヒーは焙煎により多様な風味を表現できる嗜好品であるのですから。その表現領域を限定しすぎるのはもったいないと思います。

 

 

ハイエンドのスペシャルティコーヒーは、気象変動などによる栽培適地の高標高化、従来栽培地で栽培されてきた品種とは異なる品種の栽培、ポストハーベストの多様な取り組みなどからも生まれます。
嵩密度の高く、総酸量や総脂質量の多い特殊な生豆に対し、どのように焙煎すればよいかは、焙煎担当の試行錯誤によります。
私などは、もはや実際に焙煎をしませんので、いいたいことを言いますが、現在あらたに焙煎が難しい時代に入っているのだと謙虚に考えることのできる焙煎担当は優秀だと思います。

 

 

現在、世界で最も焙煎が難しいと考えられるコスタリカのマイクロミルの豆を多種購入していますので、焙煎担当は苦闘しながら焙煎していると感じてきました。

 

 

このようなことを前提として、今回販売中のコスタリカ「サンタテレサ2000」と「オンデューラ」を飲んでみると、やっと焙煎担当が試行錯誤から少しトンネルを抜けたかなと感じさせる素晴らしい出来栄えでした。
やや焙煎度は「2000」の方が浅いのは、ティピカという品種を考慮したからと推測します。
生豆のクオリティと焙煎がマッティングした最高峰のコーヒーと感じます。

 

 
1.まずクリーンであること、2.フローラルで軽やかな酸とコクのバランスがよい優れたコーヒーであることが焙煎により理解できます。
「オンデューラ」はまだまだ焙煎による風味の可能性があると感じさせる豆です。
このコーヒーを基準として、様々なコスタリカのコーヒーをご堪能ください。