パパ日記

ケニアと酸味

コーヒーにとって酸味は味を構成するうえでとても重要です。
堀口珈琲の推奨豆の一つにケニア産コーヒーがあり、2000年の前半から世界に先駆け、かなりの豆を販売してきました。

 

 

 

 

最も酸の強いコーヒーは、ケニア産でニエリ、キリニャガの標高1600m≧の地域で収穫されるコーヒーに見られます。
これ以外にも、コスタリカの高地産、コロンビア・ナリーニョ地域産、スマトラのリントン地域産、グァテマラ・アンティグア地域産にも官能的に酸の強いコーヒーはみられますが、理化学的数値からはケニアの酸の強さにかなうものを見つけるのはむずかしいでしょう。

 

 

 

 

酸味は、酸の強さであるpH(水素イオン濃度)、酸の総量のTitratable Acidity(滴定酸度)、有機酸のOrganic Acidity(有機酸の量と組成)によると考えられます。
ケニアのpH(酸性:pH<7、中性:pH=7、塩基性:pH>7)は、4.75と非常に低いものもあり、それらはアラビカ種の汎用品(コマーシャルコーヒー)の平均pHである5.00に比べ著しく低いますといえます。
pH1.00の差異は、官能的には10倍の感知差があると考えられますので、ケニアの酸は、ブラジルのpH5.0などのコーヒーに比べ2.5倍の強さがあるといえますので、その差は、大部分の人が感知できます。

 

 

 

 

さらに、ケニアのスペシャルティコーヒーの場合、滴定酸度も8.00ml/g以上のものもみられ、ブラジルのコマーシャルコーヒーの平均値である6.5ml/gより高く、総酸量も高いといといえます。
酸の強さであるpHと酸の総量である滴定酸度の間には相関性が見られ、ごくわずかながらそのような研究論文もあります。
しかし、私のdataでは、滴定酸度はそう単純ではなく、試料の経時変化に伴い相関性は変化する結果もみられ、この点については検証ができていません。

 

 

 

 

コーヒーの有機酸は、さらに厄介であり、分析方法で変化します。
HPLCであれば使用する有機溶媒やカラム(高圧で成分を分離する)の種類により変わり、試料の固相抽出(コーヒーの中の不純物を塩酸などで除く前処理抽出)の方法により有機酸の数値に変動があり、さらにはそれ以前のコーヒー抽出の焙煎度、粒度、抽出方法などにも影響を受けます。
したがって、既存の論文通りの方法に従っても同じ数値にはなりにくく、カフェインなどの分析の方が楽だと思います。

 

 

 

 

そもそも、有機酸の分析に関する論文そのものがあまりに少なく、 すでに、コーヒーの研究は、単純な理化学数値分析から成分の機能性や人体への薬理的影響に移っています。
有機酸数値は過去の研究データを参照にすればよい訳で、必要性を感じる研究者はほとんどいません。
分析しても風味との相関性を理解できる研究者はいないと思われますので、風味との相関考察はかなり難しいと考えます。

 

 

 

 

有機酸の分析値の相違が見られることは、当たり前のことです。
おなじコロンビアを使用したとしても、使用する試料そのものが根本的に異なるからに他なりません。
コーヒーの有機成分は、同一国であっても、生産地域の気候、土壌、品種などの違いによる要因、精製プロセスの違いによる要因、輸送や保管方法の違いによる要因、さらには入港時からの酸の経時変化により異なるはずです。
基本的には、研究には再現性が求められるが、既存論分の結果には再現性があるとはおもえません。

 

 

 

 

したがって、ケミカルの専門書や論文を見れば、同一国であっても数値が異なっていることに気づくことになります。
少なくとも、今後の実験では、試料の基礎データが明確であることが前提条件で、そのためには、既存のコマーシャルコーヒーの分析数値はあてにならない可能性が高いといえます。
それゆえ、生産履歴のわかるスペシャルティコーヒーについては、データを明らかにし、また実験も生豆入港後2か月以内としたものがHoriguchi dataです。

 

 

 

 

さて、pHが低く、滴定酸度が高ければ酸は強いといえるますが、酸の質は有機酸の組成で判断するしかありません。
アラビカ種の湿式(w:ウォッシュト)コーヒーの有機酸は、クエン酸、酢酸、リンゴ酸、蟻酸、キナ酸などからなります。最も多く含まれる有機酸は柑橘果実の酸であるクエン酸(果実ではレモンに最も多い:レモンのpHは2程度)とお酢の酸の酢酸です。

とりわけ、クエン酸は重要でコーヒーの基本的な酸味を形成します。
しかし、ここからが厄介です。

 

 

 

つづきはーーーー。後日。

大学院卒業後は、セミナーを行う予定です。

また今年中もしくは来年には本も出版しますのでそちらでも。