パパ日記

テロワール-6 炭水化物と呼吸作用

日本は葡萄の産地として、生食用が発展し、その品質と味は世界最高でしょう。
イチゴ、リンゴ、もも、かんきつ類も・・・・多くの果実がありすぎて、日本の各県の農業試験場とか、技術センターとか、総合研究とか様々で、研究は実用的なものが多くみられます。
食用での葡萄のおいしさは、第1に糖度が判断基準でしょうね。さらに酒石酸および糖と酸の比率か何かで見るのがいいのかもしれませんがここは専門ではないのでわかりません。
保存などについては、米とか果実は、やはりコーヒーより進んでいます。
最近では、魚の冷蔵の氷の研究も進化しています。
コーヒー研究は、遺伝子から農業まで、幅広くかつ膨大な研究がおこなわれていますが、品質に関するものというか実用的なが少ないのが実情です

 

 

 

 

 

 

コーヒーもブドウも、果実は一般的には寒暖の差がある方がおいしいものが取れるといわれます。
日中の光合成で生じた糖質は呼吸作用で消費されてしまうと考えられ、夜間の温度が低ければ呼吸作用が減少し、糖質が蓄積されるのでしょう。
寒暖の差がある方が、果皮の着色も進むと考えられています。
最近は、黒ブドウや赤ブドウの色がきれいなにならない事例もあり、葡萄で色素のアントシアニンの研究をしている学生もしました。

さて、、甲府盆地や、山形の内陸部などでは、昼暑く、夜涼しい、雨も少なく、は排水がよく、寒暖差が10度以上はありますので栽培にはテロワールが、重要ということです。
しかし、コーヒーの場合標高が高く、寒暖の差がありすぎる場合もあり、そこは難しいところです。

 

 

 

 

 

コーヒーも、チェリーの段階から生豆の状態まで呼吸しています。
呼吸し、熱や炭酸ガス、水分などを生成し、呼吸量は温度、湿度により左右されます。
米の場合は、水分値が14.5%で、10℃で保存すれば24時間の炭酸ガスの放出量は0.1㎎/100gにすぎませんが、水分値が16%に上がれば、微生物の影響で呼吸量が増します。
コーヒー生豆の、水分値は一般的には10~11%前後ですが、水分値が増え14.5%を超えると熱や炭酸ガスを放出し、16.5%を超えるとmycotoxins を生成し化学組成が変わリます。

 

 

 

 

 

コーヒー産地も標高が高ければ、昼夜の気温差は大きくなります。
熱帯の低地は気温、湿度が高く、光合成効率は悪いというより、30℃以上の気温下では葉の光合成は低下します。
ですから、1日中日が当たる場所では、シェードツリーが必要なのです。
呼吸作用により糖質は保持され、さらに酸も生成されるのですが、標高の寒暖差のみが、酸味に影響を与えるみとはいい切れないでしょう。
標高と酸味の強さもしくは総酸量とは官能的にはある程度の相関性はありますが、今少し違う要因もあるようには思います。

 

 

 

 

葡萄好きの私は、果糖の取りすぎかな?
炭水化物は、タンパク質、灰分、水分、脂質を除いたものです。
例えばColumbiaのスペシャルティコーヒー(SP)を例にとれば、水分10.8+灰分3.4+脂質18.5+たんぱく質11.0ですので、炭水化物は100-43.7=56.3%(堀口実験結果)となります。炭水化物は、エネルギーになる糖質+植食物繊維です。この辺りは栄養学科の学生の方がはるかに詳しいので、避けます。

 

 

 

 

 

小糖類は、単糖類のブドウ糖(グルコース)、果糖(フルクトース)、二糖類のショ糖(スクロース)などがあります。コーヒー生豆の小糖類の大部分がショ糖ですので、ショ糖を分析すればよいということになります。
私の分析では、湿式のタンザニア産、グァテマラ産、乾式のブラジル産、エチオピア産のSP、COの生豆は、共に6.26~7.90%の範囲でした。
湿式、乾式による有意差は見れず、SPの方がCOより多い傾向がありますが有意差まではありませんでした。
ただし、ロブスタ種はアラビカ種の半量ですね。

 

 

 

 

ショ糖は、コーヒーの実で作られ、熟すと蓄積し、種子にあたる生豆の部分でショ糖含有量が高くなる傾向があると考えられています。そして、焙煎するとほぼ消滅しますが、焙煎時に生じる有機酸、褐色色素、香気成分の前駆体となることで重要です。
コーヒーの甘味は、生豆に含まれる糖の一部が主体となり、これにアミノ酸やペプチド、及びカラメル化糖などが微妙に絡み合い形成されていると考えられています
。甘味はなかなか難しい味だと思います。

 

 

 

 

 

したがって、SCAA(現在はSCAですが、SCAAを使用します)の官能評価票のsweetnessは定量評価ではなく、甘味がある?かないか?の定性評価です。
五味の味覚テストでは、水1リットルに砂糖4gを溶かした水溶液と純水を区別できればよいのですが、コーヒーの甘味は水1リットルの5gの砂糖の水溶液の甘味以上であればよいと考えられています。
しかし、褐色色素などが混ざり純水ではありません。
コーヒー抽出液の甘味は生豆に含まれるショ糖の味とはいいがたいので、sweetnessの判断はむずかしいのではないでしょうか?

 

 

 

 

wineの糖質は、コーヒー抽出液よりは少なく赤で1.5g/100g、白で2g/100g程度です。(日本食品標準成分表2015年版(七訂))このように、コーヒー生豆の基本成分分析をしていくと、いったいコーヒーの風味や品質にとっては、何が重要なのか?迷路に入り込みます。

 

 

 

 

何でショ糖に来てしまったんだろう。テロワールに話を戻しましょう。

赤坂でビールを飲んでしまった。

 

 

 

石橋貞人、田中俊一郎/農業機械学会:米の品質と乾燥及び貯蔵の原理

劉洪津 渡辺兼五/農業機械学会:米の貯蔵環境と米品質に関する研究

Jean Nicolas Wintgens:coffee: growing processing sustainable production,