パパ日記

コーヒーテイスティング 1 Aroma

https://reserva.be/coffeeseminar
コーヒー抽出セミナー、コーヒーテイスティングセミナーは堀口珈琲研究所のコーヒーセミナーサイトからどうぞ

 

9月のコーヒーセミナーは定員です。
10月の日程を近々にアップします。
10月は「テースティング中級」を1回増やします。
パナマ、ルワンダあたりを予定します。

堀口方式の5項目各10点で計50点満点で行います。
aroma、acidity、body、clean、sweetness(Naturalの場合はfermentation)です。
SCA方式(specialty coffee association:https://sca.coffee/)の点数との互換性についても説明します。

AROMAは、香りの強さと質で、粉の香り及び抽出液の香りから判断します。
香りの分子は焙煎豆で700~800程度あり、それらの中のいくつかの複合体です。
ガスクロマトグラフィー(Gas Chromatography, GC)で分析できますが、その分子量がそのまま香りの強さを反映するわけではありませんので、ここが香りの厄介なところです。
香りは、あくまで複合的なものでコーヒーの香り分析が、官能的な感覚と一致するわけではありません。

また、香りの分析は、香気成分をどのように回収するかの方法も重要になります。
そもそも香りは、上空に揮発し漂うものもあれば、試料そのものの中に含まれるものもあります。
香気成分を溶媒に溶解したり、吸着材に吸着させたり様々な方法があり、それらをGCにかけます。
とにかく、コーヒーの香りの分析は他の食品にくらべ厄介で、難しいということです。

人間の嗅覚もかなりあいまいですので、香り表現としてはあまり難しい言葉は使用しない方が賢明です。
「フローラル、フルーティー、ハーブっぽい」など直感的に感じる言葉を使用すればよいでしょう。
花の香りからさらに掘り下げて、「バラの香り」といっても、バラの香りには複数の香気成分が含まれますので、ある人が感じても多くの人が感じないということは当たり前にあります。
SCAのフレーバーホイールにある言葉だからといって、曖昧に使用するのは感心しません。

最近の、「他人にはわからないような言葉を羅列したり、たくさんコメントをすればよい」という風潮は問題です。
コーヒー業界のHPなどで難しいコメントが多くあり、消費者に混乱をもたらしています。
第3者にわかりやすい言葉で伝えることが重要です。

これはあるコーヒーに対するコメントです

1.「グリーンアップル、キウイ、スパイシー、コンプレックス、ブライトオレンジ、キャラメル、シロッピーマウスフィール、ロングスウィート」言葉を羅列するのはよい方法です。しかし、これが日本人のコメントですが、かなり違和感を感じます。

2.「「エレガントでトロピカル。ストロベリーグァバ(グァバの別品種)、スイカズラ(花)、アーモンド、サンダルウッド(香木、白檀)、カカオニブ(カカオ殻)の香りとカップ。明るく活気のある酸味を持つ豊かで甘い。シロップのような口当たり。繊細なフィニッシュのストロベリーとスイカズラの余韻。」これは米国人のコメントですが、本当に感じているの?と疑問に感じてしまいます。

個人的には、このようなコメントを聞いても何が何だかわかりません。
「すばらしい」とこれを受け入れる方もいるかもしれませんが、「わからない」と思われるのが普通でしょう。
このコメントであればSCA応式で95点がついてもよさそうですが、実際はそこまで高いの評価のコーヒーではありません。

3.SCA方式で85点を超えるコーヒーとは思えませんので、「上品、甘い花のよう香り、グレープフルーツのかすかな苦味と酸味、クリーミーな口当たり」くらいにとどめておいた方が、このコーヒーの風味ニュアンスは理解されやすいでしょう。
逆に言えばこれ以上のコメントはできません。

 

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堀口俊英(ほりぐちとしひで)
2002 年堀口珈琲研究所設立
2019年東京農業大学・環境共生学博士課程卒業
著作:「The Study of Coffee」新星出版・2020年その他
論文:「有機酸と脂質の含有量および脂質の劣化はスペシャルティコーヒーの品質に影響を及ぼす」日本食品保蔵科学会 2018
論文:「コーヒー生豆の流通過程における梱包、輸送、保管方法の違いが品質変化に及ぼす影響」日本食品穂応科学会 2019
論文:「コーヒー生豆の品質基準に関する研究」の本食品科学工学会 2021