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コーヒーセミナー
30年前、私の開業時には、多くのロースターは、コロンビア産やグァテマラ産のブルーグリーンで、水分値が11~12%程度で、硬い豆を嫌う傾向がありました。
当時はミディアムローストが99%を占めていましたので、豆質が固いと焙煎豆の表面のシワが伸びにくく、見た目のきれいさがないと考えていたのでしょう。
また。自家焙煎店では、固い豆は、当時の焙煎機では熱量不足で、うまく焙煎できないという課題があったことによります。そのため、30年前にはダブル焙煎(メイラード反応が起こる前に一度焙煎機から出し、豆を冷やして再度焙煎します)などという方法が一部で行われました。
私も試しましたが、焙煎機の熱量が十分でしたので意味を見出すことはできませんでした。
硬質な豆(Hard Bean)は、中米では標高の高い産地にみられ、高い評価を得ます。
対して軟質な豆(Soft Bean)は標高が低い産地の豆に見られます。
硬質豆は、標高が高く気温が低い地区で成熟に時間がかかるため、密度が高くなります。
例えば、グァテマラの標高の高い産地のSHB(1400m以上)は、標高の低いEPWより総酸量、脂質量、ショ糖量が高いことが明らかになっています。
しかし、標高以外にも精製法、乾燥など他に影響を与える要因もあることは留意してください。
これらの違いは生豆の外見上では、センターカットが開き気味の方が軟質で、多孔質(粉砕した豆を500~1000倍の顕微鏡で見ると空洞が見られます、ハニカム構造ともいいます)が大きい可能性があります。
生豆の炭水化物中の繊維質も柔らかく、熱伝導は早くなり、豆表面と内部に温度差が生じ、表面が焦げやすくなりますので、緩やかな焙煎が必要です。
反面、硬質の豆は、耐熱性が高く、豆内部に熱量が入りにくくなりますので、豆の外側と均一にするために、より細かな温度コントロールを必要とします。どちらにせよ、熱量の与え方(プロファイル)が重要となります。
ケニアSL種 硬質
スマトラ在来種 軟質
今後、走査顕微鏡及び分析装置で、粒子解析で空隙の割合を計算する予定です。
私は、フレンチローストを好みますので、硬質の豆を求めますが、ティピカ種のような、標高の高い産地でも、軟質の豆もあります。多くの場合シティローストで止めますが、より硬質に近いティピカ種であれば、フレンチローストも可能と考えます。
単純に硬質のみがよいとは言い切れませんが、硬質の方が軟質の豆より鮮度保持は長いと考えられます。
ケニア産とタンザニア産と比べれば、ケニア産の方が硬質で18か月鮮度維持できる豆もありますが、タンザニア産は12か月間鮮度維持できる豆は少なくなります。
産地 | 標高m | 脂質量g/100g | 酸価 | SCAA点数 |
グァテマラSP(SHB) | 1600 | 17.2 | 1.91 | 83.64 |
グァテマラCO(EPW) | 1000前後 | 12.9 | 5.55 | 74.00 |
ケニアSP(キリニャガ) | 1600 | 15.5 | 2.71 | 85.08 |
タンザニアCO(AA) | 1500 | 13.6 | 4.55 | 77.11 |
TRICTLY HARD BEAN(標高1400m以上)、EXTRA PRIME WASHED(900~1050m)
AA(輸出規格上位等級)標高はおおよその推定、
生豆の鮮度は、脂質量の差及び、酸価の程度でも判断できます。
この数値のみで見ると、グァテマラのSPは非常に良い豆と推測されます。
この事例ではケニアの官能評価の方が高い結果になっていますが、風味のキャラクターは有機酸量やその組成、およびショ糖量、アミノ酸組成などとのバランスによるとお考え下さい。
COはグァテマラ、タンザニア共に鮮度劣化し、賞味期限は切れていると考えます。
どこかで解説しますが、酸価は、3以下であれば鮮度状態は良いといえます。
続く
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堀口俊英(ほりぐちとしひで)
2002 年堀口珈琲研究所設立
2019年東京農業大学・環境共生学博士課程卒業
著作:「The Study of Coffee」新星出版・2020年その他
論文:「有機酸と脂質の含有量および脂質の劣化はスペシャルティコーヒーの品質に影響を及ぼす」日本食品保蔵科学会 2018
論文:「コーヒー生豆の流通過程における梱包、輸送、保管方法の違いが品質変化に及ぼす影響」日本食品穂応科学会 2019
論文:「コーヒー生豆の品質基準に関する研究」の本食品科学工学会 2021