パパ日記

コーヒー生豆の賞味期限 5 酸価(Acid Value)

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生豆には、風味に影響する成分が多種含まれ、それらは流通過程で大きな影響を受けます。
現在、梱包材質は、麻袋、麻袋の内側に入れるグレインプロ(GP)、真空パック(VP)が使用され、
リーファーコンテナ(定温15℃)、ドライコンテナ(常温)が使用されます。
また、入港後は定温倉庫、常温倉庫に保管されます。
したがって、各生産国の豆は、その流通工程で半年、1年後には化学成分が変化し、官能評価も変化します。

主な成分のうち、有機酸量は、SPはCOより多く、7ml/g前後は含まれます。
そのうちクエン酸量が最も多く、その量は、梱包材、輸送コンテナ、保管倉庫により変動します。

入港時点と1年後のpHを比べると、RC/VP/定温倉庫の場合の方が、DC/麻袋/常温倉庫の保存に比べ、pHが低く、総酸量酸が多く、SCAの官能評価のacidityに影響します。

 

脂質は、SPはCOより多く、約15g/100g前後の脂質が含まれます。
入港時点と1年後の脂質量を比べると、DC/麻袋/常温倉の場合は、RC/VP/定温倉庫に比べると大きく減少し、SCAの官能評価のbodyに影響を及ぼします。

 

脂質の多くは、トリグリセリド(中性脂肪)です。
生豆は、10~11%程度の水分を含む状態で長期保存されると、トリグリセリドの一部が加水分解され遊離脂肪酸が生じます。
この遊離脂肪酸の量が多い状態は、鮮度劣化した状態といえます。
この遊離脂肪酸量を数値化したものが酸価で、生豆の鮮度状態の把握が可能となります。
米の賞味期限も、脂質の劣化が大きく左右することは以前書きました。

厚生労働省の「菓子製造・取り扱いに関する指導要領」において、「油脂で処理した菓子(脂質10%以上)は、含まれる油脂の酸価が3を超え、かつ過酸化物価が30を超えるもの、及び酸価が5を超えるか、過酸化物価が50を超えるものは販売しない。」と定められています。
コーヒーの生豆に当てはめますと、酸価が5を超えるものは多くみられます。

 

 

入港時点と1年後の酸価を比べると、RC/VP/定温倉庫の場合は、1年後の変化は少なく、DC/麻袋/常温保管の場合は上昇が著しく、SCAの官能評価のTotal score及びCleanの評価項目に影響します。

これらの理化学的な数値は、これまでの実験で、SCAの官能評価項目と相関することが明らかになっています。。

図は、アフリカのコンゴ産、タンザニア産、ルワンダ産の2019-20Cropと2020-21Cropの同じ生産地域の豆を
味覚センサーにかけたものです。
酸味とコク(body)が著しく低下し、2019-20CropはSCA方式で80点に達しません。

個人的には賞味期限切れと考えますが。使えないわけではありませんので、一般的に、
このような鮮度劣化したコーヒーが多く流通しています。
したがって、コーヒー関係者も消費者も適切なテイスティ着ることが望まれます。

これらの分析データと官能評価の結果から、酸価は、生豆の鮮度と深い関係があると考えられます。
賞味期限の境界線の風味を「枯れた草の風味があり、クリーンさが低下した状態」と仮定した場合には、
酸価数値に有効性があると考えます。

これまでのSPとCOを試料とした実験では、この酸価数値が3~4以下であれば官能的に風味がよく、
鮮度状態が保持されていると考えられます。
COの場合は、入港時点で酸価数値が高い傾向が見られ、その後上昇します。
COの酸価は、多くの場合4以上になりますので、COの官能評価がSCA方式で80点に達しない大きな要因の一つといえます。

しつこいかもしれませんが、後少し続けます。

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堀口俊英(ほりぐちとしひで)
2002 年堀口珈琲研究所設立
2019年東京農業大学・環境共生学博士課程卒業
著作:「The Study of Coffee」新星出版・2020年その他
論文:「有機酸と脂質の含有量および脂質の劣化はスペシャルティコーヒーの品質に影響を及ぼす」日本食品保蔵科学会 2018
論文:「コーヒー生豆の流通過程における梱包、輸送、保管方法の違いが品質変化に及ぼす影響」日本食品穂応科学会 2019
論文:「コーヒー生豆の品質基準に関する研究」の本食品科学工学会 2021