たのしいコーヒー

ライブラリーブレンドができるまで〈前編〉

ライブラリーブレンドができるまで〈前編〉

はじめまして。営業部の高山と申します。

今回は早稲田大学国際文学館(村上春樹ライブラリー)のカフェ“橙子猫(orange cat)”で提供されている「Library Blend(ライブラリーブレンド)」(堀口珈琲オンラインストアへ)についてご紹介します。カフェとの関わりをはじめ、どのようにブレンドが形になっていったのかを前編・後編に分けてお伝えしていきます。

 

始まりは一通のメール


6月某日

営業部にいつもとちょっと違う案件が舞い込んで来ました。きっかけは問い合わせフォームからの一通のメール。早稲田大学に通う学生さんからでした。

限りなく無駄を削ぎ落とした文章。要約すると

・10月に早稲田大学構内に「村上春樹ライブラリー」が開館する
・そこにカフェが併設される
・そのカフェで使用するコーヒーについて相談したい

という内容でした。

それを受けて真っ先にアクションを起こしたのは当社CFO(最高財務責任者)の伊藤。というのも、伊藤は早稲田大学卒。かわいい後輩のために協力してあげたい、という親心も働いたのでしょうか。できる限り力になってあげて欲しいとの連絡がありました。

まずは詳しく話を聞いてみねば……。

早速、連絡をくれた市原さんへ返信し、顔合わせを兼ねた打ち合わせを行うことにしました。

 

ライブラリーでの顔合わせ


7月6日

当日は営業チームの小野塚・高山、そして伊藤を加えた3名で打ち合わせに臨みました。場所は早稲田大学4号館。建築家の隈研吾氏がリノベーションを手掛けたライブラリーということで、若干の緊張を伴いつつ、いざ。

 

ライブラリーのカフェ部分はおおよそ仕上がっていました。広々とゆとりのある空間にヴィンテージの家具やテーブル、カウンター内にはフルオートのエスプレッソマシンやブリュワー。すぐにでも営業できそうな雰囲気です。

 

そこで出迎えてくれたのは問い合わせをくれた市原さん
村上春樹氏のライブラリーオープンに向け、この日は密着取材のテレビ局クルーも来ていました。

 

担当の市原さん

 

市原さんから今回のプロジェクトの詳細や経緯などの説明を受けます。

まず驚いたのは、このライブラリーに併設されるカフェは、村上春樹さんの提案により現役の早大生に経営者として運営を任せる新しい試みということ。そして、そのリーダーに選ばれた市原さんがとてもしっかりしていることにも驚きました。市原さんはカフェでの勤務経験もあり、「早スポ」(早稲田スポーツ新聞会)の応援部担当/オリパラチーフを務めるなど、明るく、エネルギッシュな青年。経営のリーダーを任されるのも納得です。

 

まずはヒアリングから始めました。
カフェを運営するにあたっての要望や質問、オープンまでのスケジュール、それに対して堀口珈琲として提供できる商品やサービスについて詳細を伝えしました。

続いて、当社のコーヒーを実際に飲んでもらうことに。
試飲を進める中で、市原さんは日頃から当社のコーヒーを楽しんでくれていること、それもあって今回声を掛けてくれたこと、カフェで提供したいコーヒーのイメージなどが少しずつ分かってきました。

とはいえ、このときはまだ当社のコーヒーが使われるのかどうか分からない段階。

堀口珈琲をより詳しく知ってもらうために横浜ロースタリーでの製造工程の見学を提案し、そのうえで当社と一緒に進めて行くのかどうかを判断してもらうこととしました。

 

横浜ロースタリー見学


8月6日

大学での定期テストが終わったタイミングで、横浜ロースタリーの見学会を実施しました。この日は市原さんに加え、同じくカフェ運営スタッフの石丸さん(主にフード担当)も来場、2名に参加してもらうことになりました。テレビの密着取材はこの日も続きます。

まずは応接室で工場見学の概要説明。どうして横浜にロースタリーを作ったのか、この工場でどんなことに取り組んでいるのかなど、スライドを使って伊藤が解説していきます。

 

後輩への指導(?)に熱が入ります

 

実はこの見学の前に、学生さんにひとつお願いをしていました。

それは、堀口珈琲ブランドサイトの横浜ロースタリーのページ(堀口珈琲ブランドサイトへ)を閲覧してきてもらうこと。事前におおよその流れを掴んでもらい、より理解を深めてもらうのが目的でした(横浜ロースタリーのページでは工場の様子を余すことなく公開しています)。

2人ともしっかり予習してきてくれており、非常にスムーズに進行できました。実はこれも伊藤からのアドバイス。後輩への優しさが伝わります。

 

いざ、設備見学へ。

ここからは横浜ロースタリー所長の薄波にバトンタッチ。ロースタリーの製造工程に沿って案内していきます。

生豆用の玄関である「入荷前室」では実際にジェットフィーダーで生豆を吸い上げ、次の部屋へ搬送する体験をしてもらいました。まず音の大きさに驚き、次に吸引力の強さに驚きます。参加した2人とも上手に豆を搬送し、笑顔がこぼれます。

 


空気搬送にチャレンジする石丸さん

 

日常生活において、コーヒーの生豆を見たり触れたりする機会はなかなかありません。

今回の工場見学では、そういった体験を通じて「生産国から届いた生豆からコーヒーがどのように作られみなさまの手元に届くのか」を知ってもらい、「堀口珈琲ならではの品質へのこだわり」を理解してもらうのが大きな目的です。

生豆選別機については「どのように不良豆を見分けているのですか」「コーヒーの種類によって選別ポイントは違うのですか」など、カフェでの勤務経験がある市原さんからはたくさん質問も出てきました。

 

 

2人とも緊張がほぐれエンジンが掛かってきました。入室準備室で着替えたあと、いよいよ焙煎・選別室へ。2台の焙煎機が唸りをあげています。

 

 

いざ煎り止めのタイミング。ロースターの手によって焙煎機の扉が瞬時に開けられ、中から煎り上がったコーヒー豆がバチバチバチッと音を立てて流れ落ちます。「おおー」 2人から感嘆の声。

 

 

まだまだ工程は続きます。速やかに冷却された焙煎豆は選別機による一次選別、そして人の手による二次選別を経て、どんどんと磨き上げられていきます。

 

焙煎豆一次選別後の良品と不良品を見つめる2人

 

 

こうして堀口珈琲の厳しい選別工程を生き残った焙煎豆たちはロースターの品質チェック(試飲)を受け、最終的に製品として出荷されます。

全工程を見学した後、学生の2人にも横浜ロースタリーならではの試飲をしてもらいました。

(A)最後まで生き残ったコーヒー。つまりは良品。
(B)一次選別によって取り除かれてしまったコーヒー、つまりは欠点豆を(A)の良品に加えたもの。

これらをペーパードリップし、飲み比べ。2人とも味わいの違いにとても驚いた様子。
欠点豆が混じることで風味にもたらすネガティブな影響を、身を持って体験してもらうことができました。

 

 

横浜ロースタリーの見学を通じて伝えたかったこと。

「生産国から届いたコーヒーがどのように作られ、みなさまの手元に届くのか」
「堀口珈琲は品質の高いコーヒーを作るためにどんなことをしているのか」

どちらも2人に届いたのではないかと思います。何より楽しそうに見学してくれていたことが印象的でした。

 

最後に主任ブレンダーの秦から「焙煎」や、「焙煎に対する向き合い方」などを伝えてもらいました。

読書が大好きな秦は村上春樹さんについても語り合いたかったようで、ちょいちょい話が脱線します。和気あいあいの雰囲気の中、焙煎についての質疑応答となりました。

 

 

これで工場見学全ての工程が終了。

この直後、市原さんからコーヒーの「正式な」オファーがありました。

加えて、「カフェで提供するオリジナルブレンドを秦さんにつくって欲しい」という依頼もありました。
さらにはメディア内覧会の日程が9月中旬に決まったとの報告も。

この日は8月6日。しかも、夏季休業を間に挟むため、各所が休みに入ってしまうタイミングでもあります。
ここからは時間との戦い。スケジュールを逆算し、一気呵成に動き出しました。

 

後編では「ブレンドづくり〜カフェオープン」までのストーリーをご紹介しています。

「ライブラリーブレンドができるまで〈後編〉」の記事へ

 

【カフェ紹介】
オレンジキャット( 橙子猫 -ORANGE CAT- )
東京都新宿区西早稲田 1-6-1
早稲田大学国際文学館(村上春樹ライブラリー)B1F
平日:10:00~17:00 土日祝:10:00~15:00
定休日:水曜日
※国際文学館は入館に予約が必要ですが、オレンジキャットは予約不要です。どなたでもご利用いただけます。

 

「Library Blend(ライブラリーブレンド)」 オンラインストアへ