パパ日記

コーヒー生豆の賞味期限 6 NaturalとWashed

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生豆が日本に入着してからの風味の変化は、収穫、精製のプロセス、梱包材、コンテナ、保管方法など、さまざまな要因により変動します。

 

精製では、適切な工程を経たWashedは、クリーンで明るい柑橘果実の酸味が心地よい風味です。
対してNaturalは、なめらかな粘性やかすかな濁り感を感じさせます。
適切な工程を経たナチュラルの乾燥は、微発酵にとどまるか発酵臭を感じさせません。

 

乾燥は天日とドライヤーおよびその併用とがあります。
天日は、中米などのコンクリート、レンガ、タイルなど伝統的なパティオから、アフリカに多く見られる棚での乾燥、
小農家のビニールシート上での乾燥など様々です。
但し、土の上にシートを引いて乾燥するような場合は、微生物の影響を受ける可能性もあり、最近は、風通しよく攪拌しやすい棚上の乾燥が多くみられます。

対して、大量に乾燥する場合にはドライヤーも使用されます、
SPについては、40℃程度の低温で日数をかけるなどの方法も取られます。
雨が多く、湿気のある生産地域では十分な乾燥時間が得られない場合などでは、天日とドライヤーの併用もみられます。
緩やかに時間をかけた乾燥工程を経た生豆は、官能的には濁り感が少ない印象です。

天日での乾燥は、均一に乾燥させるため、太陽の向きに合わせてチェリーの広げ方を変えたり、
数時間おきに攪拌したりします。

また、直射日光を避け日陰で乾燥したり、気温の高い時間帯は乾燥が急速に進みすぎないようカバーをかけたり、倉庫に入れたりと様々な対応をそしているところもあります。
チェリーは、水分値が11%前後になるまで行われ、農園主の経験値で判断する事例が多くみられます。
ドライチェリーをさわり、こすったりして乾燥状態を確認しますが、
最近は簡易的な水分計を使用したりする場合もあります。

Naturalの品質は、乾燥の方法などにより大きく風味差が生じると考えられます。
ナチュラルの場合は、チェリーに付着している酵母や菌により過度の発酵をさせないことが重要です。
最近は、この発酵に対して寛容というか、発酵そのものの風味をよいとする傾向もみられ、大きな問題です。
あくまで、微発酵でも発酵臭は、果実の風味(フルーティー)として見るのではなく、乾燥プロセスの不備が生じさせるものです。個人的には、この発酵をよい風味とは評価をしません。

結果として、適切な乾燥がなされた場合は、天日、ドライヤーもしくはその併用であるかの風味区分はブラインドでは難しいと感じます。

2010年代初めまでのエチオピアの優れたG-1ナチュラルやパナマのナチュラルには感心しない果肉臭がありましたが、2010年代中盤以降のナチュラルにはそれがなくなりつつあり、クリーン風味の方向にあります。
産地の平均気温は22℃前後ですので、それより少し気温の低い涼しい場所で、適切な乾燥日数をかけたチェリーは、生豆の密度が高くなると推測され、実がしまっています。

最近の堀口珈琲のエチオピアのG-1ナチュラルは、あまりに素晴らしい出来ですし、現在販売しているイエメンのナチュラルも発酵臭を感じさせないようなすぐれた風味です。
果肉臭がないため、物足りないと感じてしまいがちですが、優れたナチュラルのニュークロップの風味の中に、過去見られなかった新しい風味が潜んでいることをご理解ください。

このようなコーヒーにたどりつくには、多くの生産農家、輸出会社、消費国のバイヤーの品質への取り組みの成果だと思います。

 

やっと本題です。
適切な乾燥のナチュラルは、生豆が締まり、よりきれいな風味を伴うとともに、保存性が高まります。
特に、SPの優れたブラジル、エチオピア、イエメンなどは、グレインプロで定温倉庫で保管すれば、賞味期限は長くなります。

ブラジルのSPのナチュラルは、酸価が2以下の生豆が多く、コロンビアのSP平均3より低く、脂質は劣化しにくいと考えられます。したがって、多くの生豆関係者が、「ブラジルのNaturalは生豆が持つ」と感覚的に理解していることと合致します。(ここでいうSPは、SCA方式で85点以上の豆)

 

またこれらの経時変化については、化学的側面からは検証されていませんでしたので、
ブラジルのナチュラル、パルプドナチュラル、セミウォシュドの精製の異なる豆のSP及COの理化学的数値と官能評価の変化についてはいずれ行う予定です。