パパ日記

スぺシャルティーコーヒーのテイスティング(カッピング)3  評価点数(Score)の意味

https://reserva.be/coffeeseminar
堀口珈琲研究所のコーヒーセミナー

前回の続き

SCA方式を、2004年から使用してきました。
10項目の評価項目は、個人的には、①評価に時間がかかり、②評価基準にあいまいというか難しい点も見られ、
2010年代中盤には、運用に苦慮してきました。

パナマのゲイシャ種、エルサルバドルのパカマラ種、ケニアのファクトリー産、エチオピアのG-1、コロンビア産部県産、コスタリカのマイクロミル産など従来にない優れたコーヒーが生産されるようになり、従来の評価点数の見直しが必要と考えましたが、世界的なコンセンサスにおける変化はみられませんでした。

例えば、パナマのゲイシャ種に関しては、2010年代前半は90点止まりでしたが、それ以降は93点、2019年など高い時には95点のスコアがつくようになり、そのようなコンセンサスが取れつつあります。
そうであれば、優れたケニアのファクトリー産、エチオピアの優れたG-1、優れた在来種系のスマトラ産などにも95点をつけるべきと考えますが、このような評価のコンセンサスはいまだ形成されていません。

SPの歴史は20年になり、各生産地の最高峰の風味の輪郭が見えてきています。
しかし、それらを理解しているコーヒー関係者は少ないでしょう。
この90点以上のスコアのコンセンサスがとれない主な要因は、
①一部の生産国ではその品質が発展途上にあること、
②新規参入者のSPのテイスティング経験値が不足していること、
③品質向上に対し評価者のスキルが向上していないことなどが考えられます。

SPの市場は、世界的に見れば、発展途上であり、このムーブメントには常に新しい参入者がみられます。
日本においては、2000年代初めから約10年間に開業した自家焙煎店があり、その後2010年前後から参入した比較的若い世代の自家焙煎店があり、主に小型の3kgもしくは5kg以上の焙煎機を導入しています。
それ以外にも1kg焙煎機を使用しネットで焙煎豆を販売したりする自家焙煎店とはえない新規参入者も増加しています。一方生豆問屋は、競合が激しくなるとともに、60kgからの麻袋から10kgの小分けに移行し、2010年以降は5kgの少量まで生豆販売をしています。

焙煎豆の販売量が少なければ、生豆の種類を増やせませんし、価格の高いSPを故入することもきませんので、生豆の品質について理解できる環境にあるとはいえず、テイスティングスキルの向上は難しいと考えます。

このような状況下では、80点、85点、90点と95点の品質差を理解できるコーヒー関係者は多くはないと考えられるわけです。

米国においては、スターバックス以降のサードウェーブ(生豆の品質に目を向けた動き:スタンプタウン、インテリジェンシア、カウンターカルチャーの御三家その他など:パパ日記内で検索してください)があり、その影響を受けた2010年前後からの米国西海岸および全米各地に生まれた新たなマイクロロースターがあります。
このSPのムーブメントは、コーヒーの新しい価値として生豆の品質に着目したわけです。
その後、もしくはこの時代に並行して、オーストラリア、ニュージーランド、北欧などの新しい勢力が生まれ、さらには韓国、台湾、中国、シンガポールなどに広がっています。

しかし、2000年以降から約20年間のSPの品質向上のプロセスについては、わからない方が多くなっています。
例えば、現在の2020-21Cropが過去最もよかったといえる豆もあれば、2009-10や2013-14Cropの頃が最も風味がよかったという事例もあります。これらか経験値に基づき、強化の客観性に役立ちます。

今後SPが発展していくであろうことを想定し、2000年前代前半の日本のSP黎明期の資料になると考え「スペシャルティコーヒーの本」(旭屋出版・2005年絶版)を書きました。

まずは、この時期のSPのムーブメントが、①生豆の品質という視点と②サスティナビリティという概念の両輪で動き始めたことを理解すべきだと思います。

話がくどくなりました。
SPについては、多くのコーヒー関係者が素晴らしいコーであることは理解できても、前述したように「どのくらい素晴らしいか?」についての判断は難しいと思います。
したがって、インターネットオークションの審査には、優れたヘッドジャッジが運営しなければ成り立ちません。

各生産国の過去のSPを踏まえ、「どのくらいすばらしいか」をお伝えするのが「テイスティング中級」セミナーの特色となります。
SPの品質と風味の幅を理解するには、多くのテイスティングが必要で、いきなり、80~100点の幅を判断するのは不可能ですし、スぺシャルティーコーヒー80点とコマーシャルコーヒー(CO:コモディティコーヒー)79点以下の境目の判断は、極めて難しいと思います。
80点に達していないものを80点以上に評価する傾向も顕著になっていると感じますので、80点の評価基準を明確にすべきと考えます。この判断のためには、多くのCOの体験も重要です。

個人的は80~100点の幅で評価したいのですが、現状での評価コンセンサスを崩すことになりますので、現状では、80から90(最大で95)点の狭い幅での評価にとどめざるを得ないと理解しています。

官能評価の点数すべてではなく、点数が独り歩きすることは、さまざまな問題が派生することも考えられます。一部のオークションでは、順位付けはしますが、スコアを明記しない事例も増え始めています。

前にも書きましたが、価格の高いゲイシャ種と優れたティピカ種では、官能評価では多くの場合ゲイシャ種が上にきます。しかし、ティピカ種のシルキーな触感と甘い余韻もしくは伝統種にということにも価値を見出せます。
また、深い焙煎度を求めればケニアのSL種の方が向いていますし、1年間経時変化せず安定した風味を維持できることに価値を置けばコスタリカのマイクロミルの豆の方がよいとも言えます。

スコアは、あくまでその時点のスコアであり、参考にはなりますが、生豆の品質には多様な価値があり。スコアのみで判断すべきでないということも付け加えたいと考えます。

次回は、SPの評価項目の評価基準について。また、その官能評価のもととなる理化学的な分析数値についてお話しします。日記ですので、校正、推敲なしで書いていますので、だらだらした文章はご容赦ください。

 

 

下記を参照ください。
1.SCAA Protocols | Cupping Specialty Coffee Published by the Specialty Coffee Association of America
 http://Microsoft Word – PR – CUPPING PROTOCOLS V.16DEC2015.docx (scaa.org)

2.著作:「スペシャルティコーヒーの本」 堀口俊英(旭屋出版)2005

3.論文: 堀口俊英 有機酸と脂質の含有量および脂質の酸価はスペシャルティコーヒーの品質に影響を及ぼす | AgriKnowledge (affrc.go.jp) 2018

 

堀口俊英(ほりぐちとしひで)
2002 年堀口珈琲研究所設立
2019年東京農業大学・環境共生学博士課程卒業