パパ日記

スペシャルティコーヒーの評価基準を考える 5

スペシャルティコーヒーのテイスティング4から続く
テイスティング(官能評価)項目における「AROMA」、「CLEAN」、「FERMENTED」の評価基準については、
曖昧ですので、少し整理しました。理化学的な数値の裏づけは後日。

 

「AROMA」については、GC/MS(ガスクロマトグラフィー質量分析機)で分析,同定できます。
様々な物質の濃度が示されますが、コーヒーの場合は多くの香りの複合で、濃度がそのまま香りに影響しているとは限りません。
この点がコーヒーの香り研究の難しい点です。
したがって、何がよい香りか?については基準を設けることは非常に難しくなりますので、官能評価は強弱と質で判断するしかありません。SCAのフレーバーホイールを使いこなすには無理があります。

また、香料物質は、それぞれ嗅覚閾値(低いと匂いを感じる、影響が大きい)が異なるため,GC/MSによる物質濃度だけでは感覚量の大きさは分かりません。
例えば、バラの香りといってもいくつかの分子から構成されますので、ある人がその中の何か一つに引っ掛かれば薔薇の香りと感知する場合がありますが、他の人には何も引っ掛からなければ薔薇の香りとは感知できません。

例えば、香りの閾値を見るとわかります。
エタノール(エチルアルコール)は520ppbですが、Acetic acid(酢酸・お酢を強烈にした匂いで、誰かが実験室で使用するとすぐにわかります)は6ppb、Limonene(柑橘系)は38ppb、Indole(臭い臭い)は0.30ppbです。ppbは、ppb. parts per billonの略で,10億分の1を1ppbといい、100万分の1がppmです。

したがって、Indoleは、すぐに感知できます。また、Acetic acidは、Limoneneより感知しやすいといえます。
したがってコーヒーの酸を判断するには、酸の強さはAcetic acidに惑わされないこと、酸の質はLimonene系を見出せるかで判断する必要があります。
優れたSPの場合、有機酸の組成は、クエン酸>酢酸であることは、私の分析で分かっていますので、香りはlimonene系、味はクエン酸系を意識してスティングする必要があります。

Naturalの精製の場合の評価項目は、「Fermentation」を評価項目に入れるべきと考えます。
Naturalの精製で感じる発酵臭は、精製プロセスにおける微生物による何らかの異臭と考えますので、高い評価はしません。
かすかな微発酵が風味によい影響を与えている場合、上品で発酵を感じさせないものは高い評価をします。

このあたりの感覚は、従来から流通しているエチオピアのG3~G5,イエメンのモカマタリなどの発酵は、ダメージの発酵臭と判断します。欠点豆の数が多すぎ、適切な風味は阻害されています。

しかし、エチオピアのG-1,イエメンの生産履歴の明らかなニュークロップ(流通は極めて少ない)、2010年以降に見られる中米産のNaturalの多くは、この異臭としての発酵臭は微細か、みられなくなっています。
Naturalの場合、発酵系の風味をどこまで容認するかですが、適切な精製プロセスから生じる風味を良しとするべきでしょう。

Anaerobicの精製の場合は、多くの場合、アルコール発酵している事例が多くみられます。
したがって、エタノール(ethanol/アルコールの一種)、ウイスキーなどという語彙表現が多くなります。
真空状態での酵母の発酵の研究はまだされていませんので、風味そのものにも安定性はありません。
農園内の酵母を培養したり、チェリーに付着している酵母以外を添加したりするのは、2次加工品としてとらえるべきでしょう。

この、果実に付着している酵母によるアルコール発酵は、コーヒーの場合心地よいとはいえませんが、その珍しさから、生産国や米国や日本の一部のコーヒー関係者の中にはそれをよしとする人もいます。
しかし、このアルコール発酵の強いものはNGで、Naturalの精製における発酵臭と同じようにダメージの風味として評価します。

過去2年間、多くの生産国のテイスティングをした結果、Anaerobic精製で高い評価をする場合は、微細なアルコール発酵などがもたらす独島の風味で、ジャスミンに近い香り、柔らかな酸味、甘味を伴う風味と認識しています。

 

コーヒーの風味の「CLEAN」(きれいさ)は、SPとCOを区分する極めて重要な要素です。
対する言葉として濁り感などがあります。
Washedの精製は、Naturalよりクリーンな傾向が見られますが、優れたNaturalはクリーンでもあります。
この透明感はわかりにくい概念ですが、2つの観点から説明します。

①欠点豆の混入数が多ければ濁り感が生じ、クリーンな感覚から外れていきます
COには欠点豆の混入が多いためクリーンなコーヒーは減少します。
②酸価数値が高いほど濁りを感じ、少なければ雑味を感じなくなります。
クリーンなコーヒーは、SPで感じることができますが、SPの中でもよりクリーンな方が高い評価になります。

例えば、以下のような傾向が見られますので、感覚的にとらえればよいでしょう。
優れたティピカ種は、透明感がありクリーンといえますが、経時変化とともにクリーンさは減少します。
グァテマラ産のブルボン種は、クリーンですが、カトゥーラ種が混ざるとやや濁ります。
コスタリカの2000mのマイクロミル産のカトゥーラ種はクリーンですが、標高が下がると濁り感を感じます。

欠点豆の混入数、酸価数値以外では、品種差、標高差などの要素もあり、乾燥の状態、その後の流通過程などの影響も受けますので、「きれいな感覚」というテイスティングスキルを身に付けるしかありません。
ワインの場合でも、クリーンさは非常に重要です。

その他の項目「ACIDITY」{BODY}についての説明は、ここでは省略します。
一部「The Study of Coffee」にも書きましたので参照ください。

 

堀口珈琲研究所のコーヒーセミナー
https://reserva.be/coffeeseminar

 


参考資料

SCAカッピングフォーム  SCA score sheet (modernstandardcoffee.co.uk)
堀口珈琲研究所官能評価表 

panama 水分値 pH aroma acidity body Clean Sweet
Pacamara/W   10.8 4.98 9 9 8 9 9 44
Geisha /W 10.8 4.94  8 8 8 8 8 40

著作「珈琲の教科書」(新星出版)堀口俊英 2000年
著作「The Study of Coffee」(新星出版)堀口俊英 2020年