こんにちは。広報担当の中川です。
今年もコエドブルワリーさんとの4回目となるコラボレーションを進めています。
今回は新作・【黒艶-Kokuen-】とともに、昨年期間限定で発売しご好評いただいた【織香-Worka-】を2種同時リリースします。
(※詳細はこちらをご覧ください。)
ところでみなさん、ビールがどのように作られているかご存知ですか?
実は知らなかった……。という方もいらっしゃるのではないでしょうか?(恥ずかしながらコラボするまでは私も知らなかったうちの一人です……)
そこで、今回はベースとなるビールの作り方をコエドのブルワー(醸造担当者)目黒さんに解説していただきました!
当社のロースターである大瀧・中島と一緒に、黒艶と織香のそれぞれのベースビールの仕込み見学にも行ってきたので、その時の写真も交えながらご紹介します。
※ベースビール製造場所…COEDO BREWERY THE RESTAURANT併設のブルーハウス
はじめまして。
堀口珈琲×コエドブルワリーのコラボレーション第4弾である「黒艶」、「織香」のビール側の担当を任されましたコエドブルワリーの目黒と申します。
「黒艶」、「織香」ともあらかじめ醸造したビールにコーヒー豆を漬け込んで作った商品(※)になります。
今回はこのビールができるまでについて簡単にご説明します。
(※)今回の製造工程上、ビールにコーヒー豆を漬け込んだ後の商品である「黒艶」、「織香」は酒税法の関係で「ビール」ではなく「発泡酒」になります。
ビールについて
まずはビールについての説明を簡単にしたいと思います。
ビールの原材料は麦芽(モルト)、ホップ、水、酵母。あとは副原料(織香、黒艶の場合は「コーヒー豆」)を入れたり入れなかったりします。
また麦芽(モルト)は大きく分けるとベースモルトとスペシャルモルトがあります。
ビールによっては使用しないこともあります。今回の織香、黒艶にはいくつかのスペシャルモルトを使用しました。
ビールを漢字で書くと“麦酒”。麦のお酒と書きます。
麦は大麦、小麦などの穀物のことを言い、ビールに使用するのは大麦が多いです。
お酒はアルコール(日本の酒税法上では1%以上)の入った飲料のことで、アルコールは酵母がアルコール発酵(糖をエタノールと二酸化炭素に分解)して作られます。
このアルコール発酵に必要な糖をぶどうから取っているのが葡萄酒(ワイン)、麦から取っているのがビールになります。
ただ最初に説明した通り、ビールの原材料は“麦”ではなく“麦芽”。かならず麦を発芽させたものを使用します。これは麦のデンプンはそのままではアルコール発酵ができないので、酵母が使用できる糖に分解させる必要があるからです。麦芽にすることによってデンプンを糖に分解する酵素が生成するのです。
ちょっと話が難しくなってきましたが、次は実際のビールの製造工程についてです。
今回は6つの工程をご紹介します。
1:糖化
2:麦汁ろ過
3:煮沸(殺菌)
4:ワールプール
5:冷却・酵母投入
6:発酵
それでは、各工程を見ていきましょう。
・ビールができるまで その1 「糖化」
「糖化」といわれるこの工程は麦芽のデンプンを糖に分解するために行います。
まず、麦芽は粉々にはせずに殻が残るように粗めに挽き(その理由は次の工程で説明します)、その粉砕した麦芽を酵素が働く温度のお湯に入れて混ぜます。お湯の温度は60~70℃くらいで、40分~1時間くらいかけて煮ていきます。ちなみに、酵素によって働きやすい温度があり、糖化温度の違いがビールのボディに影響します。
・ビールができるまで その2 「麦汁ろ過」
糖化が終わると麦芽はお粥のようにとろとろになります。この液体をろ過槽に移します。ろ過槽の底はスノコのようになっており、この上に麦芽の殻などの固形物が大きいものから下に積み重なっていき、これがフィルターの役割をはたします。このために麦芽は粗めに挽いていたのです。
その後、ろ過槽の下から液体を抜き、釜に移していきます。この液体を麦汁といい、最初に移した麦汁を“一番麦汁”といいます。
一番麦汁は特に甘みを感じられる。
ある程度ろ過槽から麦汁を抜いたら、ろ過槽の上からお湯を入れます。これはまだろ過槽の中に残っている糖を回収するためです。お湯を入れおわったら、またろ過槽の下から麦汁を釜に移していきます。これが“二番麦汁”です。もう1回同じ作業を行って、“三番麦汁”まで取り、次の工程に移ります。
・ビールができるまで その3 「煮沸」
釜に移した麦汁を煮沸し殺菌などをします。基本的にはここでホップを入れます。
ホップの中に含まれる成分に熱を加えることで苦味成分に変わり、これがビールの苦みになるからです。
ホップは苦みだけではなく香りづけの役割もあるのであまり熱を加えないように煮沸終了後などに加える場合もありますが、織香、黒艶はホップの香りよりもコーヒーの香りを強調したかったので基本の加え方をしています。
今回のプロジェクトでは漬け込む焙煎豆の製造管理を担当している。ホップ投入の様子を間近で見ることができた。
・ビールができるまで その4 ワールプール(渦巻き)
煮沸が終わった麦汁を“ワールプールタンク”に移します。
この時ワールプールタンク内で麦汁が渦を巻くように側面から勢いをつけて入れていきます。
そうするとホップなどの固形物がワールプール(渦巻き)の中心に集まります。
・ビールができるまで その5 冷却して発酵タンクへ
ワールプールの中心に固形物が集まったら、それ以外の液体の部分だけを冷却して発酵タンクに移していきます。
この時に一緒に酵母を入れるのですが、酵母の種類によって冷却する温度を調整します。
黒艶に使用したラガー酵母ですと10℃くらい。織香に使用した酵母ですと20℃くらいに調整して発酵タンクに移しました。
ここまでの工程を「仕込み」と呼んで1日で行っています。
・ビールができるまで その6 発酵
発酵タンクに麦汁と酵母が適度な温度で入ったらあとは酵母がアルコール発酵を行うのを見守ることになります。
織香で5日、黒艶なら1週間ほどでほとんどの糖がアルコールと二酸化炭素に分解され、お酒になります。
これで完成……ではなくここからさらに熟成させて味を調える必要があります。
織香で3~4週間。黒艶で1か月くらい仕込みの日から経つとビールとして出来上がり、コーヒー豆を漬ける工程に移ります。
次回はいよいよビールにコーヒー豆を漬ける工程、言ってみればビールをコーヒーエール、コーヒーラガーに変える工程です。
出来上がったビールの入ったタンクにコーヒー豆を入れるだけではないの?と思うかもしれませんが品質を上げるために特別な機具を使用しています。
詳しくは次回でご紹介しますので、どうぞお楽しみに。
目黒 匠(めぐろ たくみ)/ 株式会社協同商事 コエドブルワリー
2015年コエドブルワリー入社。もともとビール(ピルスナー)は苦手だったが以前勤めていた食品工場の近くにあったパブでクラフトビールを飲んだのをきっかけに好きになっていく。その後転職活動中にコエドブルワリーで募集があり応募。運よく採用される。コーヒーは昔から飲んではいたが詳しくはなく、堀口珈琲とのコラボをきっかけにスペシャルティコーヒーを知って飲むようになる。今では毎朝堀口珈琲の豆を挽いてコーヒーを淹れるのが日課に。よく飲むコーヒー豆はシティローストのシングルオリジンが多め。
コエドブルワリー(COEDO)について
COEDOは、1970年代から先駆けて有機栽培や特別栽培により生産される農産物を取り扱う青果事業を中心とする㈱協同商事が設立母体の埼玉県川越市発のブルワリーです。同地域の名産品であり、落ち葉堆肥農法という循環式農業で栽培されるさつまいも「紅赤」の規格外品と連作障害対策の緑肥としての大麦の有効活用を着想の原点に、ビール醸造を1996 年に開始しました。
「Beer Beautiful」をコンセプトに掲げ、「紅赤-Beniaka-」を筆頭に、日本の職人たちの細やかなものづくりと『ビールを自由に選ぶ』というビール本来の豊かな味わいの魅力をクラフトビール「COEDO」を通じて、武蔵野の農業の魅力とともに発信しています。
シカゴ・ワールドビアカップ、ニュルンベルク・ヨーロピアンビアスター、ブリュッセル・iTQiなど、世界の品評会で受賞し、品質とブランドデザインにグローバルな評価を得ており、各国に輸出もされています。
2020 年 7 月には、川越駅西口 に「ブルワリーのある街づくりの共創」をコンセプトに、新業態となる醸造所併設レストラン「COEDO BREWERY THE RESTAURANT」と生ビールを専用容器「グロウラー」でテイクアウトできる小さな売店「COEDOKIOSK」をオープンしました。
WEB:https://www.coedobrewery.com/jp/
ONLINE SHOP:https://webshop-coedobrewery.com
いかがでしたか?ビールが作られる工程を知っておくと、よりおいしさを実感できるのではないでしょうか。
次回はこのベースビールにコーヒー豆を漬け込む工程について、引き続き目黒さんに解説していただきます。
※ブルワー・目黒さんとロースター・大瀧の職人同士による対談はこちら(コラボレーションインスタライブ)からご覧ください!商品が生まれるまでの開発秘話などを聞くことができます。