たのしいコーヒー

【 COEDO×堀口珈琲 】#2 ベースビールにコーヒー豆を漬ける

【 COEDO×堀口珈琲 】#2 ベースビールにコーヒー豆を漬ける

 
こんにちは。広報担当の中川です。
 
前回(【COEDO×堀口珈琲】#1 ベースビールをつくる )に引き続き、コエドブルワリーのブルワー(醸造担当者)目黒さんに「織香」と「黒艶」ができるまでを解説してもらいます。
 
今回は「ベースビールにコーヒー豆を漬ける方法」です。
 
 


 
 
こんにちは、コエドブルワリーの目黒です。
 
先日、堀口珈琲のみなさんに埼玉県東松山市にあるCOEDOクラフトビール醸造所に来てもらい、一緒に作業を行いました。
 
作業の内容は、ベースビールにコーヒー豆を漬けて、ビールにコーヒーのアロマとフレーバーを加える、というものです。
 
 
まず前提として、ビールはビールタンクに入った状態です。前回ご説明したとおり、このタンクの中で今回のベースビールを熟成させてきました。
 
ビールタンクは上部が円筒形で下部が逆三角錐の形をしたもので、この中にビールと二酸化炭素が入っています。
 
なぜ二酸化炭素が入っているかというと、普通の空気を入れてしまうと空気中の酸素がビールに触れて酸化し、好ましくない臭い(オフフレーバー)がついてしまうからです。
 
このビールタンク内のビールにコーヒー豆を入れてコーヒーのアロマとフレーバーをビールに移行させたいわけです。
 
 

 

 

ベースビールが入ったビールタンク

 
 
一番簡単な方法としてはビールタンクの蓋を開けて上からコーヒー豆を入れるというのが考えられます。
 
この方法の欠点としては、蓋を開けたときにコーヒー豆と一緒に空気が入ってしまうリスクがあることと、ビールからコーヒー豆を取り除くためにビールを他のタンクに移すといったやや手間のかかる作業が必要になることがあります。
 
そこで織香・黒艶に関してはこの方法は取らずにHopGun(ホップガン)という機具を使用しました。
 
 

 

 

 

 

HopGun(ホップガン)

 
 
HopGunはロケットのような細長い円筒形のタンクで、中に金属のフィルターが入っています。
 
名前に“ホップ”がついていることからわかるとおり、いつもは中にホップを入れて、IPA(ホップを大量に使用してホップアロマ、フレーバーを強調したビール)などのビールを作る時に使っています。
 
仕組みとしては、ビールタンク内のビールがHopGunの横から入り、HopGun内のホップ層を通ってHopGunの下からビールタンク内に戻ります。
 
こうしてビールがHopGunとビールタンクの間を循環することによってHopGun内のホップからアロマとフレーバーを抽出していきます。
 
 

 

 

 

 

手前左がビールタンクで右奥がHopGun。赤と青のホースで繋ぎ、液体を循環させる。

 
 

 

 

目黒さんにHopGunの仕組みをイラストで説明してもらった。

 
 

 

 

フレーバーづけが始まる前に、念入りに工程を確認する堀口珈琲の大瀧(左)と中島(右)。
中島は初めての参加となるためメモを片手に真剣な様子。

 
 
織香と黒艶の場合、このHopGunにホップの代わりにコーヒー豆を入れ、ベースビールをビールタンクとHopGunの間で循環させました。
 
HopGunにコーヒー豆を入れた後は、さらに二酸化炭素を入れます。これによって酸素は追い出され、オフフレーバーのリスクがなくなります。
 
また、HopGun内のフィルターによってビールタンク内にコーヒー豆が入らなくなるので、ビールとコーヒー豆を分離するのも簡単になっています。
 
 

 

 

当社が用意したコーヒー豆。織香はエチオピア 「【ウォルカ】 ウレインチニーチャ ウォッシュト シティロースト」。
機械での選別後、さらに人の手による“ハンドソーティング”で選別された良豆だけを使用。

 
 

 

 

HopGunにコーヒー豆を投入する。

 
 

 

 

大きな三脚を使って協力しながら豆を投入。

 
 

 

 

コーヒー豆が入ったHopGunにベースビールが入っていく。豆が液体に浸かっていくのが見える。

 
 
このHopGunを使うことの利点は他にもあります。
 
HopGun内のコーヒー豆もビールの流れによって動き続けるので、ビールタンクにコーヒー豆を入れた時よりも抽出スピードが格段に速くなります。
 
2019年度のコーヒービール「澄虎-Sumatera-」の時はまだHopGunが導入されていなかったのでビールタンク内にコーヒー豆を入れる方法を取っていたのですが、この時は2~3日コーヒー豆をビールの中に入れていました。
 
それがHopGunを使用した今回の織香では約10分、黒艶では約7分でコーヒー豆からの抽出が終わりました(織香と黒艶の抽出時間の差はローストの差で決まったものらしいですがそのあたりは堀口珈琲の大瀧さんと中島さんに任せました)。
 
抽出時間が日単位(細かく見ても何時間単位)から分単位になったことでより細かい味の調整が可能になりました。
 
 

 

 

約10分という短い時間の中で、ベストな風味を探るために繰り返しテイスティングを行う。
数十秒ごとに風味はどんどん変化していくので緊張が走る。

 
 

 

 

こうしてそれぞれのコーヒー豆のアロマとフレーバーを加えて作られた織香と黒艶はその後、ろ過をして酵母を取り除き、瓶に充填されて皆様のお手元に届くことになります。
 
織香と黒艶はベースとしたビールのスタイルは違いますが、それぞれのコーヒー豆の特徴を感じて楽しんでいただければ幸いです。
 
 
 

 
 
目黒 匠(めぐろ たくみ)/ 株式会社協同商事 コエドブルワリー
 
 
2015年コエドブルワリー入社。もともとビール(ピルスナー)は苦手だったが以前勤めていた食品工場の近くにあったパブでクラフトビールを飲んだのをきっかけに好きになっていく。その後転職活動中にコエドブルワリーで募集があり応募。運よく採用される。コーヒーは昔から飲んではいたが詳しくはなく、堀口珈琲とのコラボをきっかけにスペシャルティコーヒーを知って飲むようになる。今では毎朝堀口珈琲の豆を挽いてコーヒーを淹れるのが日課に。よく飲むコーヒー豆はシティローストのシングルオリジンが多め。
 
 
コエドブルワリー(COEDO)について
 

 
COEDOは、1970年代から先駆けて有機栽培や特別栽培により生産される農産物を取り扱う青果事業を中心とする㈱協同商事が設立母体の埼玉県川越市発のブルワリーです。同地域の名産品であり、落ち葉堆肥農法という循環式農業で栽培されるさつまいも「紅赤」の規格外品と連作障害対策の緑肥としての大麦の有効活用を着想の原点に、ビール醸造を1996 年に開始しました。
「Beer Beautiful」をコンセプトに掲げ、「紅赤-Beniaka-」を筆頭に、日本の職人たちの細やかなものづくりと『ビールを自由に選ぶ』というビール本来の豊かな味わいの魅力をクラフトビール「COEDO」を通じて、武蔵野の農業の魅力とともに発信しています。
シカゴ・ワールドビアカップ、ニュルンベルク・ヨーロピアンビアスター、ブリュッセル・iTQiなど、世界の品評会で受賞し、品質とブランドデザインにグローバルな評価を得ており、各国に輸出もされています。
2020 年 7 月には、川越駅西口 に「ブルワリーのある街づくりの共創」をコンセプトに、新業態となる醸造所併設レストラン「COEDO BREWERY THE RESTAURANT」と生ビールを専用容器「グロウラー」でテイクアウトできる小さな売店「COEDOKIOSK」をオープンしました。
 
WEB:https://www.coedobrewery.com/jp/
ONLINE SHOP:https://webshop-coedobrewery.com
 


 
 
 
「織香」「黒艶」ができるまでの様子を2回に渡ってコエドブルワリーの目黒さんに紹介してもらいました。目黒さん、ありがとうございました!
 
2020年の「織香-Worka-」から導入したHopGunを使用したコーヒー豆のフレーバーづけ。
 
昨年は初めての取り組みだということもあり、両社の社長も立ち会いながらの挑戦でした。
 
風味の変化の速度に驚きながらも無事に最適な風味づけができ、全員でホッとしたことを覚えています。
 

 

2020年時の様子。中央に並ぶのがコエドブルワリー社長の朝霧さんと当社社長の若林。

 
 

 

 

昨年の経験からHopGunでの風味付けは時間との勝負だと痛感していたので、ブルワーの目黒さんとロースターの大瀧・中島の緊張感が感じられる製造現場でした。
 
 

 

無事にフレーバーづけが終わり記念に集合写真を。左から大瀧・目黒さん・中島。

 
 
今年は「織香」「黒艶」の同時発売を記念して、両社の社長と職人が2種を飲み比べながらそれぞれの魅力を語るインスタライブも実施しました。
 
ほろ酔いになりながらも、おいしい飲み方やフードペアリングについてもご紹介していますので、ぜひ動画のアーカイブをご覧ください。
 
 
COEDO×堀口珈琲のコラボレーションは年々パワーアップしています。
 
ブルワーの目黒さんとロースターの大瀧・中島は早くも次回作の構想を練り始めているようです。
 
それぞれの職人が技術を持ち寄り、これまでにないコーヒービールを目指すこのコラボレーションプロジェクト。ぜひ来年もご期待くださいませ!
 
 

 

 

ブランディング部 広報・中川