今回のテーマは「コーヒーの表現」。
「軽快」や「重厚」、「口当たり」や「余韻」など、皆様もコーヒーの記事でよく遭遇するお馴染みの言葉たち。改めてよく考えてみると、一体どういうこと(状態)をそう表現するんだろう……となる言葉も多いのではないでしょうか。
もちろん、感覚は十人十色です。体調や気分によっても変わります。当然、このコーヒーはこう感じなければいけない、ということもありません。
一方で、「このコーヒーはここが良いよね!」「こんなニュアンスも感じられたよ!」と共感し、話し合える体験も大切にしたい。そのために、「表現」に対してある程度共通した認識が必要になってくるのです。
今回はそんな「コーヒーの表現」にまつわるお話です。
「質感」の表現
コーヒーは、香り、味、質感(テクスチャー)が一体となり複雑な味わいを生み出しています。
今回はコーヒーのおいしさを語るには欠かせない【質感】に着目してみましょう。
私たちが単純に質感を表現するとき、基本的には味と区分して表現をしています。
まずは、以下の表現をみてみましょう。あるコーヒーの特徴を紹介した文章です
例)
柑橘の果物を思わせる華やかで明るい酸。シルクのような、きめ細やかでなめらかな質感。花の蜜のような甘く心地よい余韻。冷めてくるとクリアさが際立ち、ほんのりと若草を思わせる爽やかな風味が顔を出します。
コーヒーの香りや味わいの表現と共に、上記の強調箇所で「質感」を表現しているのがお分かりいただけると思います。シルクのよう、フランネルのよう、ベルベットのよう等、これらは全て味ではなく「質感の滑らかさ」に因んだ表現です。
「質感+香味」の表現
では、以下の表現はどうでしょうか。
例)
元々ボディの強いブラックバーン農園ですが、イタリアンローストにすることで丸みを帯び、クリームやバターのような粘性のある質感を感じさせます。極深煎りだからこそ引き出せる、粘性やこってりとした甘みが相まって、カカオ分の高いビターチョコレートのような風味を連想させます。
上記の強調箇所は同じように「質感」を表現していますが、こちらは「質感」に「香味」を交えたニュアンスで使用されています。
ジャム、クリーム、バター、チョコレート等、これらは「粘性からくる質感の滑らかさ」に「香味」を交えた表現です。コーヒーを飲みこんだ後に舌の上から液体がゆっくり消失していくと粘性が強いと感じ、素早く消失してしまえば粘性が弱いと感じます。
「質感」単独の表現と、「質感+香味」の表現。
両者は密接にかかわりがありますが微妙に違い、「シルクのような粘性」とは表現しないところに官能評価の難しさがあります。一つだけ絶対的なことは、液体が濁っていることを「粘性がある」とは言わないことです。
粘性はクリーンなコーヒーに感じ得るものであり、クリーンではないコーヒーではこの感覚は阻害されてしまいます。だからこそ、私たちは粘性があるコーヒーにこだわりがあるのです。
コーヒーの「質感」を感じてみよう
ここからは、堀口珈琲の定番ブレンドCLASSICシリーズから【質感】をキーワードにそれぞれ違う焙煎度のブレンドをいくつかご紹介したいと思います。質感の種類、質感と果実感・甘さみ・・・等々、是非この機会に質感に着目して飲み比べてみてください。
【♯1 BRIGHT & CITRUSY ハイロースト】
浅い焙煎ながらも感じられる複雑な口当たりは、ひとつひとつの素材がもつ質感の特性を理解し十分に活かせるように焙煎を施したことでようやく引き出すことができています。
その複雑な口当たりを存分に生かしつつ、華やかな酸や果実のような甘い酸など、様々な酸のニュアンスを持った素材をうまく配合したことで表現した“おいしい酸味”が感じられるブレンドです。
【♯5 SMOOTH & CHOCOLATY フルシティロースト】
酸味は穏やかでほろ苦い余韻が味わえる#5は、”質感の重層“を最重要視しています。
質感のニュアンスが異なる3種類の素材を使用し、クリームのようなとろんとした口当たりや、くちどけの良いチョコレートのような滑らかさを感じさせる“質感の重層”を心地よく感じていただけるブレンドです。
【♯6 WINEY & VELVETY フレンチロースト】
コーヒーでワイニーさを表現したブレンド。ポイントは、複雑さと果実味、そして質感です。素材に選ばれるのは果実味やスパイシーな風味をもったコーヒーの中から深い焙煎にも耐えられる一握りのコーヒー。華やかな風味に、ベルベットのようなきめ細やかでリッチな質感をお楽しみいただけます。
【♯9 SMOKY & SYRUPY イタリアンロースト】
定番ブレンドCLASSICシリーズの中で最も焙煎度の深いイタリアンローストのブレンド。極めて深く焙煎したその先には、重厚な苦味とともに、濃密な質感が現れます。粘性の強い質感は舌の上に長く残り、重厚な苦味と甘みが、静かに、ゆっくりと消失していきます。シロップのような粘性のある質感が特徴的なブレンドです。
まとめ
質感はコーヒーのおいしさを語るには欠かせない要素の一つ。
シルクのよう、フランネルのよう、ベルベットのよう等「質感」に注目した表現や、ジャム、クリーム、バター、チョコレート等「質感」と「風味」の両方を視野に入れた表現で、そのコーヒーのおいしさの一面を語ることができます。
質感の中でも粘性はクリーンなコーヒーに感じ得るもの。クリーンでないとこの感覚は阻害されてしまいます。
コーヒーは、香り、味、質感(テクスチャー)が一体となり複雑なおいしさを生み出しています。
ぜひ質感にも着目しながら、コーヒーを楽しんでみてください。