たのしいコーヒー

コーヒーとSDGs|第一回 SDGsって何?

コーヒーとSDGs|第一回 SDGsって何?

目次


  1. 1.SDGs、すなわち「持続可能な開発目標」
  2. 2.「開発」とは
  3. 3.「持続可能な開発」とは
  4. 4.環境・社会・経済の三つの側面
  5. 5.SDGsとは何か
  6. 6.「人」のための目標

 

「ルワンダと出会い、深め、繋がる1年」と銘打って始まった特別企画「Muraho Rwanda!」。今シーズン、素晴らしい品質のコーヒーが揃ったルワンダを知り、最大限お楽しみいただくために、様々な特集記事や企画を予定しております。

 

 

 

今回、そのルワンダをご紹介するための大きな切り口として考えているものが「コーヒーとSDGs」というテーマです。近年日本でも重要視されているSDGsという考え方。皆様も一度は聞いたことがあるのではないでしょうか。そんなSDGsがコーヒーとどう関わっているのか、堀口珈琲とルワンダを知る上でどう重要なのか、そもそもSDGsとは何か、まずはその切り口となるテーマの前提をご紹介していきたいと思います。本シリーズ記事は、「Muraho Rwanda!」でご用意しているルワンダコーヒーについて理解するための3つのフェーズのなかの1つ目『ルワンダと出会う』に位置付けています。

 

 

シリーズ通して筆を執るのは堀口珈琲CSO(チーフ・サステナビリティ・オフィサー)である伊藤です。20年以上この業界に携わり産地との関わりも深く、コーヒーを扱う企業としての社会的責任を考え続けてきた人間です。

それでは本編へ、どうぞ!

 

 

SDGs、すなわち「持続可能な開発目標」


 

SDGsはSustainable Development Goalsの略です。日本ではSustainableを「持続可能な」、Developmentを「開発」、Goalsを「目標」とそれぞれ訳し、その順番のまま組み合わせて「持続可能な開発目標」としています。この中の「目標」という言葉は私たちが普通に使うのと同じ意味で使われていますが、そうとも言えないのが「持続可能な」と「開発」です。順序は前後しますが、まずは「開発」の方から見てみましょう。

 

「開発」とは


 

「開発」とは上述のとおり、「開発」は英語のdevelopment(動詞developの名詞形)の訳語です。developはフランス語に起源を持ち、もともとは「自分を包んでいたものから脱していく」といったことを意味します。日本語に一対一で対応する言葉がなく、場合に応じて「開発」以外にもさまざまに訳されます。例えば、「発展」や「発達」「発現」「発生」「発育」「成長」「展開」「進展」などなど。developは政治学や経済学の世界で長く使われている専門用語でもあり、「人が経済的・社会的にさらに豊かになる」といったことを指します。この意味で使う場合、「開発」と訳すのが慣例です。Sustainable Development Goalsが「持続可能な開発目標」と訳されるのもこの慣例に基づいています。「開発」と聞いて私たちがイメージするもの(例えば「都市開発」や「資源開発」)とはニュアンスがちょっと違いますね。「持続可能な開発目標」という言葉のわかりづらさの一因はこのあたりにあるのかもしれません。

 

 

「持続可能な開発」とは


 

「持続可能な開発」とは「持続可能な」すなわち「サステナブル」という考え方は水産資源管理に関する研究から生まれたそうです。漁業資源を枯渇させずに利用しながら長期にわたり維持できる年間漁獲量として、「持続漁獲量」という考え方が早くも1931年に提唱されています。「持続可能な開発」という概念が初めて公表されたのは、その半世紀後の1980年。国際自然保護連合(IUCN)が策定した「世界保全戦略」においてでした。しかし、SDGsで用いられる意味での「サステナブル」の考え方が確立する画期になったのは、「環境と開発に関する世界委員会(通称:ブルントラント委員会)」が1987年に公表した報告書「Our Common Future」だとされます。同報告書では「持続可能な開発」を中心的な概念として取り上げ、「将来世代のニーズを満たす能力を損なうことなく、今日の世代のニーズを満たすような開発」と定義しました。

 

環境・社会・経済の三つの側面


 

その後もさまざまな議論を経て、現在は次のような認識が共有されています。すなわち、持続可能な開発には環境・社会・経済の三つの側面があること、三側面のうち環境は他の二側面の基盤になっていること、三側面は相互に関連し依存しあっているため統合的に扱い調和させる必要があること、です。SDGsとはこうした認識の下、2015年9月に国連で採択されました。

 

SDGsとは何か


 

では、SDGsとは何でしょうか。これにはさまざまな答えがありえますが、私は最近、こう答えることにしています。

「世代を超えて、すべての人が、自分らしく、よりよく生きられるように、世界を変革するための目標」

SDGsは「2030アジェンダ」(正式には「我々の世界を変革する:持続可能な開発のための2030アジェンダ」)という文書の一部です。確かに、SDGs自体を知るためには少なくとも17の目標の文言(アイコンに添えられた短いキャッチコピーでなく、目標自体)を読むことは必要です。しかし、仮にさらに進んで169のターゲットまでしっかり読み込んだとしても、肝心のSDGsが目指す世界の姿は浮かび上がってこず、その意味ではSDGsを真に理解したことにはならないでしょう。その理念を理解するという意味では、2030アジェンダの中でSDGsの前にある「前文」や「宣言」の方がむしろ重要といっても過言ではありません。全部を読むのが大変でしたら、前文から宣言第9段落まで目を通すことをお勧めします。

 

「人」のための目標


 

前文や宣言を読むとわかるのは、SDGsは究極的には「人」のための目標であるということです。実際、宣言の中には、2030アジェンダが「人々の、人々による、人々のためのアジェンダ」であることが明示されています(第52段落)。17の目標のうち、最初の6つは「人(People)」に関するものとなっています。特に重視されているのは、貧困の撲滅です。すなわち、まずは「人」ありきで、そのためにどのような環境・社会・経済であるべきか、が示されているのです。決して、自然環境を保護するために、人の暮らしを犠牲にしろ、とは書かれてはいません。まずはこのことを押さえておきたいと思います。

なお、前述した「SDGsって何?」に対する私の答えは、私のオリジナルではありません。実は、ある書籍からの受け売りです。その書籍とは田瀬和夫・SDGパートナーズ著の『SDGs思考』。ビジネスパーソン向けの本ではありますが、類書に比べて記述は平易で読みやすく、「はじめに」と第1章を読むだけでもSDGsへの理解が深まりますので、お勧めです。

以上を踏まえて、次回はSDGsやサステナビリティとコーヒーの関わりについて考えたいと思います。

 

 

伊藤 亮太(いとう りょうた)
株式会社堀口珈琲 取締役CFO ( 最高財務責任者 ) / CSO ( チーフ · サステナビリティ· オフィサー)
大学卒業後、宇宙開発事業団(現JAXA)に10年間勤務する。2002年にコーヒー業界へ転身し、2003年に堀口珈琲に入社。以来一貫して海外のコーヒー関係者との連絡調整を担当する。2013年4月から2020年6 月まで代表取締役社長を務め、2020 年 7 月より現職。