産地のはなし

持続可能なコーヒー生産に向けて 堀口珈琲のニャミラマプロジェクト in ルワンダ

持続可能なコーヒー生産に向けて 堀口珈琲のニャミラマプロジェクト in ルワンダ

目次


  1. 1.ニャミラマプロジェクトとは
  2. 2.<短期>施肥とブタの飼育
  3. 3.<中期>コーヒーの樹の剪定
  4. 4.<長期>シェードツリーの定植
  5. 5.ポテト臭対策
  6. 6.新しい取り組み

 

 

ニャミラマプロジェクトとは


 

現在、堀口珈琲とルワンダ南部で活動する「コアカカ協同組合(コーヒー生産者組合)」では「ニャミラマプロジェクト」という活動を通じて、コーヒーの品質向上とそれを持続していく仕組みづくり、そして、これらを基盤とした生産者の生活安定の実現を目的として様々な施策を行っています。2017年から始まるこのプロジェクトは、単なる思い付きで始まったわけではありません。まだルワンダが”新興産地”として紹介されていた十数年前から、素晴らしい品質のものも見受けられました。しかし、ポテト臭、シェードツリー不足、土壌浸食の問題などもあり、なかなか品質が安定しないことが課題でした。

クリーンなコーヒーを生産できる非常に高いポテンシャルを備えていることや、ケニアやエチオピアなどの派手さの際立った個性ではなく、柑橘を思わせる果実感を伴ったきれいな酸やバランスに優れた味わい、といった、他のアフリカ産地には見られない特性があることもあり、堀口珈琲として長期的に、積極的に活動していこうと決めました。そこで立ち上がったのがニャミラマプロジェクトです。

各農家の皆さんの献身的な協力によって、成果はじわじわと出てきました。それは、毎年届くコーヒーからも実感でき、今では他の優れた産地に比肩するほどのクリーンさと土地ならではの素晴らしいキャラクターを感じさせてくれるコーヒーが届くようになってきました。堀口珈琲のルワンダでの活動の中心として、これからも現地と二人三脚で進めていきたいと思っています。

ここからはそんなニャミラマプロジェクトについてご紹介していきます。農業に関する難しそうな話も出てきますが、そんな部分はそっと読み飛ばしながら、最後までご覧いただければ嬉しいです。

写真右がコアカカ協同組合のマネージャーであるサファリさん。かつて日本にも来ていただき、講演会の実施や焙煎所の見学もしていただきました。写真左はニャミラマ集落の中心的な生産者ヴィンセントさんです。

 

■ニャミラマプロジェクトを支える3つの柱

<短期>施肥とブタの飼育
不足した栄養素を補う短期的な目的と、それらを長期にわたって保持できる優れた土壌を作る長期的な目的があります。土壌有機物がないと窒素・リン酸・カリウムなどの植物が主に必要な養分を与えてもそれを土中に蓄えることができないのです。ブタのフンはそれら双方の効果があるので、農家へのブタの配布も行いました。

<中期>コーヒーの樹の剪定
ルワンダには剪定(カットバック)の文化が根付いておらず、枝が生え放題の状態でした。これでは栄養の行き渡るバランスも悪く、害虫発生のリスクも高まるため、定期的な剪定が必要です。各農家へ剪定器具を配布して実施をお願いしています。やりなれない作業ですが、とても協力的にやっていただいています。

<長期>シェードツリーの定植
コーヒー農地にとって非常に重要なシェードツリー。過度な陽射しや雨・雹からチェリーを守るだけでなく、土壌流出を防ぎ、落ち葉は土壌有機物になります。ルワンダでは内戦の影響もあり、燃料にするため木が切り倒されてしまっていることが多く、シェードツリーはほとんどみられません。

 

 

<短期>施肥とブタの飼育


 

品質向上に対して最も短期的に効果が表れているのは、肥料をあげることです。品質の高いコーヒーを持続的に生産していくためには土作りが非常に大切です。土作りは短期的に効果を上げる施肥(それを見た農家のモチベーションも上がります!)と、将来的に土を使っていくために必要な腐植をじっくりと増やすための施肥に分けて行っています。腐植(土壌有機物)が増えることにより土の養分保持能力が上がり、また適度な保水性と適度な排水性も備えることができるのです。

施肥に加え、「マルチング」も行います。農地に木が少ないことで水はけが良すぎてしまう農地があります。そのため、藁や草で地面を覆うマルチングという対策を行っています。マルチングは土壌流出の他にも雑草が生えにくくなったり、土壌を介した木の伝染病を防ぐ効果もあります。

土壌有機物は植物の発育に必要な栄養素を土の中に保持する働きがあり、これが含まれるほど土は黒くなる傾向があります。下の写真、同じ農地の様子ですが、土壌改善を行った左のパートでは、土が黒くなっていることがお分かりいただけるはず。

ブタのフンは土壌にとってとても有益です。直接的に栄養素を土壌に与えることができる上に、それらを保持する効果もあります。そのため、プロジェクト発足時から各農家にブタをプレゼントしています。

 

 

<中期>コーヒーの樹の剪定


 

ニャミラマプロジェクトの最初の活動として各農家に剪定用具を配布しました。

健康なコーヒーの樹を育てていくために定期的に行わなければならないのが剪定(カットバック)です。根よりも枝葉が成長しすぎた樹木は栄養が適切に行きわたらず弱ってしまいます。根と地上に出ている茎葉や枝のバランスがとても大切です。剪定をすることでそのバランスを合わせます。また、生い茂った葉や枝を取り除き、病気や害虫を予防することも期待できます。

 

 

<長期>シェードツリーの定植


 

シェードツリーの植え付けも長期的には大事な活動になると考えています。ルワンダは他のコーヒー産地と比べると農園内にシェードツリーが少なく、中には全く植えられていない農園もあります。シェードツリーを植えることでコーヒーにとって好適な農地環境を作れるだけでなく、激しい雨から土が流れるのを防いでくれたり、落ち葉が土を豊かにしてくれる効果もあります。2018年にシェードツリー用のナーサリー(苗床)を作り、現在は農地に移され2~3メートル、早いものだと5~6メートルに成長しています。シェードツリーとしてはまだまだ低いですが、着実に育ってくれています。

またルワンダは内戦中の伐採や薪炭にするために多くの木が切られてしまっています。その代わりにユーカリやグラベリアなど、建材や豆類栽培の添え木として使えるような実用的な木が植えられている状況です。コーヒー農園内にルワンダに自生していた木をシェードツリーとして植えることで地域の自生植物の保全に繋がりますし、このような取り組みがニャミラマ以外にも波及することで不法な森林伐採の防止に繋がると期待しています。

(余談ではありますが)写真はニュングウェの森です。観光客も多く訪れる国立公園になっており、広大な原生林が楽しめます。上記の通り、ルワンダの土地は内戦の影響で多くの木が切り倒されてしまいはげ山となってしまっているところが多いため、このような森をもっと復活させたいと現地の人々は思っているそうです。ちなみにここはナイル川の源流。アフリカNo.1の大河に繋がる貴重な水源です。

このシェードツリーの定植は、実は農家からの協力が最も得にくかった活動です。農家の希望として、地域に自生していた樹木よりも外来種でも実用的な木を植えたいというのが本音で、最初はあまり木を植えてくれませんでした。コアカカ協同組合の農業技官との話し合いの結果、自生樹木と実用的な苗を組み合わせて配ることで自生樹木の植え付けを促進しました。2019年からはナーサリーにグラベリアも追加しています。グラベリアは成長が早く、すでに6、7メートルに成長しています。一方で、ユーカリについては砂漠などで土壌を定着させるためには有用ですが、他の植物に必要な栄養を非常に多く奪ってしまうため、コーヒーの樹と一緒に植えるには大きなリスクを伴います。

 

ポテト臭対策


 

ポテト臭(※)はルワンダがコーヒー産地として抱える問題のひとつです。ニャミラマではこの豆の発生を抑えるため、様々な取り組みを行っております。農地では原因とされているムシ(アンティスティアバグ)を捉えるトラップを設置。また、収穫後もチェリーの手選別、水を浮力を利用した選別など、ダメージを受けたコーヒーを徹底的に除去しリスクの低減を図っています。

(※)ポテト臭について・・・ルワンダのコーヒーからはポテト臭が発生する豆が混入していることがあります(ポテト臭という名前で浸透していますが、日本人の感覚ですとゴボウのような匂いです)。当社で扱うルワンダの商品に関してはポテト臭の豆が混入する確率は何万粒にひとつ程度です。万が一ポテト臭が出た場合は、大変恐縮ですが抽出をやめ、臭いの出た粉のみ廃棄していただければ幸いです。どうか前述の事情をご承知のうえ、お買い上げくださいますようお願いいたします。尚、仮に該当の豆を抽出して飲んでも健康に害を及ぼすことはございませんので、その点はどうかご安心下さい。

 

新しい取り組み


 

現在11の農家がプロジェクトメンバーとして所属しておりますが、一部では農家の高齢化や跡継ぎ不在の懸念も出始めています。今後もこのプロジェクトを力強く継続するため、新たにメンバーを増やす案が出ています。この活動は継続していくことが大切ですので、状況を見つつ柔軟にプロジェクトを進められればと思っています。

これまで、専任スタッフの派遣や産地訪問、「コアカカ協同組合」との共同プロジェクトの推進を通じて積極的に参入してきた成果が実を結び、徐々に良いコーヒーが多く入り始めます。なかには他の優良産地に肩を並べるレベルのクリーンさと個性を備えるコーヒーも。これには私達は何度も驚かされました。

 

まとめ


 

ルワンダについて紹介したいことはまだたくさんありますが、今回の記事はここまでにしておきましょう。
まずはルワンダのことを少しでも身近に感じていただければ幸いです。

今後もルワンダに関する様々な記事を公開していきます。毎日飲むコーヒーがどのような国で、どのような生産者が、どのような想いで作っているのか。その背景を知ることで、コーヒーをよりおいしく、より身近な存在として感じていただければ幸いです。

オンラインストアの特設ページ「RWANDAful COFFEE」では年間を通してルワンダの多様なコーヒーを紹介しています。こちらもぜひご覧ください!


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