たのしいコーヒー

コーヒーとSDGs|第二回 コーヒーがSDGsと関わる理由

コーヒーとSDGs|第二回 コーヒーがSDGsと関わる理由

目次


  1. 1.コーヒーがSDGsと関わる理由
  2. 2.サステナブルコーヒー
  3. 3.過大評価は禁物
  4. 4.それでもコーヒーにできることはある

 

「ルワンダと出会い、深め、繋がる1年」と銘打って始まった特別企画「Muraho Rwanda!」。今シーズン、素晴らしい品質のコーヒーが揃ったルワンダを知り、最大限お楽しみいただくために、様々な特集記事や企画を予定しております。

 

 

 

今回、そのルワンダをご紹介するための大きな切り口として考えているものが「コーヒーとSDGs」というテーマです。近年日本でも重要視されているSDGsという考え方。皆様も一度は聞いたことがあるのではないでしょうか。そんなSDGsがコーヒーとどう関わっているのか、堀口珈琲とルワンダを知る上でどう重要なのか、そもそもSDGsとは何か、まずはその切り口となるテーマの前提をご紹介していきたいと思います。本シリーズ記事は、「Muraho Rwanda!」でご用意しているルワンダコーヒーについて理解するための3つのフェーズのなかの1つ目『ルワンダと出会う』に位置付けています。

 

 

シリーズ通して筆を執るのは堀口珈琲CSO(チーフ・サステナビリティ・オフィサー)である伊藤です。20年以上この業界に携わり産地との関わりも深く、コーヒーを扱う企業としての社会的責任を考え続けてきた人間です。

それでは第二回本編『コーヒーがSDGsと関わる理由』へ、どうぞ!

 

併せて読みたい!
<<『コーヒーとSDGs|第一回 SDGsって何?』

 

 

コーヒーがSDGsと関わる理由


 

コーヒーはなぜSDGsと結びつくのでしょうか。

主な理由の一つは、生豆が開発途上国を中心に生産されていることです。しかも、全世界の生豆の70%は小規模な農家によって生産されています。彼らの中には、経済的・社会的・環境的に脆弱な立場に置かれている人も少なくありません。

もう一つの理由は、コーヒーの木が熱帯で育ち、本来は日陰を好む植物であることです。このためコーヒーの木は森林の中やそれに近い状態の畑(すなわち日陰をつくる高木も生える畑)で栽培できます。すなわち、コーヒー栽培は熱帯の林やそれに準ずる生態系の保全と両立できる可能性があるのです。にもかかわらず、現在、大半のコーヒーの木は森林を切り開いて造成された農地で栽培されています。増え続けるコーヒーの需要に対応するため、さらにコーヒー用の農地が必要になり、それが森林への圧力になっていることも懸念されています。

こうしたことから、コーヒーは主に生豆の生産国において次のようなS D G s の目標に密接に関わっています。すなわち、人々(People)に関するSDGsの目標1 ~ 6(それぞれ貧困・飢餓・健康・教育・ジェンダー・水に関する目標)や目標13 ( 気候変動)、目標15 ( 陸域生態系)です。生豆の生産に続く加工や流通、消費においてもコーヒーはSDGsと関わります。たとえば、焙煎時などに温室効果ガスが発生することが目標13(気候変動)と関連しますし、抽出かすという相当量の廃棄物が発生することが目標12(製造・使用責任)と、包材に使われるプラスチックが海洋などの生態系に放出される恐れがあることが目標14 ( 海洋生態系)と関わります。

 

サステナブルコーヒー


 

SDGsとも多くの面で密接に関わるということは、SDGsの前提となる問題や課題にそれだけ関係しているということでもあります。実際、コーヒーを原因とする人々の搾取や貧困化、森林を含む自然環境の破壊が歴史的には常態でしたし、現代においてもこうしたことの多くは解決されていません。

だからこそ、こうした多くの接点でマイナスの影響をプラスに反転させることができれば、コーヒーはそのような問題・課題の解決に役立つことになります。そうした役割を期待されるのが、いわゆる「サステナブルコーヒー」です。その代表格ともいえるフェアトレードコーヒーは生産者に公正な対価を払うことが基本ですし、環境系のN G O などが認証する商品はコーヒーの木の栽培や生豆の生産による生態系の劣化を防ぐことを中心的な条件としています。

 

 

過大評価は禁物


 

残念なことに、昨今のコーヒー業界では「サステナブルコーヒー」が果たせる役割を誇張しすぎる言説も見受けられます。

例えば、世界におけるコーヒー農家が2,500万世帯を超すことなどを根拠として、コーヒー産業の規模は大きい、それゆえその動向が世界の経済・社会・環境に与える影響も大きい、という主張です。1960年代であれば、確かにこれは妥当な主張だったかもしれませんが、現代においては必ずしもそうではありません。コーヒーの作付面積は他の熱帯作物(サトウキビやアブラヤシなど)に比べてすでに小さくなっていますし、多くの生産国の経済においてコーヒーの重要性も格段に低下しています。また、コーヒーの生産から消費に至るライフサイクル全体が世界の温室効果ガスの発生に占める割合もごくわずかです。さらに言えば、現在の世界において最も緊急で重大な地球規模の危機に対してもコーヒーが果たせる役割はほとんどありません。

そうした危機のひとつが武力紛争とそれに伴う多数の難民の発生です。例えば、コーヒーが重要な産品であるイエメンにおいてさえ、コーヒーを通じた外国からの支援が入っていたにもかかわらず、結局は現在の激しい内戦の勃発を防ぐことはできませんでした。

 

それでもコーヒーにできることはある


 

しかし、こうしたマクロなレベルではなく、個別の事例においてはSDGsの達成に向けてコーヒーにもできることがあります。

先ほどの武力紛争を例にとれば、紛争後の社会復興においてコーヒーが役に立った事例は数多くあります。紛争後に限らずとも、人々が貧困から脱するのにコーヒーが最も効果的に寄与できる時期や地域も実際に存在します。例えば、私が先日訪ねたルワンダの農家の人々は現金収入の実に7 ~ 9 割をコーヒーから得ています。最近の品質向上と生産量増加を通じて収入が増えた結果、家族が健康保険に加入でき、子どもの教育費も増やせたと喜んでいました。

自分たちが扱う商材にこうした力があるのですから、私どものようなコーヒー事業者はその本業を通じてS D G s に貢献すべきです。とはいえ、だからといってコーヒーの役割や力を誇張するのはいただけません。なぜなら、それが事業者の過剰な自画自賛(いわゆる「SDGsウォッシュ」)につながるだけでなく、消費者の判断も歪めるおそれもあるからです。すなわち、「サステナブルコーヒー」さえ買っていればあたかも自分がSDGsに多大な貢献をしているかのような誤解を消費者に与えるおそれです。そうした誤解がなければ、消費者は自分の資源(おカネや時間、労力)を別のところに振り分け、もっと実効的にSDGsに貢献できたかもしれません。
確かにコーヒーはSDGsに貢献できます。しかし、過大な評価や期待は禁物です。マクロな規模で世界を変えることはコーヒーにはもはやできません。だからこそ、できることをきちんと見分けて、それにふさわしい役割を果たしてもらう。それが大切なのだと思います。

 

 

伊藤 亮太(いとう りょうた)
株式会社堀口珈琲 取締役CFO ( 最高財務責任者 ) / CSO ( チーフ · サステナビリティ· オフィサー)
大学卒業後、宇宙開発事業団(現JAXA)に10年間勤務する。2002年にコーヒー業界へ転身し、2003年に堀口珈琲に入社。以来一貫して海外のコーヒー関係者との連絡調整を担当する。2013年4月から2020年6 月まで代表取締役社長を務め、2020 年 7 月より現職。