body(舌、歯茎及び歯を含む口内で知覚される触覚などの総合的な感覚)
mouthfeel(試料の持つ風味の豊かさ、または口内の触覚器官への刺激で検出される流動特性に対する感覚)
ともにコクとしてみますので、基本的にはBodyとします。
この感覚は難しく、基本的には粘性で、水<サラダオイル<バターとかミルク<生クリームのほうがコクがあるという感覚です。
粘性の程度と質で見ます。程度は、厚みや複雑さなどで、質はティピカ品種にシルキーな触感があれば、マンデリンにベルベットのような触感があればともに高く評価にします。
これらのコクを形成する要因の一つに脂質量があり、官能評価と脂質量の間には相関性がみられることは明らかになっています。
コーヒー生豆には、12~19%程度の脂質があり、それらはコーヒーの香りを吸着するとともにテクスチャーに差をもたらします。
脂質量は焙煎しても大きな変化はしません。
脂質は有機溶媒に溶けますが、水には溶けません、したがってコーヒー抽出液に含まれる脂質量はあまりに微量ですので、その際を官能的に感知するのは難しいといえます。
フレンチプレスや金属フィルターのほうがオイル分を多く抽出するためコクが出ておいしくなるというのは誤りです。ペーパードリップよりは油脂が多くなりますが微量です。逆に抽出液は濁りますのでコクを感知するのは難しくなります。
ただし、エスプレッソは130度の蒸気を伴う湯でかつ、かつ圧力をかけますので抽出液に脂質が溶解しています。したがってbrixは10をこえ、透過法や浸漬法よりはるかに濃度があり、コクがあることになります。
一般的な、透過法や浸漬法の抽出液のbrix(溶液中の溶質%)は1,2~1.4程度です。
カッピングでは、同じ粉の量、同じ粒度、同じ抽出時間で行いますので、コクの差異の感知はは難しいといえます。
しかし、これは経験やトレーニングでできるようになります。
多くの場合、同緯度の産地であれば高い標高産の豆のほうが、密度のある豆のほうがコクが強い傾向がみられます。主には、気温の影響を受けると考えられます。
今回のは、コロンビア北部、中部、南部の豆を試料としました。
私の官能評価と味覚センサー値の相関性を見たものです。官能評価とセンサー値の間にはほぼ相関性がみられます。
コロンビア北部のシエラネバダ<中部のトリマ<南部のウイラのほうがコクが強いことがわかります。ナリーニョは最もコクが強い産地ですが、前年cropですので脂質量が減少しています。
脂質量も分析しましたが、今回はn=1の分析で精度にかけたため、官能評価との相関は取れませんでした。
また、コクは脂質量のみではなく、メイラード反応が生み出すメイラード化合物の影響も受けると考えられますが、ここの分析は難しく、現時点ではコクの指標にすることができません。