堀口珈琲で働くスタッフへ、
日々の仕事内容についてインタビューをしました。
今回は、入社3年目の若手スタッフ・山本へのインタビューです。製造部に所属し、いつも目を見て「お疲れ様です!」と元気に挨拶してくれる山本さん。その存在だけでロースタリーが明るくなるような、エネルギッシュな彼に、堀口珈琲で働くことになったきっかけや、パート・アルバイトから正社員へのキャリアアップについて話を聞きました。
聞き手は、ブランディング部・広報の中川。部署の垣根を越えて、堀口珈琲で働くスタッフの魅力に迫ります。
2022年入社 製造部所属
山本 竜弥
コーヒーとの出会い
――今日は堀口珈琲で働くまでのことや、日々の業務のことについてお聞かせください。よろしくお願いします。
山本:よろしくお願いします!
――山本さんはコーヒーが好きで、前職もコーヒー関連の仕事だったと聞いています。ではまず、コーヒーを飲むようになったきっかけを教えてください。
山本:受験勉強を始めた高校2年生のころです。毎朝、眠気覚ましに缶コーヒーを飲んでいたのですが、あまりおいしく感じられなくて。「それなら、もっとおいしいコーヒーを飲もう」と思って、自宅でペーパードリップを始めました。最初はスーパーでコーヒー粉を購入してきて、商品の裏面のレシピを参考にいれてみたのですがやっぱりおいしくなくて。レシピどおりにドリップしているのにおいしくないのはなぜだろう?と日々疑問に感じていました。
――おいしくない、というのはどういった感覚ですか?
山本:「ただ苦いだけの液体」というイメージでした。だから、砂糖やミルクを入れてごまかしながら飲んでいたんです。そんなある日、地元の駅に自家焙煎のコーヒー店ができたので、ふらっと立ち寄ってみたところ……飲んだコーヒーがとてもおいしくて、驚きました。果実のようなニュアンスを感じることができ、酸味はあるのに嫌な感じがしない。これまで自分が飲んでいたものとは全然違って、コーヒーは苦いだけじゃないと知りました。それから、そのお店に通うようになり、コーヒーの風味表現や抽出方法を教えてもらううちに、どんどんのめり込んでいきました
――それは高校生の頃の話ですか?
山本:そうです。高校の最寄り駅が横浜の元町・中華街だったので、まずは学校近くのコーヒー店を開拓するようになりました。その中で「横浜元町珈琲」を訪れ、LCF(※)や堀口珈琲のことを知ったんです。今でも鮮明に覚えていますが、横浜元町珈琲で飲んだ「コロンビア ナリーニョ フレンチロースト」があまりにもおいしくて、感動しましたね……。苦みのなかに明るい柑橘のニュアンスがはっきりと感じて、何度も口に運びたくなる感覚でした。この一杯で、“コーヒー=嫌な後味の液体”というイメージがひっくり返りました。それがきっかけで、堀口珈琲の虜になってしまいました。
――その時に、堀口珈琲と出会ったのですね。実際にお店には足を運ばれましたか?
山本:出会った当時は高校生で、都内にはあまり行く機会がなかったので、堀口珈琲はオンラインストアで購入していました。大学に入学し、行動範囲が広がると、堀口珈琲の店舗にも足を運ぶようになりました。授業の帰りには、雑誌「珈琲時間」を参考にして、都内や横浜のコーヒー店巡りを楽しんでいました。多いときは週に4回ほど、バイトがない日は学校の帰りにどこかしらのコーヒー店に立ち寄るというルーティンができていました。
――大学生になってからも、コーヒーへの情熱は変わらなかったんですね。
山本:そうですね。実は、外国語を専門とする大学に進学したのですが、将来はコーヒーに関わる仕事がしたいという思いがあって、「スペイン語学科」を選びました。コーヒーの生産地、とくに中米エリアはスペイン語圏なので、コーヒーと向き合うならスペイン語を学んでおくべきだなと考えたんです。
――その時点ですでに、将来の姿を思い描いていたんですね。就職活動では、コーヒーに関わる仕事にもさまざまな選択肢があったと思いますが、その中で山本さんはどんな道を選んだのですか?
山本:まずは堀口珈琲で働きたかったので、当時、焙煎所だった狛江店に直接行って、新卒採用をしているかスタッフの方に聞いてみました。するとあっさり「やっていない」と言われてしまって(笑)。でも焙煎の様子を間近で見せてもらって、「やっぱりここで働きたい」という気持ちは強まりました。でもその時は泣く泣く諦めることにしました。
――そうだったんですね。そうなると、「じゃあどうしよう……」って迷いますよね。
山本:堀口珈琲で働けないのなら、まずはコーヒーに関わる会社に就職しようと思い、新卒採用をしていたコーヒーメーカーに入社しました。1年目は地方に配属され、業務用のルート営業を担当していました。主な仕事は、卸先に商品を車で配達することで、多い日は1日で200〜300kmほど走ることもありました。コーヒーメーカーに勤めてはいたものの、「自分が思い描いていたコーヒーの仕事って、これだったのかな?」と疑問を持つようになりました。
ただ、社内の独自資格を取得すれば、他の部署に異動できるかもしれないと思い、とにかく自主的に勉強してスキルアップを目指していました。そして1年後、横浜支店に異動となり、横浜に戻ってしばらく経った頃、堀口珈琲の横浜ロースタリーでパート・アルバイトの採用が始まったんです。コーヒー豆をオンラインで注文しようと、ふとブランドサイトを見たときに、そのお知らせを偶然見つけたんです。
――それは製造部のスタッフ募集ですか?
山本:はい、そのときは正社員ではなく、製造のアルバイトスタッフの募集でした。当時の僕は、日々の仕事にギャップを感じていて、「このまま違和感を抱えながら働き続けるべきなのか、それともコーヒー業界から一度離れるべきなのか」と悩んでいました。でも、高校生の頃からずっとコーヒーのことばかり考えてきた自分に、「じゃあ他に何ができるんだろう?」という思いが浮かび、悩んでいたタイミングでした。そんなとき、ずっと働きたいと思っていた堀口珈琲の募集を見つけて、「これは運命だ」と感じ、すぐに応募しました。
――堀口珈琲で、なぜ働きたいと思ったのですか?
山本:単純に、めちゃくちゃコーヒーがおいしいからです。自分が大好きなそのコーヒーを作っている場所で働きたい。ただ、それだけです。同時に、その魅力をもっと多くの人に知ってもらいたい、という思いもあります。大学生の頃には、コーヒー好きの仲間たちと集まって、自分のお気に入りのお店のコーヒーを振る舞うこともしていました。僕はいつも堀口珈琲の豆を使っていて、いれたコーヒーを友達が「おいしい!」と感動してくれるのが、すごく嬉しかったんです。この頃からずっと、自分の中にあるのは「おいしいコーヒーを知ってもらいたい」という思いなんです。
信頼を勝ち取るために
――正社員を辞めて、アルバイトとして働くことに、不安はありませんでしたか?
山本:そのときには、もうまったくありませんでした。もちろん親には心配されましたが、「大好きな堀口珈琲で働けるんだから、それでいいでしょ」という気持ちでした。ちょっと強気だったかもしれませんけど……(笑)。
――「もう後悔したくない」という気持ちが強かったんですね。入社してから、横浜ロースタリーでは最初にどんな仕事を担当しましたか?
山本:最初に教わったのは、焙煎豆のハンドソーティングと充填作業でした。できるだけ早く認めてもらえるように、「信頼を勝ち取ろう」「こいつなら任せられる」と思ってもらえるよう、常に意識して行動していました。その結果、アルバイトで入社してからちょうど1年後に、契約社員になることができました。
――信頼してもらうために、どんなことを意識していましたか?
山本:当時の作業自体はシンプルでした。でも、製造部の仕事には正確さに加えてスピードも求められるので、正確さと速さを両立させることを常に意識していました。細かいことではありますが、掃除なども誰よりも素早く、スピーディに終わらせて、「山本は他のスタッフとは違う」と思ってもらえるように行動していました。
――アルバイトから契約社員になって、仕事内容には変化がありましたか?
山本:働き始めて1年が近づいた頃、製造部の仕事のひとつである「SC(スケジュールコントロール)」をやってみないか?と声をかけていただいたんです。そこから一気に、仕事内容の幅が広がりました。
――「SC」はどんな仕事ですか?
山本:SCの主な役割は、一日の焙煎スケジュールを組み立て、製造スタッフの動きを管理することです。一番早く出勤し、その朝に算出された受注データをもとに焙煎量を集計し、2台の焙煎機の稼働数とスケジュールを組み立てていきます。そのうえで、スタッフの配置も決めていきます。午後は主にブレンドの製造を担当します。ブレンドも受注データを参考に、在庫を確認しながら9種類を順に製造していきます。各種シングルオリジンを計測し、ブレンダーで混合する作業ですね。
また、出荷エリアの流通チームとはインカムで常時やり取りをしていて、製造全体の流れを見守る「ロースタリーの司令塔」のような立ち位置です。
――SCの業務が一人前にできるようになって、契約社員になられたんですね。現在は正社員としてご活躍ですが、今はどんな仕事を任されていますか?
山本:今年の1月から、「製造管理チーム」のリーダーを任されています。安心かつ効率的に製造が行えるよう、現場の環境を整えるのが主な役割です。また、生豆・焙煎豆・廃棄豆の在庫管理も行っています。そして、先ほどお話ししたSCの業務も引き続き担当しています。
――その業務以外にも、焙煎やハンドソーティングをしている姿を見かけることもありますが……?
山本:ロースタリーの正社員は、全員がロースターです。生豆の選別、焙煎、ハンドソーティングと、すべての作業を自分たちで行います。
1日の業務の中でポジションを切り替えながら働きつつ、それぞれ自分の所属チームでの役割も責任を持って担っています。
――全員がロースター。では、焙煎ができるようになるためには、どんな力が求められるのでしょうか?
山本:焙煎には指示書があって、そのとおりに操作すれば、基本的には誰でも焙煎はできます。でも、自分の判断で焙煎をコントロールできるようになるためには、「堀口珈琲が求める風味」と「そうでない風味」の違いと、その成り立ちをしっかり理解している必要があります。たとえば、指示書どおりに焙煎してもネガティブな風味が出てしまった場合、その原因を正しく見つけられないと、次に活かせません。
――その「おいしいコーヒー」を理解するために、山本さんが取り組んでいたことは何ですか?
山本:やはり一番は、先輩との「味のすり合わせ」です。
コーヒーの風味はどうしても主観的になりやすいので、堀口珈琲が大切にしている風味基準を意識しながら、自分がどう感じたかをきちんと言葉にするようにしています。
その際、なるべく認識にズレがないように、風味表現のすり合わせを丁寧に行っています。これは製造部の全スタッフが日々取り組んでいることですね。
風味確認は基本的に二人で行うことが多く、お互いのコメントを交換し合う機会をなるべく多く持つようにしています。
自分のやり方で堀口珈琲を広める
――ずっと憧れていた堀口珈琲。実際に入社してみて、何かギャップは感じましたか?
山本:ありました、いい意味でのギャップです。ロースタリーで実際に働き始めて驚いたのは、「ここまで徹底してやりきっているのか」という点ですね。
そして、「だから堀口珈琲って、こんなにおいしいんだ」と心から納得できて、感動しました。あとは、スタッフ一人ひとりのコーヒーに対する情熱の高さです。おいしさを追求するストイックさや、風味を表現する言葉の豊かさにも驚かされました。
なによりも、ロースタリーのみなさんは、内に情熱を秘めている方が多いんです。そうした姿に、日々刺激を受けています!
――今後、堀口珈琲での目標などありますか?
山本:大げさじゃなく、堀口珈琲のおいしいコーヒーに出会って、僕の人生は変わりました。だからこそ、今は「堀口珈琲に貢献したい」という気持ちで働いています。
堀口珈琲があり続ける限り、僕たちはおいしいコーヒーを飲み続けることができる。そのために、僕はこのブランドを絶やしたくないと思っています。
僕の根底にはいつも「堀口珈琲をもっとたくさんの人に知ってもらいたい」という思いがあります。だからそのためなら、やり方にはこだわっていません。製造でも、店舗でも、ECでも営業でも、ブランディングでも──どの部署にいても、「広めること」はできると思っています。
今は製造部にいるので、SNSでロースタリーの日々の様子を発信していますが、いつか横浜ロースタリーの見学会でお客様をご案内することにも挑戦したいです。自分の仕事について、自分の言葉で直接お伝えできたら嬉しいですね。もちろん、店舗での接客にも興味があります。
それから、今すぐにでもできることとして、せっかく自由においしいコーヒーが飲める環境なので、ロースタリーのスタッフみんなで行う「コーヒー試飲会」の頻度をもっと増やしたいと思っています。
パート・アルバイトさんにも気軽に参加してもらって、休憩中に自然と「飲み比べ」ができるような、そんな環境づくりができたら素敵だなと。
――その「堀口珈琲を知ってもらいたい」という思いを持ち続けて働く姿勢、本当に素晴らしいです。これからもその熱意を大切に、日々の業務に励んでください!
山本:ありがとうございます!
――では最後に、少しだけプライベートのこともお聞かせください。今、夢中になっていることや、仕事で悩んだときのリフレッシュ方法があれば教えてください。
山本:最近は「マラソン」にハマっています。フルマラソンにも挑戦しているんですよ。
あと、愛車が「ロードスター」っていうオープンカーなんですが、夜は屋根を開けて、風を感じながら走るのが最高なんです(笑)。
――すごい。プライベートでも疾走感がありますね。「風」を感じながら、ぐんぐんと前に進んでいく姿勢が、山本さんらしさだなと感じました。さて、以上でインタビューは終了です。ありがとうございました!
山本:自分の話ばかりで大丈夫でしたかね?!(笑)ありがとうございました!
※…「LCF」とはコーヒー生豆を共同で購入する、堀口珈琲が運営するグループ。約120店の自家焙煎店が加盟している。「横浜元町珈琲」もLCFメンバーの一つ。