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「誰かのために」が、原動力 / 店舗事業部:佐藤 雄太

「誰かのために」が、原動力  / 店舗事業部:佐藤 雄太

 
堀口珈琲で働くスタッフへ、
日々の仕事内容についてインタビューをしました。

 

今回は、店舗統括として活躍する佐藤にインタビュー。店舗事業部に所属し、狛江店の店長を務める一方で、世田谷店の運営も管理しています。店頭に立つ佐藤さんは、誰に対しても気さくで親近感のある接客姿が印象的です。
 
聞き手は、ブランディング部・広報の中川。部署の垣根を越えて、堀口珈琲で働くスタッフの魅力に迫ります。
 
 
2013年入社 店舗事業部所属 
佐藤 雄太

 
 

 
 
 
入社のきっかけは「勢い」
 
 

――今日は、店舗事業部で10年以上活躍されている佐藤さんに、堀口珈琲との出会いや日々の業務についてお話をうかがいます。よろしくお願いします。
 
 
佐藤:よろしくお願いします。
 
 
――まずは、佐藤さんのこれまでのキャリアについて教えてください。
 
 
佐藤:宮城県仙台市の出身で、もともとインテリアや家具に興味があったことから、インテリア・空間デザインの専門学校に進学しました。卒業後は、家具や生活雑貨を扱うインテリアショップで働いていました。
 
 
――インテリアショップにお勤めだったんですね。そこからコーヒーに興味を持たれたきっかけは?
 
 
佐藤:インテリアが好きで、喫茶店やカフェの空間を見るのも楽しくて、次第にカフェ巡りをするようになりました。そのうち、空間だけでなく、提供されるコーヒーそのものにも興味が湧いてきたんです。ただ、当時は漠然と「一度は海外で暮らしたい」という考えがあり、2年間働いてお金を貯めたあと、アイルランドへ渡り、1年間ワーキングホリデーをしていました。
 
 
――海外生活も経験されたのですね。アイルランドではどのように過ごしていたのですか?
 
 
 
佐藤:最初はホームステイやシェアハウスで暮らしながら、語学学校に通っていました。お金はあまりなかったのですが、時間だけはたっぷりあったので、格安航空券を使ってヨーロッパ各地を旅して回っていました。
でも、アイルランドに行って半年ほど経ったころ、日本で東日本大震災が起きました。すぐに帰国しようと思ったのですが、家族から「今帰ってきてもできることはないから」と言われ、そのままアイルランドに留まることにしました。
日々、日本のことを心配するばかりで、何もできない自分がもどかしくなって。「ここで何かできないか」と思い、現地にいた日本人のコミニュティと協力してチャリティ活動を始めることにしたんです。毎週のようにスーパーマーケットやモールで募金活動を行い、日本赤十字に寄付を送りました。
 
 
――そのような経験があったのですね。行動力がありますね!
 
 
 
佐藤:自分は本当に人に恵まれていると感じます。あのときも「何かしたい」と思っていたけれど、一人では動けなかったかもしれない。周囲の人たちのおかげで行動できたんだと思います。
 
 
――その「思いを行動に変える力」は、今の佐藤さんにもつながっている気がします。その後、日本にはどのタイミングで戻られたのですか?
 
 
 
佐藤:半年ほど旅を続けたあと、日本に戻りました。いろいろな経験と、親への借金を抱えての帰国でした(笑)。仙台に戻ってからは、アルバイトを二つ掛け持ちしていて、そのうちの一つがチェーンのコーヒーショップでした。生活が落ち着き、「これから本格的に仕事をしよう」と思ったときに、「やっぱりコーヒーを仕事にしたい」という気持ちが強くなっていったんです。
 
 
――堀口珈琲の店舗には訪れたことがあったのですか?
 
 
 
佐藤:はい、世田谷店に行ったことがありました。仙台で通っていた好きなカフェと同じように、まず空間の居心地の良さに惹かれました。何より、スタッフの方がいれてくれたコーヒーが本当においしくて。オンラインストアで買ったコーヒーももちろんおいしかったのですが、店舗で飲んだコーヒーの味は格別でした。
 
 
――入社後、最初はどのようなお仕事から始めたのですか?
 
 
 
佐藤:最初は、当時の製造拠点だった狛江店に配属されました。1週間の初期研修を経て、3ヶ月間の実地研修があり、それを終えて本採用という流れでした。
まずは狛江店の喫茶で、提供しているコーヒーの風味を覚えながら、お客様にコーヒーを提供するところからスタートしました。次第に、焙煎豆のパッキングやハンドソーティングといった製造のサポート業務も経験させてもらいました。
当時の自分は、コーヒーが好きというだけで知識はゼロ。勢いで応募したようなもので、ロースターを目指す職人気質な先輩たちに付いていくだけで必死でしたね。
 
 

 
 
 
現場で身につけた接客方法
 
 
 
――知識ゼロの状態でスタートして、日々の仕事を覚えていくのは大変だったと思いますが、どんなことを工夫していましたか?
 
 
佐藤:堀口珈琲には、学べる情報が本当に豊富で。たとえば、オンラインストアに掲載されている記事をよく読んで、接客時の会話に活かせるように意識していました。また、店舗では毎日たくさんのコーヒーを飲むので、他のスタッフがその風味をどう表現しているかを聞いて、少しずつ言葉を覚えていきました。
その後、無事に本採用となり、しばらくしてから世田谷店に配属されました。当時の狛江店と世田谷店ではまた雰囲気が違って、世田谷店は創業のお店だからか、少しピリッとした空気を感じましたね。そこでは主に物販(豆売り)を担当しました。
 
 
――その時に印象的だったことはありますか?
 
 
佐藤:接客時の「伝え方」ですね。お客様に合わせて、わかりやすい言葉を選んで伝える。コーヒー以外の何かに例えて表現することも時には大切だということを学びました。このスキルは、当時物販担当としてご一緒した先輩から教わりました。
 
 
――狛江店・世田谷店を経験した佐藤さん。入社前と後のギャップは何かありましたか?
 
 
佐藤:正直なところ、勢いだけで入社してしまったので、もともとのイメージがあまりなかったんです(笑)。ただ、「おいしいコーヒーをつくっている会社」という認識だけはありました。実際に働いてみて、コーヒーへの向き合い方や、スタッフのプロフェッショナルな姿勢には本当に驚かされました。
 
 
――そうした環境に対して、不安になることはありませんでしたか?
 
 
佐藤:何度もありました(笑)。狛江での最初の3ヶ月間の研修は日々の業務についていくだけでも正直きつかったですし、世田谷店で物販に立ちながらこのままでいいのかと悩むこともありました。でも、そんな中で上原店に異動になり、店頭業務に加えて焙煎を学ばせてもらえるようになり、新しい刺激になりました。期間としては1年未満でしたが、本当に濃密な時間を過ごしました。店頭での豆販売の仕方一つとっても本当に勉強の日々でしたね。特に、現社長の若林さんの接客スタイルには衝撃を受けました。
 
 
――若林さんの豆売りスタイルはどのようなものだったのでしょう?
 
 
佐藤:「豆を売るぞ」という押し出し感がまったくなかったんです。常連のお客様が来店されると、店の奥にあるデスクから顔をのぞかせて、今飲むべきコーヒーをさらっと伝える。そんな自然なやりとりなんですが、お客様の好みと豆の状態をしっかり把握しているからこそできる対応なんですよね。そして、いきなり詳しい情報を語るのではなく、最後にさらっと情報を加える。その「導入に情報を伝えすぎない接客」が、とても印象的でした。
 
 
――たしかに。最初からたくさんの情報を伝えられると、ちょっと構えてしまうこともありますよね。でも、お店の方におすすめしてもらえると、自然と手に取ってみたくなる。そのバランスはとても大切ですね。佐藤さんも、今も店頭で豆を販売されることが多いと思いますが、接客時に意識していることはありますか?
 
 
佐藤:お客様にもよりますが、特に初めて来店された方には、その方の目線や雰囲気をよく見て、まずは「話しかけやすい雰囲気」をつくることを意識しています。
 
 

 
 
 
狛江店・世田谷店を支える統括として
 
 
 
――今現在のお仕事について教えてください。佐藤さんはどんな役職でお仕事をしていますか?
 
 
佐藤:狛江店の店長を務めつつ、世田谷店と狛江店の統括も担当しています。
 
 
――「統括」とは、具体的にどんなことをしているのでしょうか?
 
 
佐藤:基本的には両店舗の店舗管理がメインです。世田谷店に関しては今のところアドバイザー的な立ち位置で、社員が考える企画などに対してアドバイスを行い、サポートするような役割を担っています。
 
 
――狛江店の店長業務では、どんなことを意識されていますか?
 
 
佐藤:狛江店では「攻めの姿勢」を大切にしています。どんな企画を打ち出せば、お客様はもちろん、スタッフも楽しんで取り組めるか。そういったことを常に考えています。当然、収支のバランスも意識しながらです。
 
 
――「攻めの姿勢」については後ほど詳しく伺うとして、まずは店長としての1日のスケジュールを教えてください。
 
 
佐藤:特別なことは正直なくて、他の社員と同じように出勤して、その日の業務確認、前日の売上や状況の把握から始まります。その後、開店前には必ずコーヒー豆のショーケースの前に立って、お客様目線でラインナップをチェックします。必要があれば豆の並びを変えたり、プライスカードの風味表現の調整もしたりします。ちょっとした言葉の違いでも、印象が変わるんですよ。

強いて言えば、店長として特に意識しているのは「お店全体の雰囲気」です。狛江店はパン屋「aosan comaé」が奥に入っていることもあり、来店されるお客様の目的がさまざま。そのため、お客様の仕草や目線から、何を求めて来店されたのかを瞬時に判断するようにしています。スタッフにも、「お客様の目線」に注目するよう伝えています。目線には、その人の目的が表れるので。
 
 
――スタッフの指導もされていますが、どんな点を意識していますか?
 
 
佐藤:声の掛け方は、その時々の状況に応じて変えています。例えば、シフトのバランスが崩れがちなタイミングには、やや緊張感のある伝え方をすることもあります。楽しく働ける環境づくりは大事にしていますが、締めるところはしっかり締める。それがチームのまとまりにつながると思っています。
狛江店のスタッフは明るくて前向きな方が多いのですが、だからこそ“楽しいだけ”にならないよう、メリハリを大切にしています。
 
 
 

 
 
 
――佐藤さんが一緒に働きたいと思うのは、どんな人ですか?
 
 
佐藤:もちろん「コーヒーが好き」という情熱は大前提ですが、それ以上に「人に興味を持てる人」と一緒に働きたいですね。店舗はお客様ともっとも近い場所なので、相手に関心を持てることが重要ですし、スタッフ同士の関係性においても、人に興味がある人のほうが自然と気遣いができると思うんです。
 
 
――佐藤さんのお店づくりへの想いが伝わってきます。狛江店でのセミナーやイベントなど、さまざまな取り組みをされていますよね。
 
 
佐藤:はい。まず、狛江店では月に1〜2回、抽出セミナーを実施しています。自宅でもおいしくコーヒーをいれられるようになることを目的とした、やさしい内容のセミナーです。「コーヒーってちょっと難しい……」と思われないよう、平易な言葉でわかりやすく伝えるよう心がけています。
 
 
――近隣のイベントにも積極的に出ていますよね。
 
 
佐藤:「狛江店をもっと盛り上げたい」「多くの方に知ってもらいたい」という思いが強くあります。店舗に来てくださるお客様には限りがありますが、イベントに出ることで接点を広げられます。実際、イベントでコーヒーを飲んでくださった方が「おいしかったから来ました」と店舗に足を運んでくれることもあり、とても嬉しくなりますね。

また、イベント運営は一人ではできません。スタッフにも協力してもらっています。普段の営業とは異なる環境で、お客様も違いますから、スタッフにとっても良い刺激になると思います。
 
 
 


 
 
原動力は「誰かのために」
 
 
――佐藤さんは、入社して12年目です。これまでで特に印象深かった出来事はありますか?
 
 
佐藤:やはり「狛江店のリニューアル」ですね。堀口珈琲でさまざまな業務を経験させてもらいましたが、あの時は正直一番しんどかったです……。営業を続けながらリニューアル後の店舗像を考えたり、工事中に臨時店舗で何をするかを決めたり、本当に頭がパンクしそうでした。
でも、狛江店スタッフや他部署のみなさんが助けてくださったおかげで、なんとか乗り越えられました。今振り返ると本当に貴重な経験をさせてもらいました。狛江店リニューアルを任せてもらえてこと、支えてくれたみなさんに対して感謝しかありません。
 
 
――リニューアルから2年が経ちましたが、現在の狛江店の様子はいかがですか?
 
 
佐藤:リニューアル時に掲げた店舗のビジョンや雰囲気、やりたかったことは、一つずつ実現できていると感じています。しかも、スタッフが楽しみながら取り組んでくれている。それが何よりうれしいですね。
実は狛江店には「カジュアル&マニアック」という内部スローガンがあります。入りやすく親しみやすい雰囲気の中に、専門性の高さやこだわりがある。現状、「カジュアル」な部分は達成できているので、今年は「マニアックの強化」をテーマにしています。
スタッフ全員の知識をさらに深めて、より魅力的なコーヒーの案内ができるようにしたい。情報発信の方法も工夫して、もっとできることを増やしていきたいです。
 
 
――地域との関わりについても考えていることはありますか?
 
 
佐藤:狛江店のコンセプトには「つどう・まなぶ・むすぶ」があります。セミナーなどを通して“つどう”・“まなぶ”は形になってきましたが、“むすぶ”については、もっと取り組んでいきたいですね。狛江地域との接点をさらに増やしていきたいと思っています。
 
 
――これからの狛江店の展開が楽しみです。ちなみに、佐藤さんが考える「堀口珈琲らしさ」って、どんなところにあると思いますか?
 
 
佐藤:やはり「スタッフ全員がコーヒーを好きで、自社の商品に誇りを持っている」という点ですね。これは当たり前のようで、実はすごく難しいことです。以前、チェーンのコーヒーショップで働いていたこともあるのですが、そこでは「仕事は仕事」と割り切っている人も多くいました。でも堀口珈琲では、みんなが本当にコーヒーを好きで、商品に自信を持っている。それがこの会社の魅力だと思います。
 
 
――一緒に働く方々にも共通点はありますか?
 
 
佐藤:コーヒーが好きなのは当然として、他にも「自分の好きなものを突き詰めている」人が多い気がします。例えば趣味にしても、好きなことへのこだわりが強い。そんな人が多いですね。
 
 
――最後に、今後の目標や夢について教えてください。
 
 
佐藤:基本的には、コーヒーに関することはなんでもやってみたいと思っています。私は一つの分野に特化して専門性を高めるというよりも、いろんなことを経験しながら、人と関わっていくのが性に合っているので、焙煎を含め、機会があればなんでも挑戦したいですね。

でも本音を言うと――やっぱり店舗からは離れたくないんです(笑)。店舗が好きなんですよ。お客様とのやりとりや、スタッフの成長を感じられる瞬間が何よりも嬉しいです。お客様においしいと言ってもらえた時や、スタッフが上手にコーヒーをいれられるようになった時など、そういった喜びが店舗にはたくさん詰まっています。
 
 
――ワーキングホリデー時のチャリティ活動のお話もそうですが、佐藤さんは「誰かのために何かをしたい」という気持ちを軸に、行動されてきた方なんだなと改めて感じました。本日は、たくさんのお話をありがとうございました!
 
 
佐藤:こちらこそ、ありがとうございました。誰かが喜んでくれると、やっぱり嬉しくなりますよね。これからも、堀口珈琲に出会えてよかったと思ってもらえるようなお店づくりをしていきたいです。