よい深煎り(フレンチロースト)の数値は、L値17.2、アグトロン値30~40、歩留まり80~82%、pH5.6~5.7程度ですが、測定条件や方法により数値は変動します。
風味の観点から言えば、クエン酸が残存し、かすかな酸味が残るものを評価します。サンプルによりますが、クエン酸はミディアムに対し40%程度、リンゴ酸は80%程度減少します。
ボディ感と共に柔らかな苦味が伴い、焦げや煙臭のないことが重要です。まろやかな旨味や甘味が余韻として残り、クリーンで雑味のない風味がよいと考えます。
深煎りコーヒーは、中煎りコーヒーと異なり、幅広い風味を楽しむことができます。
このことが深煎りで一番重要な点で、世界中のコーヒー関係者に欠落している点です。
つまり抽出により、濃度の薄いコーヒーから濃いコーヒーまで幅広く楽しむことができるのが、深煎りの特徴です。
Brix(濃度計で25℃くらいで測定した数値)は一般的には糖度計と言われますが、ショ糖以外の成分も拾いますので濃度計といった方がよいでしょう。溶液中の溶質を指します。
米国ではTDS計(Total Dissolved Solids:総溶解固形物)を使用します。水に溶けている塩分やミネラルなどの総量を測定します。
「The study of coffee」(新星出版 2020)には、Brixと収率(原料からどれだけ効率よく生成物が得られたかを示す%)のチャートを載せてあります。また、年に1~2回しかやっていませんが「抽出中級」セミナーでは、この抽出チャートを作成します。
抽出においてこの濃度を意識すると、深煎りの世界観が変わります。
わかりやすいように抽出量を一定にしましたが変えてもかまいません。数値は目安です。成分に湯が浸透し、濃厚な成分を溶解して一滴目が落ちる時間が重要です。
この時間により液体の風味は大きく変わります。
また、湯の注ぎ方や流速も風味に大きな影響を与えますので、新しい本「コーヒーの科学」(10月出版予定)では、風の変動ファクターごとに分析をする予定です。
抽出の目安
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深煎りの濃さ |
Brix |
粉 |
時間 |
抽出量 |
*1滴 |
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薄いコーヒー |
1.2 |
15g |
120秒 |
150ml |
20秒 |
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中程度のコーヒー |
1.4 |
20g |
150秒 |
150 |
30秒 |
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やや濃いコーヒー |
1.8 |
25g |
180秒 |
150 |
30秒 |
|
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濃いコーヒー |
2.0 |
30g |
210秒 |
150 |
40秒 |
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エキスコーヒー |
3.0 |
50g |
360秒 |
240 |
60秒 |
2~3杯分 |
湯の注ぎ方も風味に影響を与えます。
エスプレッソの濃度は、脂質が抽出されるため10.0程度の高濃度になります。
抽出技法
初めは10ml程度の少量の湯を注ぎ、初めの1滴が落ちるまでの時間をコントロールします。
その後も断続的に10ml程度の湯を注ぎます。
後半は20ml程度の湯をそそぎそれを繰り返します。
初めに濃厚な1滴が落ちるまで時間、その後の湯の流速や湯量で風味は変わるため、タイマーで確認した練習が必要です。
湯量のコントロールなどの抽出テクニックが問われます。
できれば湯が放物線を描かないで、湯が垂直に落ちるような抽出ポット(ツル口でなくカラス口)が必要になります。
開業時には、万力やペンチでカラス口を補足したりベロのように曲げたりしたポットを使用しました。
この抽出方法で、1人で1日100杯の深煎りを抽出するのは困難です。店が混みだしてからは上記のような抽出方法が難しくなり、簡易的な抽出方法に切り替えています。
一例 20gの粉を使用し150mlを2分30秒で抽出する場合。
10m程度の少量の湯を注ぎ、粉に湯を浸透させる
1滴が落ちるまでの時間は30秒前後
その後も10ml程度の少量の湯を500円玉の範囲に注ぐ
成分を溶解し、侵出させ、ろ過する
1分30秒程度で50ml程度抽出する
その後、湯を多めに注ぎ、残りの1分程度で100mを抽出し150mlにする
では皆さんチャレンジしてください。
horiguchi