パパ日記

ナチュラル-その1

ナチュラルの精製の代表的生産国はブラジル、エチオピア、イエメンなどです。

ブラジルは、No2に代表されます。ソフトな香味がいいという基準になります。もともと標高の低い産地で酸は弱く、ナチュラルの精製にはコクを求めます。
コクがあれば、中米などの酸のあるウオッシュトのコーヒーとのブレンドに使用できます。これが昔からの日本の伝統的世界です。
したがって、多くのブレンドは、ブラジル、コロンビア、グァテマラでした。さらにエチオピア(ナチュラル)が加わればモカブレンド(後で解説)になる訳です。

本来No2は未熟豆などの欠点が少ないものを言いますが、堀口珈琲の基準では欠点が多いと感じます。ブラジルの未熟には渋みがあり、全体の香味に影響が大きくなります。したがって昔はソフトに対しハードという言葉を使用しました。

一般汎用品ではNo2が使用されますが、さらに安いブラジルとして粒が小さく欠点の多いフォーファイブ(4/5)などが多く使用されます。ブラジルの汎用品は、価格も比較的安く増量用としての要素が強かった経緯があり個性を求めていないのが一般的です。


しかし、スペシャルティコーヒーで、ブラジルのナチュラルを求める場合は話が違ってきます。生産地の個性や品種の個性などが求められ、かつ欠点豆の混入が少ないことが求められます。しかし、そのようなコーヒーは選別が難しく例外的となっています。

そこでセラード地域などでは、セミウオッシュト(SW)いう方法が用いられました。
果肉を除去し、機械でミューシレージ(ゴム状のぬめり)を取り除きパーチメントの状態で乾燥する方法です。果肉除去に伴い未熟豆の混入を減らすことができるのですが、コクが弱くなるという欠点が生じてしまいます。

このセラードの方法から試行錯誤され、よりナチュラルに近い香味を生み出す方法としてパルプドナチュラルナチュラル(PN)という方法が数年前に実験されました。
機械で果肉を除去するのですが、パーチメントについたぬめりは取り除かずに乾燥工程に回します。
その結果として、甘いコーヒーができるということをブラジル人は感じたようです。

ミューシレージは糖質であるため甘くなるのでしょう。
これをコスタリカのブルマスなどが真似し、PNは中米全体に広がりつつあります。主流ではありませんがハニーコーヒーと称され、少量作る農園が増加しつつあります。

 PNは、ナチュラルに比べ未熟の欠点がないため従来のブラジルより品質は向上しました。したがってブラジルのスペシャルティコーヒーは、このPNの比率が多くなります。

しかし、
2012年現在もナチュラルの高品質コーヒーはなかなか見出すことが難しい状態です。

この伝統的なブラジルのブルボンのナチュラル精製の濃厚なコクは他の産地にはない独特のもので貴重です。

堀口珈琲では一時このナチュラルをあきらめSWPNに品質を求めてきましたが、やはり幻というかブラジルの究極の香味ともいえるナチュラルを販売したいという思いは常にあります。私は、各生産国の最先端の香味を追い求めるとともに、最も伝統的といえる香味も追い求めています。

ブラジルのナチュラルは「やや泥臭いのですが、肉感的なコーヒー」といえるでしょう。泥臭い(アーシー)はある種の土質のような感覚でやや異質で不快な要素もあり、洗練とは対極にあります。
ブラジルに中米の華やかさを求めても意味がないでしょう。ワインでいえばグルナッシュやシラーなどの暖かい地方の濃厚な品種のワインに相当するでしょう。別の言い方をすれば、求める香味の基本は「濃厚さや男臭いガッツです。」

この素晴らしいブラジルのナチュラル精製の生豆を深くローストした時に、かすかな甘みを伴ったビターチョコレートの香味を感じるのは私だけではないでしょう。そう期待したいところです。

続く