パパ日記

ペーパドリップ-3

12/8の続き
ネルドリップに向かっいく話ですが、カフカの「城」のようにまだたどり着きません。

 

 

しかし、現在のコーヒーマーケットを見れば、産地の香味の追求なくしては、その両者も成り立たないことは自明です。初めから混ぜられた豆では、その地域の本質的な香味をつかむことはできません。
また単に一つのシングルオリジンを飲んだからといってその地域の香味が把握できるわけでもありません。

 

 

 

最終的にその地域の本質的な香味が何か?を知るためには、
まず点(シングルオリジン)としての香味を多く体験し、その結果導き出される地域の特性を把握するしかありません。膨大なシングルオリジンと格闘し、その中から共通して見出せる香味をつかみ取ることができればいいのですが簡単ではありません。

 

 

 

同じシングルオリジンを何年も体験して初めて理解できることです。
いいコーヒーを飲むことができる時代にはなりましたが、プロでも数年の経験でコーヒーの香味が理解できるほど単純ではないということです。

 

 

 

最近は、スペシャルティコーヒーは浅いローストにしなければならないといった誤った見解が一部にあり問題です。
よい豆であれば「浅いローストで酸と甘いコーヒーもできるし、深いローストで酸とコクのバランスの良いコーヒーできる」といういい方であればいいでしょう。
少なくとも、標高の高い産地のコーヒーはかさ密度が高く、浅いローストではしわも伸びず、まだ香味を十分に引き出しきれないことも多くあります。
優れた南部産のコロンビアやグァテマラのアンティグアの豆は浅いローストよりは深めのローストに向くのは当たり前のことで、そのことが理解できないということは、生豆についての十分な理解がないといえるでしょう。

 

 

 

エルサルバドルのブルボンは浅めでもよいですが、アンティグアのブルボンを同じローストにするのであれば単に経験不足としかいいようがないということです。

 

 
ポートランドのスタンプタウンは、初めグァテマラのウエウエテナンゴ産のブルボンを使用していました。
しかし、先般訪問した時には、アンティグア産のブルボンも使用し始めていました。
この両者には酸とボディに違いがあり、その本質を理解しているのであれば、ウエウエテナンゴよりアンティグアは少し深くローストできるということがわかるはずです。

 

 

 

インテリジェンシア本社を訪問した時に行ったカッピングのローストはかなり浅く、豆のポテンシャルは理解しにくいと感じました。
また一般的には浅すぎると未熟豆などディフェクトの香味を感じやすくなります。
スペシャルティコーヒーといっても欠点豆は0ではなく生豆350gに合計で5欠点以内ということですので、現実的には少しは混ざります。

 

 

 

こうして生豆をきちんと学習し、多くの体験を経てくると自然に少しづつ深いローストに関心を持つようになりますので、スペシャルティは浅いローストでなければならないなどということは言わなくなるでしょう。

 

 

 

しかし、深いローストだからいいともいえないのがコーヒーの難しいところです。
なぜなら深くローストすれば苦みが強く出てきますので、苦みに支配される香味になってしまいます。
大部分のコーヒーは焦げ臭や煙り臭が付着した香味になりがちです。
多くのフレンチローストは、このような香味ゆえに深いローストが嫌われる要因になるのでしょう。

 

 

 

私は、開業以来、焦げのある深いローストに対し、焦げのない深いローストのコーヒーを求めてきました。そのためには、しっかりとした酸とコクのある生豆が必要で、さらにはそれに向く焙煎機も焙煎技術も必要になる訳です。

 

 

 

米国のサードウエブはスターバックスの深いローストのアンティテーゼとして浅いコーヒーを生み出しましたが、共に極端であると感じます。
アメリカでは薄いコーヒーが主流でしたが、そこにエスプレッソが誕生しコーヒーの革命的な変化が生まれましたが、さらにマシン抽出の薄いコーヒーから、シングルサーブのように自分でコーヒーを選べるような第二の革命的変化も生まれ、米国のコーヒーショップブームは続いています。

 

 

 

しかし、このブームは単純にコーヒーの本質的香味をもとめる以外にも、米国人のライフスタイルの変化という側面からも見なければならないでしょう。
コンピューターが発達し、パソコンで仕事をすることは当たり前になってきています。

 

 

 

一部の大企業のオフィスには自分専用のデスクのある社員は限られ、後は共有テーブルくらいで、仕事をする場所はワイファイのある場所になる訳です。
スターバックス以降のコーヒーショップが家、職場以外の第三の場所といわれるのは、癒しの空間というよりは、オフィスの要素も備えていたからに他なりません。

 

 

 

昨日NYの知人と話しましたが、小中学校でもすでに宿題はメールで、データ管理され、ワイファイのある場所で勉強をする時代になっているとのことです。
そのワイファイの使用できる場所にはスポンサーが付くような時代です。
ユーチューブにもついていますね。

 

 

 

つまりコーヒーショップの拡大は、単純にコーヒーだけのブームではなく、仕事や、勉強をする場所の拡大をも意味しているわけです。
したがってここにビジネスチャンスがあるととらえる投資家は、コーヒーショップに投資をしてもいいと考えるのでしょう。
ブルーボトルが20億のファンドマネーを集めて日本に来年出店します。
しかし、日本のコーヒ―マーケットは米国とは違うということを理解すべきかもしれません。

続く