2000年から2003年頃このカフェをリードしたのは東京でした。
当時は「東京カフェ」と呼ばれ、メディアに取り上げられることも多く、カフェブームという言葉が生まれました。
この当時、経済の衰退に伴う飲食店舗の空き、保証金や家賃の減額、借入の容易さなどが相まって、この業態に参入しようとする人は増加し、とりわけ女性がリードしたと思います。
したがって、カフェは主に女性をターゲットにした店からスタートしていき、10年以上の時を経て、現在カフェは多様化し、15年の歴史を経ています。
カフェ創生期から当時の小学生から高校生はカフェを当たり前の存在として成長してきていますので、今では「カフェめぐり」が趣味がという女性も多くいます。
セルフサービスの画一的なチェーン店の増加に対し、団塊前後の世代は昭和のなつかしい喫茶店に対する懐古が生まれ、新しい世代にはフルサービスの喫茶店が新鮮に映るように
もなりつつあるのかもしれません。
多くの人がそれぞれの生活の中で、自分に合った第3の場所を求めているように感じます。
この新しい業態のカフェと昔ながらの喫茶には境目や明確な定義はなく、喫茶はソフトドリンクの売り上げが50%以上、カフェは食の売り上げが50%以上と私は便宜的に定義付けています。
昔の喫茶店がそうであったように、カフェにも素人の参入が多く見られます。
私の開業時には脱サラでうまくいくのは10%と言われた時代でしたが、現在のカフェも3年以上営業を継続するのは難しく、いつの時代も言われることは同じです。
現在、チェーン店などの拡大でコーヒーの需要は大きく増加したものの、規模の小さな喫茶店・カフェ(従業員1~4人)は減少の一途をたどっているのは前述したとおりです。
2010年代に入り、世界的なコーヒー需要の高まりは、コーヒービジネスの可能性を増加させ、ファンドなどの資金が流れるような状況を生み出しています。
最近はブルーボトル20億円集め話題となりました。
しかし、このような傾向は、資本や規模が、マーケットシェアを確保するような市場になることを意味し、寡占化の方向に向かい、個人店はますます厳しい環境の中におかれていくと考えられます。
堀口珈琲は開業時より、ロースター(コーヒー豆の焙煎と小売り、卸売り)としての業務を行ってきました。そのため多くの店の開店の支援をしてきましたので、過去25年のコーヒーマーケットを振り返ってみることができます。
2000年前後の新しいカフェブームとは、別なムーブメントもありました。
コーヒー好きな人は、崩壊しつつあったコーヒー専門店の開業から、家庭用のコーヒー豆の販売という自家焙煎店(ビーンズショップ)の開業に目を向けました。
2000年以降の10年間は年間250台以上の小型焙煎機(主には1k、3k、5k/但し正確なデータはない)が出荷されるような自家焙煎ブームだった訳です。
2010年代は、それらの日本の先駆的な店や海外の情報に影響を受けながら、新しい世代の開業も見られるようになってきています。
米国でも2000年あたりから少しづつコーヒーの品質に目を向けるようなマイクロロースター(自家焙煎店など)の動きも生まれ始め、最近になってサードウエーブというようないい方がされています。
現在、日本ではサードウエーブという言葉が氾濫していますが、本来は2000年前後以降、米国において生豆の調達(シングルオリジンやパートナーシップなど)に力を入れる地域密着のマイクロロースター等のムーブメントあたりを指し、それらの会社のいくつかは大きく成長しています。
時を同じくして日本でも、2000年以降多くのビーンズショップが誕生し、世界的にスペシャルティコーヒーという大きなムーブメントを形成していった訳です。
コーヒーの消費マーケットから原材料である生豆マーケットに目を向けると、世界的な需要の拡大の中で、その原材料であるアラビカ種の生産量の伸びしろは少なくなっています。
コーヒーは、標高が高い産地で収穫される酸と多様な香味があるアラビカ種と、低地でも栽培でき病害虫に強く収穫量が多い反面苦みの多いカネフォーラ種(ロブスタ種ともいう、ベトナムが最大の生産国)に区分され、その生産比率は約6:4程度です。
当然アラビカ種の方が香味、価格ともに高く高級品と位置づけられます。
このアラビカ種は、気象変動、特に温暖化による耕地面積の減少という栽培の危機にも直面しつつあります。ワイン栽培も同じような環境変化に直面しています。
そのような中で、近い将来消費国や消費量の拡大がコーヒーの生産量を超えるという予測もあります。
そのため、アラビカ種の価格は高止まりしつつあり、この傾向は変わりそうもありません。
とりわけ優れた品質と香味を生み出し、生産量の少ないスペシャルティコーヒーは高値となり、中でも特殊なものは奪い合いの様相も呈しつつあります。
ゲイシャ種などは生産量そのものが極端に少なく高値になっています。
ティピカ種なども業害虫に弱く生産量が少ないため減少しています。
ハワイコナはベリーボーラー(害虫)の、ジャマイカはさび病の被害が甚大になっています。
反面、2000年以降は優れた生産地などの、新しい香味も理解されつつあります。
パカマラ種、ケニアやエチオピアなどの優れた品質と香味の豆は世界的に需要が高まり高値となっています。
スペシャルティコーヒーのムーブメントは、2000年以降に世界的に徐々に広がっていきました。
スペシャルティコーヒーの生産比率の細かなデータはなく、その定義の説明は難しくなりますが、2000年代前半当時に比べれば、10年後の現在生産国及び消費国において大まかなコンセンサスは形成されつつあります。
大まかには、栽培から精製、輸送、保管、焙煎、抽出までの様々な工程できちんとした管理がなされて、欠点の香味がなく、酸とコクのバランスがよいコーヒーで、さらに良いものは生産地の明確な香味特性があるようなものといえます。
米国のSCAAの生豆のグレーディングでは、生豆350g中の欠点が5欠点以内(未熟や虫食い豆、欠け豆などが少ないもの)であり、かつカッピングで80点以上のスコアーのものということになります。
但し、「80点の香味とは何か?とかコーヒーのいい香味とは何かは?」についての説明は、とても難しく、カッピングセミナーにお越しいただければ当方が解説します。
日本でのスペシャルティコーヒーマーケットは、SCAJ(日本スペシャルティコーヒー協会の聞き取り調査などで6~7%程度と推測されもしますが、明確な根拠はありません。
堀口珈琲は、品質香味のよいコーヒーを100%使用する世界でも稀有な会社です。
常に新しい香味の探求をし、自ら感動し、その感動を皆様にもお伝えしたいと考えています。そのため多くの生産国の農園、輸出会社、日本の輸入会社などとパートナーとしての絆を強めてきました。
小さな会社ですが、生産国に行くことも多くなり、現在上原店の若林が、コスタリカの出張し優れた生豆の調達の為農家を回っています。
喫茶店で、おいしいコーヒーを傍らに、至福の時間を過ごしたいものです。