続き
そのような中で、私は各豆を3種類ローストして販売して、その生豆を試していきました。
最近、新しい自家焙煎店を開業する人たちは、カッピングを学習するようになっています。それ自体はよいことだと思います。
カッピングはミディアムロースト周辺の焙煎度合いで行います。
したがってこの焙煎度合いでスペシャルティコーヒーを判断しますので米国のサードウエーブを中心にミディアムを焙煎の主流とする傾向も生まれました。この焙煎度合いが、コーヒーの香味を表現できるとベストと勘違いしている向きも見られます。
スターバックスやピーツコーヒーの深い焙煎と違いを出したいという考えもあるのでしょう。
しかし、カッピングの主たる目的は、コーヒーの生豆の品質、ポテンシャルを探ることであり、すべてミディアムで焙煎すればいいわけではなく、どのような香味で表現すればよいのかを見出すことでもあります。
標高の高い産地の酸とコクのある優れた生豆は、ミディアムでは酸が強すぎてしまい香味のバランスが崩れることが多くあります。
焙煎の度合いは、各会社や店が決めればよいことですが、その焙煎度合いにはそれぞれ何らかの理由や裏付けが必要と思います。
私が開業した25年前の日本のコーヒー業界ではミディアムローストばかりで、なぜそのようにするのか?その意味を理解できませんでした。
したがってすべてのコーヒーをミディアム、シティ、フレンチの3段階で焙煎した訳です。
他の会社や店の3倍の労力をかけ、少しずつ生豆の特性を把握していきました。
10年くらい膨大なコーヒーを焙煎していくにつて、これまで世界中に流通していた生豆の品質やポテンシャルに疑問を持つようになり、2000年ころから自分で生豆を探すようにしてきたわけです。
多くの生豆には、その適切な焙煎度合いというものがあり、それを確認するのがカッピングでもあるのです。生豆を扱うキャリアが増せばそのことを理解できるようになります。
リントンの在来系のLCFマンデリンであれば、ミディアムからフレンチまで幅広い焙煎の香味を楽しむことができます。その中で堀口珈琲はフレンチのマンデリンにこそその香味の本質があると考えそれを推奨しています。
これが異なるマンデリンであれば、適性焙煎はフレンチでなくハイローストになるかもしれません。同じマンデリンでも地域、品種の違いや精製の良し悪し等最終的な品質により焙煎度合いは選択されるわけです。
コロンビアであれば、サンタンデール、トリマ、カウカ、ウイラ、ナリーニョなどの県のテロワールの違いや生豆の持つ酸やコクの強弱により焙煎度合いは選択されます。
全てを同じ焙煎にするなど考えられないことになります。
グァテマラであれば、アンティグアとウエウエテナンゴはそれぞれ香味の質が異なりますので違う焙煎になるのはごく当たり前のことです。
このように、生豆の良し悪しやポテンシャルを理解するには多くの体験が必要になるということです。
お寿司屋さんが毎日のように築地に通い魚を見る目を養うのと同じようなものといえます。