コーヒーの香味を表現したいと思い学ぶには、まずは香味に特徴のある良いコーヒーを飲み、その酸の違いを見つけ出そうとするのも一つの方法です。
しかし、優れたコーヒーの酸は、果実の香味のニュアンスを持ちますがその果実の香味自体が日本と海外では異なることがあまりに多いのも事実です。
ケニアの優れたコーヒーには、柑橘の果実の酸、ベリーのような系列の酸も、トロピカルフルーツのような酸もあり多様です。しかし、これら果実のような酸の感じ方はそれぞれの国民性によりかなり異なりますし、その国で体験できるか否かさえ問われます。
日本人は多くの柑橘果物に囲まれ育ちますが、欧米にはそれほど多い種類はなく基本の酸の感じ方に違いがあるように思います。
またブルーベリー、らずべりー、ブラックベリーなどのベリー類は日本での栽培はほとんどなく北欧や北米などの人に比べて香味を理解するのは難しいと感じます。
チェリー、ピーチ、いちごなども思い浮かべる果実そのものが異なり、基本的には日本、欧州、米国で香味も異なりますので言葉での表現はまだまだ世界標準になっているとは言い難いでしょう。
また、日本は果実天国ですのであらゆる果実の流通が見られますが欧米ではかなり限定されますのでトロピカルフルーツ系などは共通言語にはなりにくいとも感じます。
したがってジャムや、ケーキのピューレの味などで補完、修正しつつとらえるなども必要に感じます。
また、別の観点からみると、日本の果実は輸入品から国産まで多種多様ですが、国産の果実の多くは糖度が高く高級すぎて酸が弱くなっている傾向になります。
甘みを強く感じすぎてアフターテーストでとらえるほうがわかりやすい場合もあります。
昔、ワインのテースティングを勉強していた時には、白ワイン数本と細かく刻んだ果実を10種以上並べ、何がマッチングするかの実習をしました。
テースティング本にはさまざまな香味の食材が掲載されるのですが実際にこんなことをするワインセミナーは普通ありませんし、現実的には多くのソムリエもこんな実習はしないでしょう。
果実以外でも共通言語になりにくいものは多くあります。
ワインでもそのような事例は多くあり、歴史の積み重ねが多いフランスのいい方を当てはめ、覚えるしかないということになります。
特に動物臭のムスク、猫のおしっこ、毛皮、その他なめし皮、スー・ボア(森の湿った土の香り)など様々です。
しかし、コーヒーの香味を理解する一面としてさまざまな果実を食べるのはよいと思います。
私は毎日のように何らか果物を食べます。
コーヒーの実が熟していけば、青臭い穀物や植物臭は減少し、糖質(蔗糖)の増加に伴う甘味を感じるようにり、香味に奥行きが出ます。
寒暖の差のある産地であれば、しっかりしたレモンのようなクエン酸を感じる場合もあるでしょう。
スペシャルティコーヒーは多様な香味の可能性をみせてきました。
その香味の多様性を理解するために果実の香味は一つの指標になりうるでしょう。
最近の若い人は果物を食べない傾向があります。
果実を食べずに ~~~の様と表現しているようなコメントがさまざまなメディアに露出しすぎていると感じる今日この頃です。