パパ日記

ブラジルと苦み

ブラジルの生産量は、50.000千袋(1袋60kg)に及び、そのうち26%程度がカネフォーラ(ロブスタ)種です。
そのうち輸出が60%の30.000千袋で、国内消費が40%を占め20.000千袋になります。
日本はブラジルから最も多い量である2.250千袋を輸入しています。
そのため、昔から日本流通のコーヒーにはブラジルが多く使用され、コーヒーの基本的な香味がブラジルといっても過言ではないでしょう。
この香味に親しみを感じるのは、昔から飲んでいる味、なつかしい味、普通の味なのだと思います。

 

 

 

ブラジルの香味はというと昔から「適度の苦みがあり、高級品ほど酸味があるが、一般的には中性(中庸)な味で配合用のベースとして多く使われる」と言われます。
生産量が多いということは、商品としての安定性に寄与するのですから、焙煎会社が好んで使用してきたわけです。また価格の面でも比較的安く使用しやすいということもあるでしょう。
2000年以前は大部分がナチュラルの精製でしたので、この豆にウオッシュトのコーヒーを配合することで各会社は現在も自社の香味を作ってきています。

 

 

 

カッピングセミナーでは、必ずこのコーヒーの香味を理解してもらいます。
「スペシャルティコーヒーは、柔らかく、心地よい酸と程よいボディがあり、各産地、精製、品種などにより微妙に香味が変わります。一般的なコマーシャルコーヒーは、土っぽく、ロースト臭は麦茶のようで、ややナッティです。」
なかなかよいブラジルは少なく、また生産年度での香味の変化も大きく、堀口珈琲では、ごく一部のブレンドにしかブラジルを使用していません。
しかし、ブラジルが嫌いなわけではなく、よいブラジルの持つ濃厚なチョコレートのような味わいは魅力的で、あくまで深い焙煎で香味を表現したくります。
しかし、巷に流通する豆の中にそのようなものはごく少量でしかありません。

 

 

 

生豆の輸入の歴史から言えば、2000年以前には単一農園の豆はシモサカ農園くらいしかなく、ほぼすべての豆が輸入商社や輸出会社が現地で生豆をブレンドして作った商品でした。
そのような中で、セラードコーヒーの故上原社長にお願いし、いくつかの農園の中から単一農園の豆として堀口珈琲が購入したのがこの「マカウバ・デ・シーマ」農園の豆です。
当時、ブラジルを含め単一農園の豆を輸入するということは極めて例外的なことであり、世界中の輸入会社や輸出会社はその意味を理解できない環境でした。
「現地で味を作っているのだから単一農園に意味はないでしょう」とコーヒー業界からどれほど言われたかわかりません。

 

 

この農園との付き合いは、01-02からですので、品質の良い時期、悪い時期など紆余曲折がありながらここまで長い歴史を刻んできています。世界的に見ても珍しい事例だと思います。

 

 

ペシャルティコーヒーは、華やかな香味のコーヒーが多い中で、ブラジルはクリーンさにかけますが、反面濃縮感があればその存在感を際立たせます。
この2つのコーヒーには、酸をあまり感じません。
ややクリーミーな印象で、アフターにやや刺激的な苦みを感じます。
日本の春の味である苦みは、フキノトウ、わらび、ぜんまいなどに感じますので、このブラジルもそんな観点から味わってみるのもよいと思います。

 

 

 

苦味は、嗜好としては人間にしか理解できないような特殊なものですので、コーヒーとしては評価が難しい香味ですが、「柔らかな苦み、優しい苦み、焦げのない苦み、煙り臭のない苦み」などは、個人的にはよいと判断します。
特にこのナチュラルは、しっかりした苦みがあり、ローストから1週間から10日後位立つと味に落ち着きが出て、ネルで抽出してみたいと感じました。
さらに深く焙煎してもいいとも思います。