パパ日記

コロンビアと戻し交配

コロンビア・サンアントニオは、ナリーニョのコーヒーです。
カッピングを行う際の焙煎であるミディアムですとレモンのような明確な酸があり、その強さにおいてはケニアに匹敵します。
したがって、このコーヒーは浅目の焙煎ですと酸が強すぎます。
深い焙煎に耐えることのできる貴重な豆ですので、しっかりしたボディと酸とのバランスを表現したり、濃縮感を表現するほうが良いと考えます。

 

 

販売中の豆は、シティはオレンジの蜂蜜のような香味で心地よい味わいで、フレンチでも香味がぶれず、しっかりした濃厚な香味を楽しめます。

 

 

コロンビアは2012年、までさび病で大減産していました。
1970年代からは、ティピカからカツーラに植え替えられ、その後ハイブリッドチモールとカトゥーラの交配種であるコロンビア種も増加し、産地毎に品種構成はバラバラになってきています。

 

 

その後、セニカフェ(FNCの研究機関)が2005年に新しい品種であるカスティージョ(castillo)を開発し、農園改良計画の基に2009年から2014年までの間に325億本の苗木を植えたといわれています。この品種もコロンビア種と同じハイブリットで、さび病に強いのは同じですが、様々な気象条件や土壌に適応するところがコロンビア種とは異なり、地域との適性を見て選抜し植えています。

 

 

 

その結果、さび病の影響で2012年に7.700.000袋まで減産した生産量は、2015年には14.000.000袋まで回復しました。あまりに驚異的です。
ちなみに、2015.02から2016.01の1年間の生産量は.14.223.000袋で前年対比16%の伸びでした。(但し、エルニーニョの雨不足の影響で密度の低い豆なども収穫されているようで15-16の品質は要チェックでしょう。)

 

 

コロンビア種は、収穫量が大きい反面木の寿命が短く、また消費国からは香味の面などでカツーラに比べよい印象を持たれませんでした。
当方も、コロンビアコーヒーの香味に疑問を持った一人です。
一時期はフェノールの問題もあり、消費国から相当問題を提起され、FNCはかなり苦悩した事もあったと思います。
新たなハイブリットであるカスティージョについては、かつてのコロンビア種の悪しき印象を拭い去るためにより研究されたと思います。

 

 

 

また、FNCは、カスティージョの品質認知の為に様々なプロモーションも展開してきました。
2015年シアトルのSCAA展示会のシンポジウムで、CRSがCIAT,WCRの支援のもと2つの品種間に品質差がないと公表しています。
これは、ナリーニョ県のカツーラとカスティージを22サンプル準備し、SCAA方式で様々なコーヒー関係者に無作為にカッピングしてもらい、結果として2つの品種が同レベルであったとの結果に基づいています。

 

 

 

また、2015年のSCAJの展示会におけるFNCのモレノ博士の講演でも、このカスティージョの開発から適応性までの詳しい解説がありました。
一つの栽培品種を完成させるには、交配を繰り返し20年近くかかりますので、このカスティージョも、カトゥーラを何度か戻し交配します。
F1では矮小で、F2では樹高のばらつきがで、F5で品種の安定性が確保されています。

 

 

カスティージョは、スプレモの比率が多く、さび病に強く、量産種で、香味のよいアラビカであればこんなに良いことはないのですが、コーヒーの品質や香味は栽培の地理的環境、木の手入れから精製、乾燥、選別に至るまで様々な条件によります。
当方はまだこの品種の香味のニュアンスを把握できていません。
しかし、この品種の混在したナリーニョのコーヒーが素晴らしいことは理解できます。

 

 

 

ただ、コロンビアは肥沃な土壌の栽培環境が多くあります。
セニカフェは、香味にとって標高が重要という考え方も底流に持っているようです。
品種は重要なファクターとなりますが、それだけで香味が決まる訳ではなく、カスティージョが優れた品種であるのかは今少し経過を見ないと判断できないでしょう。

 

 

 

振り返れば、長い間コロンビアコーヒーに失望してきました。
しかし、コロンビアでは最高レベルのコーヒーが作れるはずだと信じ、ここ数年でやっとその思いが実現化してきています。

 

 

 

注)ハイブリットチモールは、ポルトガル領であった東チモールで1927年に発見されたものです。
通常はアラビカとカネフォーラ(ロブスタ)は、染色体が異なるため交配しませんが、この木は自然交配したもので、さび病に強く、アラビカ種と交配が可能でした。
そのため「ロブスタとアラビカの長所を持つ木」の開発が可能となり、片方の親であるアラビカと交配し、耐さび病種の開発が行われ、栽培種としてのカチモールがうまれています。
しかし、ロブスタの遺伝子があるため香味が良い印象はなく、新たにカトゥーラと何度か戻し交配をしたものがコロンビアのコロンビア種です。
注)Catholic Relief Service( CRS)
World Coffee Research (WCR)
International Center for Tropical Agriculture (CIAT)