スマトラのマンデリンは、日本人にとっても欧米人にとっても特殊な香味の豆で人気が高く、その昔はイエメンとマンデリンがコーヒーの王と女王のような位置にあったと思います。欧米の消費国でも独特の風味故に人気がある豆です。
インドネシアは、さび病の影響で多くがロブスタに植え替えられスマトラの優れたマンデリンも少量になりました。(3月頃の日記参照ください)
現実的に最高峰のマンデリンの収穫は減少しているように感じます。
マンデリンは、一般的には苦みが強く、昔から「クリーミーで濃厚で酷のある苦いコーヒー」と言われてきました。
先人からは、「昭和27~28年くらいまではよいマンデリンがあったが、その後農園が放置され良いマンデリンが輸入されなくなった」と聞き及んでいますが、真偽のほどは確認できません。
その後、この地のマンデリンが、カチモールと交配されてきたか?自然交配したか?よくわかりませんが、私がこの仕事を始めた1990年のグレード1(G-1/欠点が少ない)は酸がなく、苦み主体の豆が大部分でした。
したがって、様々な書籍でもマンデリンの香味に酸が強いとは書かれることはなく、苦みのコーヒーの代名詞となってきました。
しかし、堀口珈琲のマンデリンは、野生の中で育ってきたマンデリンの遺伝子を受け継いだものなのか厳密にはわかりませんが、在来軒の品種と推測され、現在流通している大部分のマンデリンとは香味が根本的に異なります。
中煎りの焙煎豆をカッピングすると、柑橘の酸に樹や青草の香味が混ざります。
それをペーパードリップすると全く異なる香味の表情をみせ、レモンのような強い酸に甘いなめらかな後味が残ります。
まるでレモンティにオレンジジュースを入れたような味わいというか、レモネードとなります。
酸と甘みを表現するという米国のサードウエーブの方々に飲んでみてほしいものです。新たな衝撃が走るでしょう。
但しこの香味は、日本入港後比較的早い時期にしか体験できません。
しかし、コーヒーはジュースではありませんので、さらにやや深くシティ程度に焙煎すると、柑橘の穏やかな酸となり、なめらかなコクとのバランスが際立ち、香味にまとまりができます。開店以来この豆はフレンチとしてきましたので、シティでの新たな香味を体験していただければと思います。
このマンデリンに対し、東チモールは明るい酸に穏やかなコクのバランスがよく、全体的に柔らかな飲み心地があると思います。
マンデリンのなめらかな舌触りと東チモールの穏やかで落ち着いた香味は、同じ地域のコーヒーでありながら異なりますので、同時に体験されてもよいと思います。