6/24の続き
さて酸とは別に、もう一つの評価軸としてコクがありますが、とらえにくい香味ですね。
コクはボディ、マウスフィールドなどのいい方もあり難しい感覚で、明確な定義はありません。
しかし、慣れれば多様にとらえることができるようになるとも思います。
テースティングの観点からすると、コクは脂質の含有量に影響される側面があります。
更に、五味のうちの旨味(アミノ酸)やや甘味(蔗糖等)などが複合的に絡んだニュアンスの感覚ととらえています。
例えば、スペシャルティのケニアであれば脂質が多い傾向があり、又酸度も高く、それらが複雑な果実の酸と明確なボディを生み出していると推測します。
また、コロンビアの南部のスペシャルティのナリーニョは、北部のコーヒーに比べ酸とコクの明確なコーヒーです。グァテマラ・アンティグのサンタカタリーナのHAB,パナマのダンカン、コスタリカの標高の高い産地も、他の産地よりは酸とコクはしっかりしていますので同じことがいえます。
更に、付け加えるなら、堀口で使用のイエメンのニュークロップ(日本流通はあまりない)はコクがあります。また酸は弱めになりますがブラジルのナチュラルにも十分なコクを感じることができます。
コクについてはこれまでの官能評価の経験の中で、感覚的に理解してきましたので、酸やコクのあるコーヒーは深い焙煎でも香味がぶれないと考えています。
酸は味を引き締め、脂質と相まって濃縮感や味の複雑性に寄与すると考えられますので、このあたりの感覚をきちんとテースティングできれば、焙煎を浅煎り一辺倒にすることに意味がないことを理解できると思います。
勿論、焙煎が深くなれば、PHは少し高くなり、さらに有機酸の組成が変わりますので酸の感じ方は弱くなりますが、香味の複雑さは増していくと考えています。
コーヒーの香味の醍醐味の一つは、その複雑性にあるといっても過言ではないと思います。
ボディ
ライト ミディアム フル
|
布の感覚シルキー
フランネル ベルベット |
言葉軽やか
しっかり 濃厚な |
品種 標高 脂質ティピカ他 1200~1500以上 低め
ブルボン他 1500m前後以上 中 ブルボン他 1600m以上 高め |
(注意)
表は、標高、品種、脂質の相関関係を意味するものではありません。
またスペシャルティコーヒーを基準とし、標高は中米、南米(ブラジル除く)、東アフリカ等を目安としますが緯度を考慮していません。
また、上記のような評価感覚は私と欧米人及び生産国の人々とは一致するとは限らず、個人的なとらえかたですので誤解なきよう願います。
さて、ここでブラジルのコーヒーのコクを取り上げなければなりません。
ブラジルは、一般的にはマイルドとか中庸とか、適度の酸と苦みのコーヒーと言われてきました。
しかし、現実的には現在の華やかなスペシャルティコーヒーの中では、ブラジルには酸の弱いものが多く、地味になります。
しかし、コーヒーは果実の香味のものの方が特殊であり、ブラジルはそのようなコーヒーの対極にあります。
ブラジルは、生産量が多いがゆえに多くの消費者にはなれ親しんだ味ですが、その本質は何か?は多くのブラジルを飲んでもわかりにくいと思います。
苦みは焙煎による影響が大きいため、ブラジルの香味の特性はコクという観点から見るのがよいでしょう。
ブラジルのコクも品種、生産地域、精製方法の差が大きくありますので、一概には言えませんがナチュラルは脂質の含有量も多めで、コクのあるコーヒーといえるでしょう。
しかし、これまで多くのブラジルを使用してきましたが、期待は「1年目はよくとも次の年はよくない」などことごとく裏切られてきた?というか、満足できるものが少ない?と感じてきました。
勿論、通年購入しているダテラの最高峰のもの、マカウバ・デ・シーマのよい出来の年のものなどは優れているのですが、さらに良いものがあるのではないかと毎年探すのが、コーヒーマンのサガというものでしょう。
現在、ミナスジェライス州とバイーア州の2つのコーヒーを販売しています。
ブラジルの酸は弱めですので、浅い焙煎ですと麦茶、ナッツ、濁り感が出過ぎますので個人的には深い焙煎の方が向いていると考えます。(一般的なコマーシャルコーヒーマーケットでは、ブラジルのナチュラルのミディアムローストにウオッシュトの中米やコロンビアをブレンドして使用します)
ブラジルのナチュラルのコクは独特のもので、深く焙煎してこそ、その先に甘く、旨みのある世界が見えてきます。まろやかさや円熟味あるニュアンスです。
ビターチョコレートのような粘性のあるなめらかなフレンチが理想です。
みなさんは、2つのコーヒーを飲んでどのようにお感じになるでしょうか?