ハワイコナは、ひさしぶりですね。
01-02から03-04まで3年間は「コナ100農園」の松本さんと試行錯誤しながらよいコーヒーを提供しました。最終年は全量を購入し、かつ空輸で日本に運びましたのでコストもかかったことを覚えています。この時のことは.2005年出版の「スペシャルティコーヒーの本」に記載してあります。
その後も何らかの形で、ハワイコナを継続して販売してきましたが、ベリーボーラーの被害のあとしばらく販売を中止していました。
今回久しぶりにラインアップに加わりました。
価格もリーズナブルですのでお早めにお試しいただければと思います。
スペシャルティコーヒーによる香味の多様性の中でハワイコナは価格も高く、その希少性は薄まりつつあります。しかし、最も重要な点は、ティピカの香味をきちんと維持していることにあります。
カリブ海の島から伝播したティピカは、さび病に弱く、又ハワイ以外は施肥の乏しい産地も多く、収穫量も少ない傾向があり、年々栽培は減少し、希少品種もしくは絶滅品種になりつつあります。
私が開業した1990年には、カリブ海の島のキューバやドミニカのティピカもありましたが、現在はジャマイカ以外の生産はなくなりつつあります。
中米では例外的に少量の生産が見られますが、かつてメイン品種として生産されていたコロンビアのティピカも減少の一途で全体の収穫量の中ではごくわずかです。
その他ボリビアやペルーなどにも少量は残っていると思います。
多く残るのはジャマイカから苗木が送られたといわれるパプアニューギニアですが、20年前に比べるとかなり香味は変化しているように感じます。
最後の砦は東チモールくらいでしょうか?
日本niは、欧米に比べこの品種にこだわりのあるコーヒー関係者が多くいました。
しかし、最近のスペシャルティコーヒーの流通の中で、その香味を知るコーヒー関係者は少なくなってしまいました。
ティピカは果実感のある華やかな香味とは異なり、柑橘のさわやかな酸とクリーンさが特徴のコーヒーです。しかし、何よりも重要なことは、コーヒーの基本的な香味としてとらえることができる品種であるということです。
この香味を基準にすることで、他の様々な品種やさまざまな産地のコーヒーの香味との違いをとらえなおすことができます。テースティングの観点から言えば、ティピカの喪失は、コーヒーの香味の体系化の崩壊を意味するといっても過言ではないでしょう。
このような意味で、各産地に残るティピカの香味を理解することは重要なことと考えますので、そのような観点からいえば、私は昔からティピカ主義者です。
多くのティピガが、山奥に残っていたり、肥料も十分にあたれられず細々と栽培されたりしていますので、品質や香味に疑義を抱くコーヒー関係者も多いでしょう。
堀口珈琲でも、品質に見合い販売するものは多くはありません。
しかし、「あまり味がよくない」とあきらめてしまうことは避けるべきでしょう。
もっときちんと栽培管理されたら「よい香味になるだろ」という想像力を働かすべきだと思います。
コーヒー栽培とそこから生まれるであろう品質には、忍耐も必要なのです。
2003年から東チモールのフェアトレードプロジェクトに参加したのも、個人的にはティピカを残すためでした。多くのティピカの中で何を基準に香味をとらえればよいのか?については 難しい面もありますが、ハワイコナの香味は一つのヒントになります。
20年前に書いた「各産地のティピカの香味の違い」という文章がどこかに掲載されている記憶がありますので探してみます。
コーヒー生豆の品質は、スペシャルティコーヒーという概念の普及とともに大きく向上しましたが、ティピカに関してはそれとは反比例し減少し、忘れられるのは残念なことです。
ティピカがさび病との戦い、生産量の問題を抱えつつも、現在の成熟しつつあるスペシャルティコーヒーマーケットの中では、よい品質のティピカを作ろうという機運が生まれてもよいと考えます。
よい品質であればより高い付加価値が付与されてもよいと思います。
時代を遡り、マルチニーク島からティピカが伝播した時代のコーヒーの香味の起源に思いをはせることができるかもしれません。
コーヒーにはロマンも必要です。
続く