パパ日記

最後のテロワール-9 ワインの熟成とコーヒーの熟成

昔の話です。2000年代前半頃でしょうか?

堀口珈琲が日本で頻繁にリーファーコンテナ(RC)を使い始めたころです。
(当時は、かなり高額だったエメラルドマウンテン以外は使われていなかったと思います。)
温度設定を間違えて、コロンビアから、本来15℃のところ-15℃で入着したことがありました。
最終的に使用しませんでしたが、常温解凍で48時間以上かかった記憶があります。

研究では、輸送コンテナにデータロガー(温度・湿度計)を積み込みましたがうまく作動するものもあれば作動しなかったものもあり、現地に行き自分でセットしたほうがよかったかな?と反省したりもしました。
初めての研究でしたので、いろいろ「こうしておけばよかった」ということは多々あります。
 

 

 

 

生豆は冷凍しておけば何年使えるでしょう?
しかし、この命題は、商業的には冷凍場所が大変ですので、あまり意味がないですね。
素晴らしかった生豆を実験用もしくは風味の見本としてとっておくくらいのことはできるかもしれません。
しかし、それ用の冷凍庫が必要ですし、それも意味がありませんね。
大学では、-30°と-80 ℃の冷凍庫があります。
私は-30℃の冷凍庫を使用していました。
そんなことを考えるより、明確なテースティング方法を確立し、記録しておけばよいでしょう。
生豆は、アルミ包材などで密封し、さらに冷凍用の包材で保管しておけば、冷凍庫内では、成分変化はしません。

ただし、生豆をバルブ付の包材に入れ、冷凍庫に入れてはいけません。
空気が入り、湿気をおびますので、一気に水分値が変化します。
一般家庭で生豆を使う人はいないでしょうから大丈夫ですね。

焙煎豆は水分値が2~3%と少ないですので、バルブ付でもさらに冷凍用の袋に入れれば2~3か月度は問題はないでしょう。

 

 

 

 

 

よくワインで熟成という言葉が使用されますが、温度、湿度管理された場所で緩やかに酸化し、何らかのよい成分変化が起こっていくことなのでしょう。
有機酸やアミノ酸の変化が想定されます。
しかし、ワインには当てはまってもコーヒー生豆には当てはまらないというのが個人的見解です。

 

 

 

 

 

精米の賞味期限は、温度25℃で2か月、20℃で3ヶ月、15℃で5ヶ月、5℃で7か月が適当との論文がありますが、
コーヒー生豆の賞味期限はどこにもデータはなく、誰も論じていません。
ブラジルのラブラス大学の研究で、梱包材質の違ういくつかの試料を、ブラジル、米国で保管し、官能評価した実験は一応ありますが、ケミカルデータはともなっていません。
生豆の流通にかかわる梱包材質、輸送コンテナ、保管倉庫における経時変化の実験はしていますので、官能評価とケミカルデータは、いずれ学会誌に出ると思います。

 

 

 

 

 

入港時の成分値がよければの話ですが、リーファーコンテナ(RC)、真空パック(VP)で輸入し、定温倉庫(5月から10月まで15℃)で保管すれば、1年は使用できますが、それでも成分は変化しています。
基本的には熟成という概念を風味がよくなるというような良い意味で、コーヒーで使用するのはあまり感心しません。
脂肪の酸化は冷凍以外では避けられません。
また、生豆には11%程度の水分値がありますので、日本の気候では麻袋での常温保管ではプロピオンアルデヒド、ペンタナール,ヘキサナールなどの青臭み、またヒドロベルオキシドな枯れた木のような匂いを生成させる可能性が高くなりますし、実際に端境期の多くのコーヒーに見られます。

個人的なテースティング方法では、青草、芝草はよしとしますが、枯れた草はNGとして評価します。

 

 

 

 

 

私は、開業以来、コーヒーは農作物であり、ニュークロップが基本と発信してきました。
生豆を寝かせて、風味がよくなると考えたことはありません。
現実的な倉庫保管では、定温倉庫で15℃、湿度65%程度の保管がベストですが、それでも1年間の変化を見れば、脂質量の減少や遊離脂肪酸の増加が見られますし、総酸量も変化します。
私は、ビンテージとか熟成とかの概念はコーヒーでは使用しません。
1年間で成分の変化が少ない生豆は、官能評価の低下も少ないと考えられ、優れた生豆品質といえるでしょう。
これらの品質は、精製プロセスの影響を強く受けていると推測されます。

 

 

 

 

 

20190228_195000

1997年のBARBA RESCO 2013年で5~6千円のワインですが、それより15年寝かせてありますので、風味は各段に良くなっています。
バルバレスコはネッビオーロという品種(バローロも同じ品種)、ピエモンテのバルバレスコ村で作られたワインです。イタリアのネッビオーロは、熟成するとフランスのピノ・ノワールと同じような風味を生み出す品種と感じます。
長期熟成が可能な品種で、ピエモンテのテロワールに適し、それ以外では収穫ができないといわれます。
ピノ・ノワールの方がやや華やかで、ネッビオーロの方がやや渋味を感じますが、意外に難しいテースティングです。
私は、赤ワインはピノ・ノワール種とネッビオーロ種しか飲みませんのが、それが最高のワインと信じているからです。
それ以外理由としては、単一品種から作られていますので、テースティングの勉強になるからです。

 

 

 

 

 

アラビカ種は、ティピカ、ブルボンなど多くの品種の遺伝特性がかなり近いので、風味に大きな違いが生じないはずです。
ですからテースティングは難しい訳です。
最終的にはテロワールという概念を持ち出さないとコーヒーの風味の違いは説明できないでしょう。

 

 

やっとフィニッシュできました。フィニッシュ英語