お知らせ

上原店スタッフ山田の東ティモール訪問記

2012年東ティモール視察

昨年7月後半に続いて今年は8月に東ティモールを視察。

8月2日成田を出る。

バリで前泊し、翌日東ティモールへ。バリから東ティモールへは1日1便しかないため、バリで宿泊する必要があるが、実質の移動時間はおよそ8時間。

8月3日午後2時に首都ディリの空港に降り立つ。

途端に蒸し暑さが身体を包む。

空港までPWJの現地駐在員の方に迎えに来てもらい、ディリにある事務所へ立ち寄った後、標高1500mレテフォホ郡のPWJ事務所を目指す。山道は舗装が行き届いておらず、車を大きく揺らしながら3時間のドライブ。道中、点在する集落を通過するたびに子供たちが遊んでいる姿が目に入る。東ティモールは子供が多い。それもそのはず出生率の高さは世界でも群を抜いている。(2010年は5.58人。ちなみに世界平均は2.45人。日本は1.39人)ここで出会う子供たちは皆一様に人懐っこい。夕方薄暗くなる頃レテフォホの事務所へ着くと、一転蒸し暑さから解放される。高地は寒暖の差が大きいのを実感。昼間は暑いが朝晩は冷える。


※ピースウィンズ・ジャパン(PWJ)は紛争や災害、貧困などの脅威にさらされている人々に対して支援活動を行うNGO団体で、1999年設立。東ティモールにおいては外貨獲得による農家の経済的自立を目指し、輸出産品であったコーヒーの品質向上に着目して堀口に栽培指導を依頼。2003年から現在まで関係を継続している。

※HORIGUCHIで販売しているコーヒーは東ティモール西部にあるエルメラ県レテフォホ郡の生産者グループ「カフェ タタマイラウ」によって生産されている。このグループはPWJが生産者支援を行っている約600世帯で構成。グループに所属する農家がある51村のうち、今回は4つの村の農家を訪問し現状を視察してきた。


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PWJが管理する実験圃場と4村の生産者を訪問した。

実験圃場視察 (標高:1440m前後

昨年5月にカットバックした木からはしっかりと側芽が出ており、高さ0.5m~1.5m程まで成長していた。圃場は斜面になっており、周りを高いシェードツリーが囲んでいる。木ごとに生育度合が異なっているのは、圃場内で日当たりが違う為であろう。この地域に適した側芽の数を検討するため、あえて異なる数の側芽を残し生育状況の推移を見守る。直近の収入減というリスクから農家の方のカットバックに対する抵抗は少なくないが、今年の繁忙期後には生産者を集めてカットバック直後との違いを確認してもらい、カットバックへの理解を促す。

●レブドゥ村訪問

レブドゥ村では12世帯(23圃場)が参加している。面積は計14ha。標高は約1505mとこのエリアでは平均的な高さ。昼過ぎに訪問したため、日差しが強く暑い。ただ乾燥していることもあり、日陰に入ると涼しく快適。ちょうどPWJがパーチメントを買取るところで、村の若い生産者が率先して計量作業を行っていた。村人の家屋で一休みさせてもらう。コーヒーとイモをごちそうになった。コーヒーはたっぷりの砂糖で甘い。

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(写真1):水分値の計測

農家で乾燥を終えたパーチメントの水分値を計測した後、計量しPWJが買い取っていく。

(写真2):乾燥の様子

の村ではビニールシートを敷きその上で天日乾燥させる。

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(写真1)            (写真2)


●エトライ村訪問

レブドゥ村から悪路を車で20分程のところにある。まだまだ日中の日差しが厳しく暑い。この村では34世帯(54圃場)が参加しており、計 63ha。 標高は約1470mとこちらも平均的。集落の規模は比較的大きく、東ティモールでは珍しい鉄製のパルパーやコンクリートのパティオを有する農家もあった。コーヒーの木も他の植物もないはげ山のような土地が多い。所有する土地を管理しきれず、多くを持て余している印象。東ティモールではそのような風景をしばしば見かけた。

写真:パティオとパルパー

パルパーの上部には半分に割った竹を使って水を引いてきている。

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●レヌマタ村訪問

エトライ村から悪路を車で30分程度。10世帯(33圃場)9.5ha。標高はエトライ村と同じく約1470m。

建ち並ぶ数軒の家屋の前ではチェリーの選別作業真っ最中だった。笑い声があり賑やかである。そこから少し歩いたところにある急斜面がコーヒー畑。コーヒーの木が所狭しと植わっている密植状態。樹高の高い木が多く、収穫するのも一苦労だろう。

写真:コーヒー農園内

コーヒーの木が生い茂り、区画などの整理はされていない。ほぼ手つかずの状態。

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●フンダ村訪問

21世帯(16圃場) 18ha。 標高は他の村より低く約1290m。

レヌマタから悪路を下りながら移動。40分程で到着。この農家はカフェタタマイラウの中でも熱心な生産者がおり、安定的な生産量を確保するため、新植なども行っている。しかし、密植状態の圃場に新植をしているので余計に密植が進んでしまう。密植の弊害と剪定の効果を粘り強く伝え、生産者の方々のやる気を良い方向に向けたい。また、乾燥棚を作る場所も確保できそうであったため、棚干しを提案する。前向きに検討してくれるそう。

日が暮れ始めたのでレテフォホ事務所へと向かう。道中明りが無い上に悪路の為、夜の運転はとても危険。

写真:話を聞く生産者

農業に関する知識が乏しい東ティモールの生産者は、木を剪定する事をためらう。生産性を向上させ、毎年安定的な収量を確保していくためにも必要な事だと説明。真剣に話に耳を傾けてくれていた。

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※各村は地形条件や規模が異なっており、抱える課題・生産意欲も違ってくる。一律に対策を打つことができず一筋縄ではいかない。今回の訪問で東ティモールにおける安定的生産と品質向上の難しさを改めて知ることになったが、PWJスタッフは我々の意見を参考に、忍耐強く生産者と対話を続けてくれている。

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●レブルリ倉庫視察

各農家で作られたパーチメントはPWJが買い取り、レテフォホにあるレブルリ倉庫で一旦保管し休ませる。最大60t収容可能。昼間は2628度、朝晩は18度くらいまで下がり、かつ乾燥している。高温多湿のディリへは2次加工~船便のスケジュールを調整した上で降ろされる。

 

PWJが関わる以前は、農家はチェリーをそのまま売ってしまっていた。自分達でパーチメントまで適切に仕上げることで付加価値がつき、買い取り価格は飛躍的に向上する。

PWJはこの指導にあたり、堀口はアドバイザーとして協力している。


写真右:PWJ現地スタッフのアディーノさん。現地スタッフを統括する中心的存在。

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東ティモールのコーヒー生産において、最も重要な課題の一つが生豆の鮮度保持。2次加工を行うために湿気の少ないレテフォホから高温多湿のディリへ移動させることで、生豆の品質劣化リスクは大きくなる。そのためディリでの生豆滞留をいかに避けるかが品質向上のポイントとなる。

今クロップはディリでの2次加工とそのスケジュール設定において、いくつかの新しい試みを行った。

・船便から逆算した加工スケジュール

・脱穀場の変更(後述)

・専用倉庫のフル稼働(後述)

・スーパーグレインバッグの導入(後述)

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●レテフォホ~ディリへの輸送同行

トラック荷台に、パーチメント・現地労働者と共に乗車し、レブルリ倉庫からディリのPWJ事務所倉庫へ。ディリに到着するとスタッフと共にパーチメント10tの積み下ろし作業を行う。かなりの重労働。先に降ろしてあったパーチメントは事務所の外で追加乾燥を終えるところであった。水分値を計測し袋詰め。トラックに積み込み、脱穀場へともに向かう。

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の視察(ディリにある脱穀場)

今年から脱穀場を変更。運び込まれたパーチメントは計量され脱穀工程へ。昨年まで使用していた脱穀場よりやや小さな規模ではあるが、昨年よりも円滑に遂行されている。当初スケジュール通りに行くのか心配であったが、予定より早く進んでおり前倒しで脱穀、ハンドピックが行われていてひと安心。

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●ナクロマン倉庫の視察(ディリにあるPWJの倉庫)

昨年建設されたハンドピック場兼生豆保管倉庫。昨年は建設が遅れ、出港スケジュールにも影響した。今年はフル稼働している。

9時、倉庫が開くのを待っている女性労働者が多くいる。ちょうど夏休みのため、子供たちも多くいる。6080人程度。

Ido caféで脱穀され生豆が搬入される。専用テーブルに生豆がセッティングされ、ハンドピック開始。一度ハンドピックされたものをさらにもう一度、計2回のハンドピックを施す。夕方まで各テーブルを回り続け取り除いた豆のチェック。

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スーパーグレインバッグ導入

懸案の生豆鮮度維持のため、今期よりスーパーグレインバッグを導入した。今クロップはこれで生豆の品質劣化を防ぐ。東ティモールでの導入は異例のこと。

まず、スーパーグレインバッグの使用方法・効果・他生産国の使用状況・当社における入港後の所感を説明。その後、袋詰めの実演を行う。二人一組で空気を抜きしっかりと閉める。

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スーパーグレインバッグ:酸素不透過中間膜をラミネートした穀物保管用特殊袋。酸素や水分の侵入を防ぎ、温度や湿気の影響を防ぐうえで一定の効果がある。


87 帰路へ、午後2時ディリ発

1時間でバリへ到着。午後3時から深夜24時のフライトまでバリに滞在。

88 午前8時成田着。

まとめ

今回は、昨年に続き視察した東ティモールがこの1年で確実に進化し、発展を遂げているという事を確認できた。首都ディリには大型ショッピングモールが建ち、標高1500mのレテフォホには未だ停電が頻発するものの、終日電気が通るようになっていた。コーヒー生産においても昨年から今年にかけて大きさ転換期にさしかかっている。上述のとおり品質向上への新たな試みがスタートし、今回入港した12-13クロップはその成果を香味でもって十分に感じ取ることができる。

東ティモールを扱い始めてからちょうど10年が過ぎようとしている。まだまだ課題は山積みだが、今後の成長から目が離せない産地でもあり、彼らのコーヒーの品質向上に微力ながら貢献していきたい。