パパ日記

深化した風味は直球 ≧ 150 km

横浜ロースタリーが稼働する前に、9種のサンプルが届きました。
大リーグやプロ野球が開幕し、マー君が勝ち、阪神、広島も勝ちめでたい(ヤクルト、巨人ファンの方ごめんなさい)中、ペーパードリップで抽出しテースティングしました。



私のテースティングの基本抽出法は、25gで240ccを2分30秒で抽出します。
粉に少量ずつ湯を通し、湯がコーヒーの層を通過する過程で、優良な成分を溶解します。酸は多少緩い抽出法でもある程度抽出されますが、コク(Body感)は、粉に湯をきちんと浸透させなければ生まれません。ドリップの基本概念を踏襲する必要があります。

本来コクは、脂質や、ショ糖とアミノ酸のメイラード反応などから生じると考えられるテクスチャー(粘性)の概念です。官能評価上は、味とは区分しテクスチャーとしての評価言語を使用します。私がいつもいうのは、シルキーからフランネルからベルベットなどの滑らかさや舌触りの感覚です。
もちろん、味の複雑さや厚みのようなものでもよいでしょう。

脂質の定義は「有機溶媒に溶けるもの」で水には溶けないのですが、総脂質量の多い方がテクスチャーを感じますのでこの辺りがコーヒーの不思議で厄介なところです。

ペーパードリップの本質は、いかにコクを表現するか?そして酸とのバランスを見ることで、コーヒーの風味が理解できると考えます。
したがって、抽出に3分かけてもよいのですが、やや苦味が強く生じ、全体の風味がマスキングされ、風味がわかりにくくなります。粉の量が多くても同じことがいえます。私の方法を踏襲する必要はありませんが、味を見るときは自分の抽出基準を崩さないようにしてください。


新しい焙煎機による焙煎方法は、CityもFrenchもメリハリがあり、生豆の風味を的確に表現しています。
「直球150km以上のストレートで真向勝負というところでしょうか?」
素材の良さが明確ですので、どなたにも風味の違いがご理解できると思います。
堀口珈琲の生豆よさを再確認しました。

シティの「サンタカタリーナ」は、本来の柑橘ベースの酸にボディとのバランスがよく、「エル・アルト」はなめらかな舌触りでソオフな味わいの中に、柑橘+赤系の果実のニュアンスが混ざり出色でした。

ウオッシュト(湿式)のウォルカは、フルーティそのもので、ナチュラル(乾式)のゴティティは乾燥果実のフルーツ感でなかなかの風味でした。
SCAではナチュラルのカッピングフォームはありませんので評価基準が曖昧ですが、今後行うテースティングセミナー(未定)であれば、遠慮なくナチュラルの95点(SCA方式)の基準点の風味にするでしょう。
この風味を95点にしてよいか?については、エチオピアのナチュラルのG-1の歴史及び2010年からの中米のナチュラルの試行錯誤してきた変化の風味を体験し、理解していないとわからないでしょう。さらには、エチオピアのナチュラルと中米のナチュラルの風味が区別できないと分からないでしょう。


フレンチのケニア(カイナムイ)は、柑橘のレモンと赤いベリー系の風味をイメージするかもしれませんが、フレンチローストですので乾燥プルーンなど黒系の果実感を強く感じます。フレンチですが焦げ臭はなく、柔らかな苦味の味です。また、豆の段階から香りが強烈で「やっぱりカイナムイはすごいんだ」と再確認できました。ケニアの生豆を購入して16~17年程になるケニアフリークですが、このフレンチは、現状のケニアの最高峰レベルの風味を醸し出しているといえるでしょう。pHが4.75(ミディアム)と強烈な酸があるがゆえに、このフレンチローストが成立します。


マンデリンは、クリーンで濁りがなく、後味にマンデリンフレーバーが永遠に残るかのようです。口の中から消えません。このような状態をロングアフターテーストといえばいいのでしょう。20年以上の熟成ワインのアフターテーストに匹敵します。繊維質が柔らかいのに焦げていない味で、私なら95点(SCA方式) 以上をつけます。LCFマンデリンが世界最高峰と信じさせてくれるフレンチに仕上がっています。このスコアをつけることのできる感覚も、リントンのマンデリンを20年以上片っ端から飲み込んできた者にしかわからないでしょう。

つまり、誰かが基準点を設定しないと、評価者はバラバラな評価をしてしまいます。
これまでのセミナー体験者の方であれば、言っている意味がご理解いただけると思います。
少し長くなりました。