パパ日記

味覚センサーのグラフ

セミナーサイト  https://reserva.be/coffeeseminar

コーヒーの風味は生豆の品質に影響を受けると考えられますが、生豆の品質をどのような観点からみればよいのかはまだ難しいところがあります。


現在は、SCAの生豆のグレーディングとして官能評価があります。
しかし、2010年以降SPの風味は多様化、複雑化し、結果としてSPの2極化、3極化をもらたしています。


SCAの官能評価は従来の方法に比べれば客観性を持ちますが、官能評価そのものですべてを判断することは難しとも言えます。


それらを補完する方法として、さまざまな分析機器がありますが、それらの結果と官能評価との相関性をとるのは簡単ではありません。


味覚センサーを数年使用してきました。 インテリジェントセンサーテクノロジー社製で、元九州大学の都甲教授が開発したものです。食品の呈味成分を官能評価に代わる味覚認識装置として、コーヒーを含む食品業界で活用されています。


味覚センサーは複雑な人の味覚受容体を模倣した装置のため,その応答メカニズムは複雑で,センサーごとに応答する物質も不明瞭な部分も多くみられます。
コーヒーの場合,酸味センサーは,pHとの相関性が高い(インテリジェントセンサー調べでr=0.990)ですが,すべての有機酸を感知するわけではありません。また、酸味は、pH2程度の食品に対応するように作られているため、pH5程度のコーヒーの応答値は低めに出る傾向が見られます。


苦味センサーは,ニコチン酸,ニコチン酸アミドなどを感知するという研究もありますが、カフェインは感知しません。渋味はカテキンを感知しますが、私の実験では欠点豆である未熟豆や虫食い豆などによる雑味も感知します。旨味センサーはグルタミン酸などのアミノ酸を感知しますが、コーヒーのなかの旨味であるアスパラギン酸とアラニンをどの程度感知するのかはわかりません。塩味センサーは塩化物イオンなどを感知します。また、甘味を感知できるセンサーは開発されていません。


さらに、分析数値は主に強度を示めし,その質のベースとなる各属性の化学成分の特定ができる訳ではありません。
したがって、 あまりにも複雑な成分からなるコーヒーについて味覚センサーを有効に使用するには、機械の特性を見極める必要があります。
コーヒー以外の食品については、比較的簡単に分析ができますが、コーヒーは焙煎工程があるためあまりに難しく、インテリジェントセンサー社とかなりやり取りをしてきました。


最終的には、蓄積されたデータと官能評価との相関性から、数値を補正する方法を確立していく以外に方法はなく、なんとなく堀口式になりつつあります。
単純にデータと照らし合わせれば、いいか悪いかくらいは判断できます。


たまに、この活動日記にも分析結果を載せています。見るときに注意してほしいのは、各属性の強度の比較(acidity の比較など)できますが、属性間の強度の比較(acidityとbodyなど)は難しいとお考え下さい。


テースティング初級のデータを再度載せますが、そのような観点からみてください。使用する試料の個体差で結果は変わりますが、初級編のデータとして概ねこのようなものです。これとご自身のテースティング結果と照らし合わしてください。


テースティング初級

表の左は5つの試料のアベレージ。ここで単純にわかることは、SPのWashedの酸味が強く、次にSPのNatural、ブラジルは酸味が弱い、カネフォーラはさらに酸味がない。
pHは、SP/Wは4.9、SP/Nは4.95、Brazil/Nは5.1、カネフォーラはpH5.4 で、センサーの結果とpHは相関します (相関係数r=9.89で相関性が高い) 。また、センサーの結果と官能評価点数とも相関します(相関係数r=9.985で相関性が高い)。酸味は、SPとCO、ブラジル間に有意差 (p<0.01で統計上偶然性はぼない) がある。


単純な試料分析ですので、わかりやすい結果ですが、品種ごとやSP同士などで味覚センサーにかければ、ここまで単純に差異は出ません。

次回は、近赤外線分析についてですが、その前に中級編の結果も載せます。