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コーヒーの挽き方:いれる直前に挽くことでぐっとおいしく!

自宅でおいしいコーヒーをいれて飲みたいと思ったら、やはりおすすめはコーヒーを粉ではなく豆のままの状態で手に入れること。ただ、豆で入手した場合は一つの壁が立ちはだかります。粉にする、すなわち「挽く」ことです。道具が必要だし、仮に道具があったとしても、どんなふうに挽けばよいのか、おいしくなるのか、がよくわかりません。このページではそんなときのためのヒントをお伝えしていきます。

豆を挽いて粉にする理由

コーヒーをいれる際、なぜ粉を使うのでしょうか?豆のままではだめなのでしょうか?まずはそのあたりからご説明しましょう。

表面積を増やす

コーヒー豆の成分を水に移すことを一般に「抽出」といいます。抽出の際には、当然、コーヒー豆と水(普通はお湯)が触れている必要があります。水と触れる部分の面積が大きいほど、同じ時間内に水に移行する成分が増えます。このため豆を挽いて小さな粒にし、表面を増やします。

移動距離を短くする

コーヒーの成分は粒の表面に現れているものだけでなく、粒の内部にあるものもあります。成分が内部から表面への移動することで、抽出は進んでいきます。成分を表面に移動させるためには、水が粒の内部に入っていく必要もあります。このとき、粒の体積が小さいほど、水が粒の奥に移動する距離と成分が粒内から表面に移動する距離が短くなります。

結果として抽出時間が短くなる

豆を挽いて小さな粒(粉)にするというのは、水と接触する面積を増やし、水・成分の移動距離を短くすることです。これによって、コーヒー豆の成分の抽出時間が短くなるのです。

豆で買って自分で挽くメリット

コーヒーの抽出のため、いずれは豆を粉にする必要があるのなら、あらかじめ粉の状態で買った方が手間が省けてよいと思うでしょう。手間という意味ではそのとおりです。でも、豆で買って抽出の直前に挽くからこそ得られるメリットもあります。

香りが豊かになる

豆で入手した方がコーヒーは断然おいしくなります。なぜでしょうか。カギは「香り」にあります。

コーヒー豆からは香りの成分が抜け出ていっています。当然ですが、香りの成分が豆の外に出るのは豆の表面からです。なので表面が増えるほど香りは外に出やすくなります。上で述べたとおり、豆を挽いて粉にすると表面積は格段に増えます。その分、香りは失われやすいのです。

だから、豆で買ってきてすぐに全部挽いてしまって粉で保存するより、豆のままで保存しながら、コーヒーを入れる直前に挽いた方が格段に香り豊かなコーヒーを楽しむことができます。

保存期間が延びる

上で述べたとおり、豆で保存した方が香りの成分が失われにくくなります。このため、おいしく飲める期間を長くする(すなわち賞味期限を延ばす)ことができるのです。たとえば堀口珈琲では賞味期限を豆の場合は2カ月としているのに対し、粉の場合は1カ月としています(いずれも未開封の場合)。

なお、保存期間が長くなると豆が酸化するのでよくないとよく言われますが、冷暗所で保存しているかぎり、それほど「酸化」は進みません。コーヒー豆には酸化しにくい成分が多く含まれるからです。それでも長く保存した豆でいれたコーヒーがおいしく感じられないのは、やはりよい香り(の成分)が失われていることによるところが大です。

挽いているときも香りを楽しめる

コーヒーをいれているときや飲んでいるときだけでなく、挽いているときにも香りが楽しめます。

実はこのときにしか楽しめない香りもあるんです。コーヒー豆に含まれる香りの成分がすべてコーヒーの液体に移るわけではありません。特にバニラのように甘い香りはそうです。こうした香りは豆からも抜けやすいので、新鮮な豆を挽いているときだけに楽しめる香りとも言えます。粉の状態で売られているコーヒーではなかなか体験できない醍醐味です。

細かくするほど味の強いコーヒーに……粒の大きさと味わいとの関係

豆を挽いて粉にする理由やメリットはわかりました。では、どんなふうに挽けばおいしいコーヒーになるのでしょうか。この疑問に答えるには、そもそも自分はどんな味わいのコーヒーをおいしいと思うのかを考えてみる必要があります。コーヒーの味わいは香りと味、口あたりなどで変わります。この中でも「味」は挽き方で大きく左右されます。それはなぜなのかをまずは押さえましょう。

酸味成分は俊足、苦味成分は鈍足

コーヒーの「味」として大きなウェイトを占めるのは苦味と酸味です。それぞれの味の量(強さ)と両者のバランスがコーヒーの味わいに大きく影響します。苦味と酸味の出かたは、抽出に使うお湯の温度や、かかる時間などでも変わるのですが、それ以外にも粒の大きさによっても変わります。このようなことが起きるのは、苦味の成分と酸味の成分では粒の内から外への出やすさ(移行速度)が異なるからです。

酸味の成分の方が苦味の成分より移行速度が大きいのです。言うなればより俊足です。コーヒーの粉に水が浸透してくると、粉の表面に向けて成分が移動しはじめます。酸味成分の方が俊足なので、いち早く粉の表面に到達し外に出て(すなわちお湯に移行して)いきます。苦味成分が外に出るのは遅れます。渋みを伴うような重い苦味の成分ほど鈍足な傾向にあります。

粒が大きいほど味はうすく酸味寄りに、小さいほど酸味も苦味も強く

足の速さに違いがある場合、移動しなければならない距離が長いほど、移動にかかる時間に違いが出てきます。逆に距離が短くて済めば、時間の差もそれほど大きくなりません。そして、この移動距離こそ、コーヒーの粒の大きさです。

つまり、コーヒーの粒が小さいほど酸味成分と苦味成分が表面に到達する時間の差が小さくなり、逆に大きいほどその時間の差が大きくなるのです。その結果どうなるかというと、ほかの条件が同じならば、小さい(細かい)粉ほど酸味も苦味も強いコーヒーとなり、大きい(粗い)ほど味は全体的にうすめで酸味の方が強く苦味が弱いコーヒーになります。

すなわち、酸味も苦味も強いコーヒーにしたければ細かく挽き、あっさりとしていて苦味の弱いコーヒーにしたければ粗く挽くというのが、挽き方の基本なのです。

じゃあ、酸味を抑えて苦味だけ強くしたい場合はどうするのかと疑問に思われるかもしれません。残念ながら、挽き方(粒の大きさ)の調節では苦味成分を優先して抽出することはできません。酸味が弱く、苦味の強いコーヒーが飲みたければ、焙煎の深いコーヒー豆を使うなど、別の方法を探るべきです。

 

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