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コーヒーの抽出は、易しい、楽しい、美味しい-4 エキスの抽出方法

2019年4月14日

基本の抽出方法では、初めの三分の一を抽出すれば濃厚でよいコーヒーになるのでは?と思われるかもしれません。しかし、湯の注ぎ方、抽出時間、抽出量とのバランスなど、風味の本質の理解とテクニックを必要とします。25g程度の粉の量では濃縮された風味の抽出表現は難しく、50g程度 以上の粉を使用して抽出するのが適しています。

 

昭和の時代は、やぐら(わかるかな?)にハーフポンド(≒225g )もしくは1ポンド(≒450g)のネルをセット(クリップで止めたりします)し、200~250gもしくは450~500gの粉で抽出する店も多くありました。ペーパードリップによる一杯抽出が普及する前の時代ですね。

 

 

私が開業した1990年時点では、サイフォンやコーヒーメーカー、やぐらを使用したネルドリップが多くみられ、一杯抽出のペーパードリップ(カリタ、メリタ)は喫茶店では少なかったように記憶しています。円錐のドリッパー(コーノ)を使用している店は東京には数える程?(少なかった)しかありませんでした。当然ハリオの円錐はありませんでした。

 

いま思うと、この大量のネルドリップ方式は、ある程度コーヒーの成分をきちんと抽出できるよい方法だと思います。昔、開業前に喫茶店でアルバイトした時は、毎日500gで5リットルを何度か抽出しました。

 

しかし、抽出液がその後酸化する可能性が高く、また提供時の加熱により、風味の低下が予測でき、できるだけ短時間に提供する必要があります。今では、やぐらを使う店はかなり限定されると思います。欠点豆の混入のない高品質のコーヒーであれば、アイスコーヒーなどには応用できるでしょう。

 

濃縮されたエキスを抽出するには、Brixの数値から考えても、最低でも50g程度の粉が必要でしょう。フレンチローストの豆が焦げていたり、煙っぽかったりすればいい風味にはなりませんし、ただ濃いだけの苦い味になってしまいます。生豆の品質、焙煎の良さを前提とし、「甘味や旨味」のエキス抽出にはそれなりのトレーニングが必要です。

 

例えば、25gで100cc程度抽出するには、初めの1滴が落ちるまで数ccの投入を繰りかえし、45秒から1分程度かける必要があります。その後も濃縮された液体の抽出につなげなければなりません。30ccまでの抽出に2分、残りの70ccに2分程度の時間が必要です。

 

しかし、この粉の量ですと、どうしても抽出過多になりやすく、風味がきつくなりがちです。

 

例えば、50gで200ccを5分で抽出すれば、25gの場合より濃度は出しやすく、抽出も楽になります。はじめの1滴までの時間は、少量ずつの湯を投入し1分以上はかける必要があります。その後の抽出も少量の湯の投入の連続になります。最終抽出までは5分程度はかかるでしょう。しかし、このようにしても、そう簡単には「旨味」の伴うエキスを抽出することは難しく、トレーニングが必要になりす。

 

例えば、一滴ずつ湯を落とす練習とか、狙ったポイントに一滴を落とす練習とかも必要で、そのためにはどのような抽出ポットがよいかもおのずから決まります。少なくとも湯が、放物線を描かず、垂直に落下するポットが必要になります。

 

この日記を書くために、久しぶりに抽出してみましたがやはり「おいしい」ですね。「昔取った杵柄(きねづか)」とでもいうのでしょうか?

 

余ったフレンチローストの豆を適当に混ぜ55g、メッシュは中挽き、湯温度スタートは95℃、ハリオの円錐ドリッパー、抽出期間は4分45秒で200cc抽出。濃厚ですのでデミタスカップに80ccくらいが適量でしょう。しかし、この柔らかな風味の感覚を表現するには、粉に湯をあてる感覚(柔らかな感覚)は、湯を落とす高さも重要になります。湯の注ぎ方はかなり重要なファクターとなりますので、感性の世界に入ると考えます。 つまりは、抽出そのものが自己表現に転嫁する領域になるわけです。

そのようにとらえれば、昔、ネルの世界で孤高の抽出をする人が多かったのもうなずけます。

 

1990年の開業前は、水を入れた抽出ポットで、毎日、1滴ずつ落とす水量のコントロール練習をしたものです。そのせいか?開業してすぐに右ひじが腱鞘炎になり、左手でも抽出できるように練習もしました。この時は、食事もできるだけ左手を使い、左手の感覚を養ったものです。

 

野球の落合さんみたいない方をすると「最近の喫茶店開業者は、練習してないもん」という感じでしょうか。

 

個人的には、ペーパードリップで「柔らかな舌触り」、「旨味」、「複雑さ」を十分表現できると考えますが、ネルであれはさらに甘い味を表現できます。

 

では、「なぜネルで抽出しなかったんですか?」と問われれば、ビーンズショップだったからと答えるしかないでしょう。豆を売ることと、ネルの抽出は両立できなかったからです。また、ネルは、ペーパーに比べ、人によるブレが大きいということも挙げられます。1日一人で100杯の抽出は難しいのです。 同じ抽出方法でもペーパーであれば可能ですが。

 

生豆に含まれるショ糖は、初めは焙煎の過熱でカラメル化し、その後さらにアミノ酸と合わさりメイラード反応します。通常ショ糖の分解は、HMF(ヒドロキシメチルフルフラール)の香り成分や有機酸になりますが、コーヒーの場合はショ糖分子とそれ以外の何らかの分子の混合物の分解となり複雑な生成物ができると考えられています。さらにその後のアミノ酸とショ糖によるメイラード反応は、揮発性メイラード化合物(香り成分)、苦味を持った窒素化合物(アルカロイド)、糖化最終産物(AGEs: Advanced Glycation End Products)を生みます。

 

スペシャルティコーヒーの生豆に含まれるショ糖は、7~8g/100g程度でコマーシャルコーヒーより多い傾向にありますが、共に焙煎で失われます。しかし、抽出液に甘味を感じることは多くあり、官能評価の対象項目でもあります。

 

当然、生豆に含まれるショ糖が多い方が、最終抽出液に甘味を感じさせる可能性が高いと考えられるでしょう。しかしながら、HPLC(液体クロマトグラフィー)による生豆の分析結果から、各生産地のショ糖量の幅は意外に小さく、官能評価との相関性を検証するのは意外に難しいと感じました。コーヒーは、他の食品に比べなかなか手ごわいんです。

 

また、クロロゲン酸は、熱により「キナ酸とカフェ酸」に分解されますが、量的には多くはありません。しかし、キナ酸も過去の研究分析データはかなりまちまちで、酸味への影響はクエン酸や酢酸ほどではありません。コーヒーの酸の中でクエン酸と酢酸は官能的に感知できますが、キナ酸は感知できないでしょう。

ショ糖の分解及びメイラード反応で「香り」の一部が生成され、「コク」も生まれると考えられます。「コク」のもとになると考えられる総脂質量+総ショ糖量+アミノ酸は重要なコーヒー成分といえるでしょう。それらの多い方がコクや複雑系の風味をもたらすと考えられます。アミノ酸の場合は、旨味のグルタミン酸、アスパラギン酸と甘味のグリシン、アラニンなどが多い方がよいと考えられるのですが、微量ですし、官能評価との相関性実験はかなり厄介でしょうね?

 

HPLCによる混合物の分離とそれを質量分析するMSを組み合わせた高額のLC/MS(Liquid Chromatograph-tandem Mass Spectrometer)は、現在の分析の主流で、世界中の研究機関で使用されています。したがって、だれでもコーヒーを分析できます。それを分析ソフトで解析するのが主流です(とは言っても稼働させるまでは大変)。しかし、それらの結果は複雑になり、その解析結果を提示して終了してしまう研究傾向が強いのが実情です。実はそれが何を意味するのか?そこからどのように発展させていくのか? は難しいと感じます。ですから、研究者からもよく相談を受けます。

このような研究は、3年では短すぎできませんので、大学院時代は、もはや誰もやっていないような簡単なアナログ実験をした訳です。ライザップではありませんが、結果にコミットできます。

 

コーヒーの究極の風味(おいしさ)は、「クエン酸を中心として構成された有機酸のおいしさ」と「脂質などを中心とした柔らかな舌触り」が生み出します。「旨味などのおいしさ=複雑系(堀口式呼び名)」から成り立ち、さらに「香り」が加わります。後はカフェインが絡むでしょうね。この究極の風味を味わうことのできるものを「エキス」と称し(仮定)ました。

 

エキスは、ストレートで飲んでもよいし、クリーム+砂糖を入れてもおいしいでしょう。一杯当たり80~100cc程度が風味を楽しむ適量となるでしょう。しかし、このようなおいしさを味わうには、コーヒー味覚(そのうち書く機会があれば)の訓練も必要となります。

 

(言い方は変かもしれませんが、ロマネコンティをいきなり飲んでも、200万円の価値は理解できないでしょう。)

 

これが、浅い焙煎度では経験できないコーヒーの奥深さだと思います。

 

少しばかり大口をたたきましたので、いずれ「堀口珈琲研究所」セミナーで実際にエキスの体験をしていただく機会は設けます。

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