パパ日記

味覚センサ-2

都甲教授は香りセンサの開発に取り組んでいるようですが、まだ道のりはあるようです。

 

 

 

コーヒーは、一般的な嗜好品に比べ複雑な風味の飲料となります。
香りなどは800~1000種といわれ、分析してもその成分をワインのように品種の香りに当てはめることは難しい状態にあります。世界中の多くの研究室で香りの分析は行われ、代表的な36種の香りに対してそのコーヒーがどの程度当てはまるか?などの研究はされています。

 

 

しかし、このような実験はガスクロなどの分析機があればだれでもできますが、それを官能評価と相関させることは至難の道のりのように思います。今後さらなる多面的な多くの分析が必要となるでしょう。
そもそも研究者がコーヒーの香味をきちんと理解していないとできない研究だとは思います。

 

 

 

コーヒーの香りは複合的なものですが、ガスクロマトグラフィーで香りを嗅ぐと時系列に様々な香りを嗅ぐことも可能です。ワインでいうアロマパレット、コーヒーにおけるフレーバーホイールのアロマもそのような分析から作られていると思います。ボルドー大学でワイン研究された富永教授の「アロマパレットで遊ぶ」では、品種や醸造過程における香りが見事に分析されていますが、コーヒーの場合、単一の香りを感知することは極めて難しく、現在の官能評価では、香りよりも味とテクスチャーが重要になります。

 

 

 

多くの香料会社の方々や香り研究の教授と相談しましたが、3年という短期間で香りの研究は難しく、踏み込まない方がよいとのアドバイスを受けましたので、香りに関しては研究から除外しています。
但し、3回目の実験試料についてはガスクロでの分析を別の研究室に依頼しています。
分析そのものはだれでも分析機にかければできますが(とはいえ試料の調整などは難しい面もあります)、その目的が明確でなければならず、その結果をどのようにとらえ、考察するかについては、だれでも簡単にできることではありません。

 

 

 

コーヒーは、香り+五味+テクスチャー=風味(食味ともいわれる)と考えています。
ワイン(やウイスキー)は香りが重要ですが、コーヒーは五味+テクスチャーの部分の表現が多くならざるを得ません。SCAAのフレーバーホイールには、多くのアロマが並び、WCRのSensory Lexiconは108種のアラビカサンプルから開発された貴重なデータですが、完成されたものではありません。
スタート地点に立ったにすぎません。
これらを使いこなし、官能評価をすることはプロでも困難と感じます。、

 

 

 

 

その香り、味、テクスチャーがどこから発生するかについて、遺伝子や環境因子、また肥料やポストハーベストの影響などまだまだわからないことが多すぎ、無限にコーヒーの研究対象はあります。Lexconはそのための基礎データの共有でしかありませんし、アメリカを基準にした香味であり国際的なコンセンサスのためには、今少し研究時間が必要となるでしょう。

 

 

 

そのような観点から、3年でできることを考えて、個人的な要求を満たし、かつコーヒー業界に有用であるとの観点から研究している訳です。実質的には、論文を書かなければなりませんので、実質的な実験は2年以内になりますので、研究は生易しくないこと、期限を区切ることのむずかしさなども痛感しています。
したがって、とても単純なことを行っていますが、単純が故にまだ公表できないことをご容赦ください。

 

 

 

SCAAの生豆のグレーディングや官能評価方法についても、10年以上の運用過程で問題点が目立ち始めています。過去15年間テースティング会を開催し、カッピングフォームの限界を感じてきましたので、新たな評価基準の作成が問われます。そのためには、日本人が日本人の感性で言葉の表現を作成し、余り複雑にしすぎないで、評価できる方式を考える必要があると考えます。夫々の評価項目に関しては、評価の強さと質について科学的な裏づけを明確にすることが重要で、かつ評価者の訓練をしていく必要があるでしょう。
このあたりはいずれお話しします。