パパ日記

ルセットとオリジナリティ

ケーキを食べ歩いてきた歴史の中で、ワイン同様いくつかの衝撃を体験しています。

 

 

古くはトップスの「チョコレートケーキ」と「チーズケーキ」は忘れられません。
1970年前後に旧赤坂TBS会館の地下のレストラン(カレー専門、イタリアン、和食などでイタリアンは落合さんがシェフでした)ですでに提供されていました
私がサラリーマンとして入社してすぐの1971年、会社近くにこの2つのケーキを食べることのできる喫茶店があり、よく通い食べました。
その後、千代田線が開通し、赤坂のTBSまで10分で行けましたので、よくトップスの欧風カレーとケーキを食べに行きました。

 

 

1970年前後にこのレベルの味のケーキは日本では突出したおいしさだったと思います。
そして今も味はほとんど変わらないのですから驚きです。
懐かしさゆえ、たまに百貨店の地下売り場でチョコレートケーキを購入します。

 

 

 

マルメゾンからほぼ10年後、堀口珈琲開店1990年の2年前に代々木八幡に「イル・プルー・シュル・ラ・セーヌ」(代官山に移転)が開店し、日本のフランス菓子業界に激震が走ります。
(ここからの話はいろいろあり、長くなりますので省略します。)
当時、素材の味が明確な、その研ぎ澄まされた味の根幹の部分で衝撃を受けました。
それまで体験したことのない明晰な味で、30年近く前に感じた味の衝撃を今でも思い起こします。代々木上原在住中、失業中の身でありながら、当時としては価格の高いこの店のケーキをどれほど食べたことでしょう。

 

 

このようなある地点を超えた味は、言葉で説明できません。
弓田さんは、フランス的なものという他人には理解できないような私的な感覚をつらぬき、最終的には製菓食材の輸入にも向います。
最近はワインの輸入も初め、様々な発言をしていますね。
(この話に至るまでにはいろいろあり長くなりすぎますので省略しておきます。)

 

 

 

勿論、現在素晴らしいケーキ店が多くあります。
しかし、個人レベルの喫茶やカフェのオーナーは、ケーキが専門ではありませんので、トップレベルの菓子店と同じようなものを作る必要はありません。
本来は、簡単なレシピでスピーディーに作れ、おいしいものを目指すべきです。

 

 

 
堀口珈琲は、80点でよいと考えて長い間試行錯誤して現在に至っています。
しかし、この80点はなかなかハードルが高く、言うは易し行うは難し….で、最終的にはよいお菓子をたくさん食べ、味を比較し、客観的に自店の味を評価できなければなりません。
コーヒー店を始めるにも多くのよいコーヒーを飲み、それを理解できなければならないのと同じです。

 

 

喫茶やカフェのケーキの場合は、原価にこだわらず、良い素材を選び、既存の様々なルセット(レシピ)を試していくのが良いでしょう。最終的には、ここでしか食べることができないようなものがよいのですが、簡単においしいものが作れるわけではありませ。
少しづつ試し、味とスキルをアップしていけばよいと思います。
卵、小麦粉、バター、チョコレート、生クリーム、チーズその他諸々の素材の吟味、スポンジやパイ等の生地をどのようにするかなど考えることは多くあり、常に研究し、何度も試作と試食を繰り返し、最終的にオリジナルのルセットを少しずつ完成させて行けばよいでしょう。

 

自家焙煎店のオリジナルのブレンドも、多くの生豆の品質や香味を理解して初めて作れる訳ですのでそれと同じことです。試行錯誤していくというプロセスがとても大切です。
プロセスなくしてオリジナるはうまれません。
喫茶店やカフェの抽出も同じで、レシピ通りにすればよいわけではありません。
粉の量、抽出時間など様々試してみてそのレシピの意味を理解し、自分なりの店の味を生み出すべきでしょう。

 

最近は結果を求めるばかりで、プロセスをショートカットする傾向が見られます。
オリジナリティというプライドはいずこに…………?

続く