パパ日記

寿司から蕎麦へ

そばも東京が一番おいしですね…というと各地方からお叱りを受けるかもしれませんが江戸前(そばを江戸前といういい方がいいかは?)の方が食べ慣れています。
但し、東京では、せいろ1枚ではもの足りない店も多く、2枚食べると2000円弱になってしまうということさえあります。
「たかがそば」というと怒られるかもしれませんが、そのくらいの謙虚さで味を追求しているくらいの方がいいと思います。1000円近いせいろはやはり高すぎます。
一時期は、様々な蕎麦屋の味を見るために、かけとせいろの両方をたのんで食べたりしたものです。

 
コーヒーも同じで、「たかがコーヒー、されどコーヒー」くらいの思いで、お客様に
「おいしいと思われ」「何故なんだろうと好奇の芽を向けられ」「調べたらすごいことをやっているんだ」くらいのさりげなさがいいのではないかと思うようになりつつあります。

 

 

 

そば屋は昔とは変わりました。
最近の手打ち蕎麦屋は「そばは硬い方がよい、つゆはしょっぱい方がよい」という風潮がひろがりすぎ、イタリアのスパゲティのアルデンテより硬い店や、しょうゆをつけて食べているような店まであります。
逆に東京以外はつゆが薄く物足りないところも多くあります。
何事にもバランスというものは重要です。

 

 

 

喫茶店と同じように蕎麦屋の経営は難しくなり、今ではイタリアレストランの方がはるかに多くなりました。
そのため、新たに開業する蕎麦屋はほぼ手打ちに向います。
コーヒー専門店が業態として難しい中、コーヒーの自家焙煎店に向かう流れと同じです。

 

 

更には、そばのみでは採算が難しく、「昼そば+夜は飲み屋」となる店が多くなりました。
自家焙煎店も同じように当初は豆売りのみでは難しく、小さな喫茶を併設することをお勧めしています。(但しあくまで本業は豆屋ですのでお間違えのなきよう)
蕎麦屋で日本酒が所狭しと鎮座する風景も当たり前になりつつあります。
もともと昼から蕎麦屋で酒という文化はありましたので、その延長とも思えますが、蕎麦屋ですので酒瓶は控えめに陳列してもらいたいものです。
最近は、就業時間の多様化のせいか?、昼間から空いている居酒屋も多くなりました。

 

このような蕎麦屋の影響とでもいうのでしょうか?
少しでも売り上げを伸ばそうというのでしょうか?
最近は、牛丼屋で酒が出たり、様々な店が酒を出しつつあります。
ファーストフードまでが酒に手を出す風潮はいかがなものか?
いかに日本は酒にルーズな国なのか?と思ってしまいます。
スタバも酒を出すような業態を初めています。
個人店のカフェや喫茶をオープンするにも酒を出した方が良いかとの質問も出ますが、本業こそ重要ですので酒は不要と考えます。
とわいうもののカフェも酒を出すような流れになってしまうのか?といやな予感もしています。

 

私のような山の手育ちの江戸っ子(3世代以上)は、下町の文化を知らずに育っています。
東京といっても、下町と山の手では文化が異なり別世界でした。
しかし、ここ20年くらいで情報網がひろがり、又交通機関も便利になり、交流が生まれ行き来するようになったといえます。
今では、千歳船橋から半蔵門線で江東区まで1時間以内で行けますし、千代田線で、湯島、千駄木などのエリアも近くなりました。

 

 

しかし、山の手は渋谷、新宿、青山、銀座などが近く、そこが生活圏になりますのでそこから出ることは少ないのも事実です。
残念ながら下町界隈の蕎麦屋はよくわかりません。
昔は、山の手と下町の行動範囲は日本橋あたりが境目だったでしょうか。

 

 

おいしい蕎麦は、そば粉の多い方がいいに決まっています。
十割、二八割(そば粉8)などと言われますが、蕎麦屋により異なります。
立ち食いソバなどはそば粉が少なく小麦粉の方がはるかに多いでしょう。
手打ちで、そば粉が多ければ、そばがしまった感じや表面の食感が異なります。
手打ちといっても、「手でうち手で切る」から「手でうち機械で切る、機械でうち手で切る」など様々です。
実際には、100人分を一人で打つには相当の体力が必要で、毎日となると大変な作業となります。
蕎麦中心の個人店で100人の来店があればかなり立派で、優良店です。

 

 

さて、そばはどのように食べるのが粋か?等が議論もされますが、これも寿司同様好きなように食べればよいでしょう。
1.寿司と同じように表面が乾かないようにさっさと食べる。
基本的にはファーストフードです。

2.江戸前であればつゆは濃いめで少しつける。
薄ければたくさんつける。

3.音を立てすすって食べてよい食べ物です。
そばをすするときに空気も吸い込み鼻腔にそばのかすかな香りが残ります。
コーヒーのカッピングも同じです。

4.ワサビは、つゆにいれず、そばに少しつけて食べた方がいいでしょう。
七味を少量ふりかけ食べるのもよいと思います。

5.あまり噛まないで飲みこんだ方が良いともいわれます。
しかし、しっかりと噛みしめた方が味がわかります。

6.最近は、初めはそばだけを食べるとか、塩で食べるとかいわれます。
しかし、そばはつゆにつけて食べるものです。
最近のてんぷらも塩が流行っていますが?私は大根おろしと天つゆで食べます。

7.そば湯は特段うまいものでも何でもありません。
何となく最後の〆でしょうか。ないよりあった方がいいくらいでしょう。

 
そばの評価はかなり難しいです。
色、香り、味、食感などで見る場合もありますが、更科から田舎ぞばまであり根本的には味をどう見るかの客観的評価基準はなさそうです。
友人が京浜急行蒲田駅近くで「津右衛門」という蕎麦屋をやっていますので一度お尋ねください。材料のよさのわりに、価格はほどほどです。

 

 

 

千歳船橋の世田谷店の目の前には「長寿庵」があり、私が開業した1990年は1階のテーブルと2階の座敷が11時30分には満席になっていました。
目の前でしたので10年以上よく通いました。
暇そうなときは「そばがき」や「焼うどん」などを作ってもらったりしました。
「抜き」といって天ぷらそばのそば抜きを注文したこともあります。
これはどこの蕎麦屋にもメニューとして載っていませんのでまともな食べ方ではありません。しかし、天ぷらを天つゆでなく、かけのつゆで食べる食べ方もそれはそれでうまいのです。

 

 

 

今は、環八近くの長寿庵の息子さんの「蕎楽」という店に行きますが、環八を超えるとそれなりに有名な「仙味洞」もあります。また最近みずほ銀行裏にも手打ちの蕎麦屋が開店しています。

 

 

しかし、独特の世界を放っていたのは、いまはなき駅向こうの商店街にあった蕎麦屋です。40年以上前の時代そのままの昭和の独自の味を守る目立たない蕎麦屋でした。
一見さんが入りにくいたたずまいでしたが、先代のおばあちゃんが作る蕎麦屋のカレーライスはなつかしさのあまりよく食べました。
注文すると玉ねぎ、にんじんをきざみ、ルーを入れて作り初めます。
サザエさんカレーというブランドのカレー粉でしたが、こちらもすでに廃業しています。この店の「カレーライス」と「冷やしとろろ」、「おかめとじ」は、今でも食べたいと思う蕎麦の逸品です。

 

 

日本人は、天ぷらが大好きですが、そもそも天ぷらやは東京といえども少なく、蕎麦屋がその代わりをしているようなものです。
天ぷらそばが人気なのもわかる気がします。
天ぷらはエビが命ですので、よいエビであればそれなりの価格になります。
昔ながらの蕎麦屋が減少したのは、立ち食いそばの影響もありますが、あげておいた天ぷらを使用するなど手抜きが多く、原材料のそば粉やエビの質がおちたことなどでしょう。
喫茶店が、コーヒーの品質を落とし安いコーヒーを使用するようになって減少していったことと同じように感じます。

 

また、天ぷらの揚げ方も根本的に異なり、蕎麦屋では、あげながらエビに衣を重ね、花を咲かせるような作り方です。エビが大きく見えますがあまり良いとは思えません。
また、温かい蕎麦にてんぷらを入れて出す店が多いですが、私はせいろの場合天ぷらは別盛りにして出してもらいます。