パパ日記

スぺっシャルティコーヒーと焙煎-10-1

25年前の日本のコーヒーの大部分(99%程度?)はミディアムローストでした。
私は焦げや煙のないフレンチローストのコーヒーを作るためにこの仕事を始めましたので、当時流通しているコーヒーの香味の世界とは大きく異なった提案でした。
しかし、ごく一部のコーヒー好きは焙煎の深いコーヒーを求めていました。

 

 

この仕事を始めた時は、生豆に関する情報もほとんどない時代で、試行錯誤を繰り返さねばなりませんでした。たった1枚の産地の写真さえ入手できないような時代でした。
コーヒーといえば抽出に集中し、焙煎や生豆の世界は未知の領域であった訳です。

 

 

 

深い焙煎のコーヒーを作るためには、まずすべての生豆をミディアム、シティ、フレンチに焙煎し香味を試してみる必要がありました。
次第に生産国、生産年度、ロット、経時変化などによる香味の違いなどが分かるようになり、又生豆のばらつきが見え始めました。
しかし、当時このようなことに疑問を感じるコーヒー関係者はあまりみうけられない時代でもありました。

 

 

 

当時は、ミディアムでも酸が弱く飲みやすいコーヒーが主流でしたので、焙煎のしやすい柔らかな豆であればよかった訳です。
例えば、ブラジルのNo2のスクリーンサイズ18程度の大きなものがメイン商品となり、その香味は、酸の少ないソフトなコーヒーでした。
また、ジャマイカのブルーマウンテンは、中米などに比べ酸が弱めで飲みやすかったことも価値を高めたと考えらえます。

 

 
グァテマラやコロンビアなどは、豆質の固いものは敬遠され、比較的鮮度の落ちてきた豆が求められた時代でした。
コロンビアのスプレモやグァテマラのSHBの入港したてのブルーグリーンの生豆は、ダブル焙煎といって、初めはある程度水分を抜き、冷ましてから2回目の焙煎を行うような事例さえありました。

 

 

数年の経験の結果、深い焙煎には新鮮で硬い豆が必要と感じていましたので、生豆問屋には、常にニュークロップを求めましたが、そのこと自体が日本の生豆流通構造の中では異質でしたので、自分の考えるような豆を探すことは難しいと感じていた時代です。

 

逆に言えば、コーヒーは飲みやすければよい時代で、香味に個性を求める時代ではなかった、極端ない胃肩になるかもしれませんが、コーヒー関係者も消費者もまだコーヒーに対する知識や香味を十分に理解していなかった時代ともいえるでしょう。
疑問を感じることのない幸せな時代だったといえるかもしれません。
続く