パパ日記

とちおとめとティピカ主義者-2

さて、いちごマニアとしての意見は?

基本はまず「とちおとめ」の味を基本としてテースティングします。
最終的に多くのいちごを食べた結果、ここにたどり着きました。
「とちおとめ」は、酸味と甘味のバランスがよく、「あまおう」になると甘味に味がシフトします。
したがって、酸味と甘味のマトリクスを作ると、いちごの味が少しはわかりやすくなります。

 
ワインでも、単純に酸とコク(ボディ)が重要です。
2次元マップとしては、コーヒーも酸とコクのマトリクスでよいと思います。

苦味は、他の味より閾値が極端に低く(本能的に毒を感知する為ですが、、苦味のキニーネを例にとると0.000008(mol/l)、甘味のショ糖は0.01(mol/l)ですのでその差が大きいのがわかるでしょう。例えば、強烈な苦味が子供の誤飲などを防ぐために殺虫剤、洗剤などにごく微量添加される場合も見られます。

 

 

 

この苦味は、焙煎による変動値が大きいこと、苦味の成分であるカフェイン、褐色色素などがどのように影響するかについて十分に解明されていないこと、苦味の官能的尺度が難しいことなどがあり、指標とするには少し無理があります。
したがって、SCAA及びCOEの評価基準にビターの項目がないのでしょう。

 

 

 

コクは、香味ではなくテクスチャーとしてみる必要がありますが、慣れないと感覚的な理解が難しいのですが、まだ苦味よりはわかりやすいと考えます。
ワインであれば、グラスの中でワインが流れる速度などの粘性でも判断できます。
コーヒーの場合は、脂質量に左右される部分が大きく、ペーパードリップとフレンチプレスの液体で区別できるはずです。(紙は脂質分を吸着する比率が高い。プレスは金属フィルターで脂質が抽出されます。但し、プレスの場合、粉っぽくなるため意外にコクの判断が難しいともいえます。)
ついでですが、
ですから、ペーパドリップというのはコクをいかに表現するかが問われるのですよ……。

 

 

 

コーヒーのテースティングも、イチゴの「とちおとめ」と同じように、ティピカとブルボンの風味を基本味として様々なコーヒーを比較していくと風味の違いが理解しやすくなります。
私が、ティピカ主義者と自称するのは、「ティピカが最もおいしい」ということではなく、「風味の比較には必須である」からです。
このことは15年以上テースティング会でいい続けてきたことです。

 

 

 

しかし、大きな問題があります。
1.ティピカの生産地が減少してしまったこと
現在は、ジャマイカ、パプアニューギニア、東チモール、ハワイコナなどしかなく、例外的にパナマ、コロンビア、ペルーなどにかすかに生産が残っている状態です。

2.消費国の品種への関心が薄いこと
若い日本のコーヒー関係者にもいえることですが、これまでの30年間欧米人が品種に関心を持たなかったことにもよります。ティピカに関心のある日本人は70才近くもしくはそれ以上の年齢になっているかもしれません。最近は生産履歴を求める傾向があり、関心は高くなりつつあるとはいえ、その風味が理解されているとはいいがたいと考えます。

3.生産者でもティピカの風味がわからなくなったこと
生産地で収穫率の悪いティピカから、他の品種に植え替えられて、2代目や3代目の生産者がティピカの風味を理解できなくなってしまっていると考えられます。

4.ティピカは古い品種で多くの生産地で栽培管理されていないこと
そもそも、ティピカは在来種として、生産性も低く、産地の中できちんとした栽培管理されている事例が少ないことも風味のブレを生じさせています。

5.ティピカの風味が変化していること
総合的に判断して、気象変動その他により20年前と比べティピカの風味は変わってきていて、そもそも何が基本的なティピカ系の風味なのかわかりにくくなっています。
わかる人が世界中に少なくなっていると感じます。

6.ティピカをどうするか?
これは、消費国、及び生産国のコーヒー関係者が考えなければならない問題です。
私はこの品種を残していくべきと、昔からこだわり、東チモールにかかわりました。

 

 

 

しかし、更に問題は多くあります。
1)生産性は悪く、さび病に弱いこと
2)消費国で生豆の鮮度劣化が早いこと
3)風味の個性が弱いこと
などを考えると、生産を維持することに意味あるのか?という問題が生じます。

 

 

 

 

過去30年にわたり、これまで多くの生産者や消費国のバイヤーがティピカに無関心でした。
しかし、反面多くの品種が栽培されていく中で、この品種の希少性に気付く人も出始めていますが、重要性は別の観点からとらえ直されるべきと考えます。

 

 

 

1)この品種をなくしてよいのか?
このままでは、品種として存在価値が減少していくと考えら、風味の原点の一つが喪失してしまいます。

2)コーヒーに携わるロマンをすててよいのか?
フランスの植物園からカリブ海のマルチニーク島に移植され、世界中に伝播したこの品種を絶滅危惧種にしてよいのか?
効率主義優先で、歴史を引き継がなくてよいのか?

3)どのようにコーヒーのテースティングメソッドを維持するのか?
コーヒーの風味とはそもそも何か?
おいしければよいのか?それは何を基準としておいしいというのか?
 

今や、このような価値観を共有できるコーヒーマンが世界にいるのか?わかりません。
このように考える者こそ、今や絶滅危惧種であるのかもしれませんので、一筆啓上しておきます。

 

 

サンタカタリーナは、まさにサンタカタリーナの風味です。

続く