産地のはなし

イエメンのコーヒーの流通に革命を起こす若者たち 前編 「イエメンとブレンド」

イエメンのコーヒーの流通に革命を起こす若者たち 前編 「イエメンとブレンド」

 

2022年10月某日。
イエメンにおいてコーヒーの流通・加工を手掛ける「QIMA COFFEE」が当社の横浜ロースタリーを訪れてくれました。

ご存知の通りイエメンは2015年から内戦が続いており、その影響で長らく良質なコーヒーが届きにくい状況が続いています。その様な中で、一昨年より堀口珈琲のラインナップにイエメンが復活し、しかも驚くほどにクリーンでフレーバーが豊かなコーヒーをお届けできているのは、彼らの存在があってこそ。

今回はそんなイエメンのコーヒー流通に革命を起こす若者たち「QIMA COFFEE」と共に過ごした一日の様子を前編・後編に渡ってお伝えいたします。

 

イエメンをブレンドに使うこと


 

イエメンのコーヒーには、他の産地にはない独特のフレーバーがあります。
ブレンドを“スペシャリテ”とする堀口珈琲にとってそれは、表現の幅や可能性を広げてくれる貴重な存在です。だからこそ私たちは良質なイエメンを追い求めてきました。

そして、そんな私たちの姿勢に興味を示してくださり、来日中のQIMA COFFEE代表ファリスさんをはじめとする三人が当社の横浜ロースタリーを訪れてくれました。

QIMA COFFEEは、イエメンにおいてコーヒー農家からコーヒーチェリーを買い付け、自分たちが運営する精製施設で加工を施し、消費国へと輸出している業者です。設立は2016年。イエメンにルーツを持つイギリス出身の若者が立ち上げた、言わば「ベンチャー企業」です。

 

 

まずは、横浜ロースタリーの施設内をご案内。
QIMA COFFEEから受け取ったコーヒー生豆を私たちがどのように扱い、どのように焙煎し、どのようにして品質にさらなる磨きをかけているのか、社長の若林から説明をします。

 

 

イエメンから横浜ロースタリーに到着した生豆は色差選別機を使って異物や欠点豆を除去したのち、一定の温度に保たれた生豆保管庫にて焙煎の時を待ちます。

 

 

焙煎後も色差選別機にて異物や不良な焙煎豆を除去したのち、さらに人の手によって選別して品質を磨き上げていきます。

 

 

代表のファリスさんは、
「品質の追求は想像以上。こだわらなくてもできてしまうプロセスを、しっかりこだわることでより良い品質を生み出そうとしている姿勢は、自分たちがイエメンでやっているアプローチと似ているよ。」
と、私たちの姿勢に共感してくださった様子。

 

QIMA COFFEEの優れた品質が堀口珈琲のブレンドにもたらすこと


 

続いて、焙煎と選別を経たコーヒー豆をどのような形でお客様へ届けているのかをファリスさんに説明します。

今回、横浜ロースタリーに訪問していただいたきっかけは堀口珈琲の“ブレンド”です。 「イエメンのコーヒーを積極的にブレンドに使用するロースターは、世界中で堀口珈琲だけ」なんだそう。

であるならば、私たちがどのような想いでイエメンのコーヒーをブレンドの素材として使っているのか、しっかりと伝えなければいけません。主任ブレンダー秦の説明にも熱がこもります。

主任ブレンダー秦からは、

・私たちは高品質なシングルオリジンを追求したうえで、シングルオリジンだけでは成しえない「ブレンドならでは」の風味を追求し、常に9つのブレンドを作り続けている

・イエメンのコーヒーは9つのブレンドの中で「#4 AROMATIC & MELLOW シティロースト」のフレーバーの複雑性を生み出す重要な役割を果たしている

・QIMA COFFEEが手掛けたコーヒーの圧倒的な個性はブレンドにおける新たな風味の表現を可能にし、季節限定の特別ブレンド(2022年春のプリマヴェーラブレンドや、冬のハッピーホリデーブレンド)において主軸を担った

といった内容を説明し、実際にブレンドを飲んでいただきました。

 

 

 

説明を聞き、ブレンドを召し上がっていただいたファリスさんからは、
「9種類のブレンドはそれぞれ、使用する産地は決まっているのか?」
「ブレンド#4において、それぞれの素材がどのような役割を担っているのか?その中で、イエメンのコーヒーはどのような存在なのか?」
など、次々に質問をいただきます。

やりとりの中で、「私たちがつくるイエメンのコーヒーの特徴をどのようにとらえている?」というファリスさんからの質問に対し、主任ブレンダー秦は「私がとらえている特徴は3つある」として、こう答えます。

「1つ目に、豆面が均一で未熟豆の混入が極めて少なくクリーンカップが素晴らしいこと。
2つ目に、今までのイエメンには感じられなかったフレッシュなニュアンスが出ており、酸の質やフレーバーがものすごく複雑であること。
3つ目に、それらの特徴が唯一無二だということ。
いままでのイエメンは乾燥果実やスパイスのようなドライな印象が強く、それはそれで独自性があったのだけど、QIMACOFFEEのイエメンはそれに加えてフローラルやフレッシュフルーツなどの新鮮さをも感じる。
もともと独自性の強い風味を持つ産地だったが、さらに複雑なフレーバーをもち、クリーンカップが素晴らしいことでその一つ一つの味わいがはっきりとわかる。」

 

 

じっと聞き入るファリスさん。秦はこう続けます。
「クリーンカップであること、フレーバーが複雑であることはブレンドづくりにおいて表現の可能性をグッと引き延ばしてくれる。絵を描くことに例えるならば、クリーンカップと複雑なフレーバーは、真っ白なキャンパスを前にたくさんの種類の絵具を持っているような状態。どの部分を味わいとして活かすかという選択肢がたくさんあって、ブレンダーの想像力を刺激してくれる」

 

 

その説明を聞き「ワオ!インタレスティング!」とファリスさんが驚いてみせると、急に照れだす秦。
こちらの想いが無事に伝わり、場も和みました。

 

QIMA COFFEEと堀口珈琲の共通点=品質に対する追求心


 

 

その後も焙煎やブレンドについて会話が盛り上がり、すっかり共鳴した様子の二人。

「品質管理を徹底することや、ブレンドを作り続けるということは、当たり前のことかもしれない。だが、それをしっかりとやりきることは難しく、中々できないことだと思う。自分たちもイエメンにおいて、完熟したチェリーを収穫し、丁寧な精製を施すという当たり前のことをやろうとしている。でも、それはほとんどの人ができていないことなんだ」
と語るファリスさん。

品質を追求し、当たり前のことを当たり前にやりきる姿勢。
それは、私たちも大事にしていることです。

では、ファリスさんたちは、イエメンにおいて具体的にどのような活動をしているのか。今度はこちらから質問をする番です。
なぜこれほどまでにクリーンでフレーバー豊かなコーヒーを生み出すことができたのか、じっくりと聞いてみました。

>>後編へと続く

 

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