パパ日記

ビストロとレストラン

フレンチ業界は40年ほど前に西麻布や赤坂を中心に多くのビストロが誕生し、現在のグランメゾンにつながる歴史があります。
その創生期から食べてきたものにとって感じることは、日本特に東京が世界でも類を見ない巨大な胃袋になったということです。
今やフランスでは、その器用さゆえに日本人の料理人がいないと店が動かないとまで一部では言われ始めています。
抹茶、ワサビ、昆布やカツオのダシなど新しい味への広がりがそれを助長しています。
しかしその反面、フランスの伝統的な料理やしっかりとしたボリュームという皿の表現は世界的に衰退傾向にあるようにも感じます。
日本では30年以上前に西麻布のあるイタリアンのアルポルトが始めた小皿料理はフレンチにも広がり、今や世界の潮流となりました。

 
食の文化は簡単に形成されるものではなく、永い歴史が必要です。
しかし、情報伝達が発達するときちんと基本を学ばず、表面の世界を模倣する傾向も増加します。
食は変化しますが、常にその基本は一つでしかないということを料理人も食べ手もきちんと自覚すべきでしょう。
日本での町場のレストランの歴史はたかが40年程度でしょう。
目新しいところに目移りしてしまうのは、食のベースができていないからでしょう。
まだまだ食べては育っていないと感じます。

 

 

 

コーヒーの世界も同じようなことがいえ、スペシャルティコーヒーの歴史は日本では2000年以降となり、歴史はあまりに浅いといえます。
それが何故生まれたのか?またその本質は何なのか?を理解しているコーヒー関係者は少ないでしょう。最近はサードウエーブという実体のない曖昧な言葉が独り歩きし、情報あかりでコーヒーの本質的な香味がおろそかにされていると感じるのは私一人ではないでしょう。
コーヒーは生豆である原材料でその品質と香味が決まることが理解できれば、コーヒーの香味そのものの表現の多様性が理解できるはずです。
標高が高い産地の優れた豆は酸とコクがあり、その香味の多様性を表現するためにはどのようなローストがいいのかを、それぞれの生豆のカッピングで理解できるだけのスキルを身に着けることがプロであるべきでしょう。
まだまだコーヒーのプロが育っていないと感じます。

 

 

 

ビストロとレストランの差異は多くあります。
1.店のつくりや雰囲気、2.サービスの質、3.素材と料理の味、4.カトラリーやクロス、ナプキンなどの備品.そして最終的な5.価格 その他見えないところなどもろもろです。
どちらがいいかは、TPOによるでしょう。
ハレの日にはレストラン、気楽にビストロでいいと思います。
それぞれの愉しみ方がありその楽しみ方を享受すればいいでしょう。

 

 

韓国、東チモール出張を前にフレンチを思い切り食べたい欲求に刈られました。
昨日は20年来の付き合いの斉須さんに会いに、昼を食べに出かけました。
その前日にビストロ料理を食べに某店にもいきました。(日本のビストロとしては素晴らしい店でたまに行きますが、私の好きな「リオン」ではありません。為念)

フォアグラのテーヌ、モンサンミッシェルのムール貝300g、サーモンンサラダ、ステーキ
、さらにシャルロットポワールと栗のパフェ。(ここでフレンチ好きはどこの店かわかるかもしれません)ムール貝は、玉ねぎ、ベーコンとクリーム系のスープで美味しくいただきました。(すみません、ケーキとパフェは堀口珈琲の方がはるかにおいしいと思います。コーヒーは評価対象外。)

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左はフォアグラのテリーヌ/こういうコテコテのものが好きです。
右はムール貝/このくらいだと食べたという実感が出ます。

 

 

10月にしては真夏のような昼に「コートドール」に。
定番の赤ピーマンのムース、ウナギのテリーヌ、マスのカリカリ焼き、鯛、これも開店時からのメニューの牛尾の赤ワイン煮などを。
今回は 料理に素晴らしい香りがあることを新たに発見しました。
コーヒーで香りばかり嗅いでいるからでしょうか?
年を取ってからの方が敏感になりました。

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オックステールは、一人分にワイン1本を使うと以前聞いたことがあります。
食器も白で、シンプルでいいですね。
最後のコーヒーもいいですね。

 

 

料理は繊細で、まじめ。
素材の味を生かしたいつもの料理が、いつものように出てきました。
この安心感は貴重です。
このことを理解できるようになるとフレンチの食べ手としては一流でしょう。
食べ手はトテモ重要で、日本でのフレンチの文化を残すことに貢献できるからです。

 
斉須さんの料理は、時流に左右されず、進化しつつも定番をメニューを20年以上続けることの愛情と努力と忍耐は尊敬に値するといつも思います。
価格もグランメゾンに比べ安く、昔と変わらないのが不思議でこれも人柄でしょう。
厨房はおそらく日本で一番きれいで、若いスタッフが昼と夜の終了時に常にピカピカ磨き上げます。ここで働けるスタッフは、フレンチの世界の心構えから調理の王道を学ぶことができ幸せでしょう。
ここから何人の料理人が旅たったのでしょう。
堀口珈琲からも多くのコーヒーマンが巣立ちましたが斉須さんのように、王道が伝わったでしょうか?

 

 

 

 

私がフレンチを食べ始めたのは、今から40年前でホテル料理以外にはビストロしかない時代でした。日本の洋食の夜明けの時代で、今の高級店のオーナーシェフがまだ店を持つ前でしょうか。
初任給が5万円の時に1万円を握りしめ、足りるか不安に駆られつつ通った記憶は今でも鮮明に残っています。そこから食べる世界に入り込み、コーヒーにも魅了されていきます。

(シャブリガ高級なワインであった時代といえばソムリエの方はどんな時代だったのかを推測、理解できるでしょう。)