パパ日記

スペシャルティコーヒーと焙煎10-3

ワインもコーヒーのクリーンである方が良いというのは個人的な見解です。
クリーンさには、テロワール、品種、精製工程など多様な要因が絡みますが、欠点豆の混入を限りなく0に近づけることも一つの方法です。

 
スペシャルティコーヒーでも当然欠点豆の混入はあります。
SCAAの基準では、350gの生豆中5欠点以内がスペシャルティとなります。
香味に大きな影響のない欠点豆は、5粒で1欠点と数えますので、20粒程度混入してもスペシャルティとなります。
したがって、堀口珈琲では、多くの場合、生産地での最終ハンドピック、日本入荷後のカラーソーター、焙煎後未熟豆などのハンドピックなどを行っています。
最終ハンドピックは厳密で、原材料を捨てなければなりませんので、原価率を高め、かつそのための人的作業で生産量の減少を伴いますので堀口珈琲にとってはつらい作業です。
狛江店の風景を見れば、それが25年の歴史というか伝統です。

 

 

生産者とのリレーションシップの中で、厳しい品質をリクエストし、できるだけ欠点のないものを求めていますが、多くの生豆を扱っていくと、現実はそう単純かつ簡単ではありません。
特に未熟豆は生豆の段階ではわかりにくい面もあり、焙煎後の方がチェックしやすくなります。
生産量の少ない一部の自家焙煎店を除き、大部分のロースターは焙煎後のハンドピックなどは行いませんし、米国のサードウエーブといわれている会社などもそんなことはほぼしていません。
ここに品質の差も生じます。
 

 

さて、焦げや煙に支配されない深い焙煎で香味を表現するには、新鮮な生豆、標高が高く脂質の含有量が多い生豆などの方がその可能性が増します。
中米の生豆が標高により格付けされるのはある程度理にかなってはいます。
一般的には、コマーシャルコーヒーの脂質を15%前後とすると、標高の高い優れた産地のスぺシャルティは18%前後にもなります。
脂質は、官能的には舌に粘性をもたらしますので、高ければよりボディ感を感じることができます。

 
また、ダクトが正しく設置され、排気コントロールが十分な焙煎機で、かつ適正量を投入すればなおクリーンな香味の焙煎豆が作れる可能性は増します。
したがって、焙煎の「基本のき」は、どのようなコーヒーを作りたいか?であり、そのためにはどのような生豆が必要で、どのような性能の焙煎機が必要かということになります。

 

 

 

経験上、深い焙煎で産地の個性の表現は極めて難しく、生豆の選択に経験が問われます。
堀口珈琲では様々な種類の生豆を購入しています。
年間で100種以上になりますので、夫々の生豆の適応焙煎を見極めなければなりません。
みな同じ焙煎でよければこんなに簡単なことはありません。

 

 

 

画一的な焙煎も可能ですが、年間を通して生豆は経時変化していますし、同じ国でも生豆の個性は異なりますし、夫々どのようにするかを決めなければなりません。
したがって焙煎者には、熟練という経験、カッピングスキル、そしてセンスが問われます。

 

 

 

シティでもフレンチでも焙煎の幅はありますので、すべてが同じではありません。

焙煎のプロファイルに基づき、時間、温度、排気の状態などを総合的に微調整しながら最終的には5感で焙煎しています。設定した条件で焙煎するだけでしたら楽ですが面白さはありません。

 

 
同じケニアのシティでも、香味の表現の為に微妙な焙煎の違いがあります。
シティの場合であれば、焙煎機の中で2度目のハゼの瞬間に出す場合もあれば、焙煎機から出した時にハゼ音がややするくらいの場合もあれば、よくはぜるくらいで出す場合まで、最もよい香味が表現できるようなポイントで焙煎をしています。
フレンチの場合はそれがもっと難しくなります。

 

 
焙煎機そのものは素材を炒るだけの単純な構造ですが、そこに香味を作るという官能の世界が入り込みますので、機会を操作するという厄介で楽しい世界が広がります。
最近はやたらと豆の種類が多いので、堀口珈琲の焙煎担当者は鍛えられ、スキルが高いと思います。