パパ日記

ケニアフレーバーとは何ですか?

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久しぶりに素晴らしい焙煎のケニアを体験しました。
カイナムイは、キリニャガ県の多くのファクトリー(水洗加工場)での中でも突出しています。

2010年から2015年頃のこのファクトリ―の風味は世界中のコーヒーを圧倒していました。
MediumからFrenchローストの幅で焙煎しても風味のぶれないコーヒーはゲイシャ種よりも貴重でした。

 

昨日久しぶりに飲みましたが、適度のFrenchローストでその果実感の特徴がよく出ています。
焙煎を間違えると、おいしいのですが過剰な黒系の風味(乾燥プルーンと微細なスモーキーさが合わさった)が伴います。
今回のキリニャガは、豆の段階から香りが高く、粉にすればフレグランスがよく、抽出液のアロマもよく、フランスの上品な乾燥プルーン、甘い巨峰、ベースに柑橘果実が潜み、旨味も感じます。やはりケニアは素晴らしいと再認識させてくれました。

焙煎が良いのも付け加えておきます。。

 

個性的な風味故に世界中の多くの生産者が、このSL種を求めて植えるのですが、このケニアフレーバーは出ません。
この風味が何故生じるのか?を追求したく研究を始めたのですが、気候条件、土壌、品種、精製、乾燥などのプロセスを見てもわかりません。水のきれいな発酵槽の方が、よい有機酸その他が生じるとの研究報告もあり、水がよいからとも考えられますが、検証は困難です。

ブルゴーニュのワインのようにテロワールというしかないのでしょう。

SL種の特有の香りには、あらゆる果実の風味が含まれますので、このコーヒーのMediumからFrenchのコーヒーを飲むことは、SCAのフレーバーホイールを見るよりはるかに重要です。

ケニアのSL種の香気成分の特徴は、Ethyl acetate(酢酸エチル)のようで、エーテル、フルーツ様香気です。
フルーツ香気の中で主なものはパイナップルで、それはゲイシャ種のパイナップル香のと同じですが香気成分は微妙に異なります。
このエーテル臭は強いとアルコール発酵臭にも近く、発酵したNaturalやanaerobicに多くみられす。
したがってこの臭気があるものはNGとします。

したがって、このEthyl acetateの量がフレーバーに影響しますが、しかしことは単純ではなく、カイナムイのフレーバーはEthyl acetateの閾値と他の成分とのバランスが生み出すものです。ここから先の検証は気の遠くなるような労力が必要ですし、それでも良い結果が出るとは限りません。
このEthyl acetateが他のどのような成分と絡み、このケニアフレーバを醸し出しているかは、今のところ謎です。

さて、KAINAMUIの2012-13Cropには、テイスティング会(成城学園で行っていた)でSCAA方式で88点(Mediumロースト:ライム、オレンジ、繊細、甘い余韻)を付けました。本来であれば90点以上をつけるべきでしたが、当時の世界的な評価コンセンサスに基づいてつけました。

そこで、2019-20Cropでは、堀口式評価基準で47/50 点を付けました。(Cityロースト:オレンジにプラムなどの赤系の果実が残る、華やかでクリーンで上品、甘い余韻で香りも際立つ)
これをSCA方式に換算すると94点になります。
両者の間には統計学上の相関性(r=0.8以上)があることは検証済です。

今回の2020-21Crop のFrenchでは、48/50 点のスコアを付けましたので、SCAに換算すると96点になります。
適応出来る焙煎度の幅が広いためスコアは高くしています。

但し、スコアについては、私の個人的なものとお考え下さい。
スコアは、とらえ方により、誤解を招く可能性があるため、個人的な記録として留め、本来は公表しないものですが、
Best of Panama のゲイシャ種の最高点が94~95点になっていますので、それとの比較ということであえて出しました。

Frenchでこれだけの香りが残っているのは、生豆のポテンシャルがよいことと、焙煎がよいことでしょう。
同じ豆を使用しても、Frennchの場合は焙煎者により風味差がかなり出ますので、

Frennchローストは難しいということもご理解ください。