パパ日記

おいしいコーヒーはピッカーが作る

昨日のコーヒー文化学会での、ハワイの農園主の山岸さんの話は、美味しいコーヒーはクリーンであり、それはピッカーが生み出すということでした。ご自身は腰を痛め、現在は自家消費分を栽培しています。

「おいしいコーヒーはクリーン。そのためにはピッカーが完熟した身を摘む必要がある。
1日300~400ポンドの収穫ができるが、きれいに積むには1日200ポンド=100kg。
(100kgのチェリーから20kgの生豆しかできません)
完熟したよいチェリーを摘むのは大変な作業であることを知ってほしい。
今後、ピッカーの賃金が安すぎ、公正な値段を支払わないとコーヒーを摘むピッカーがいなくなる。ピッカーがきれいに積んでいるかが価値基準である必要があり、ピッカーに賃金を払う仕組みを作らないといけない。
そのためには、消費者がクリーンなコーヒーの風味を消費者が理解できるようにならなければならない。略」

農園主であり、自らピッピングする立場からの見解でした。

 

過熟や虫食いなどの欠点豆の混ざらない完熟したコーヒーから濁りのないクリーンなコーヒーができます。
クリーンなコーヒーはピキッキングにあることは間違いないのですが、現実はそうではなく、そのためにチェリーの選別、パルピングでの選別、スクリーン選別、比重選別、機械選別、さらにはハンドソーティングをします。
しかし、これらの作業は、完熟したチェリーであれば手間を減らすことが可能になります

しかし、市場はディスカウント市場ですので、生産コストにしわ寄せが行きます。そのためスペシャルティコーヒー市場が約20年豆から構築されてきていますが、この市場も価格競争という市場原理の中で伸び悩みます。

コーヒー産業の維持には、品質向上のサイクルを築く以外にないのですが、現状は安いカネフォーラ種(ロブスタ種)の生産量比率が40~45%程度に増加し、アラビカ種の生産比率が減少しています。
そのため日本の生豆輸入の比率もカネフォーラ種が40%程度もしくはそれ以上になりつつあり、価格競争が顕著です。
まだ、何とかSCA方式で80点以上の一般的なスぺシャルティコーヒーを飲むことはできますが、SCA方式で85点以上の豆を飲むことがだんだんできなくなっていきます。

このことは本当においしいコーヒーを体験できる機会の減少を意味します。

価格が高くなっても、消費者がクリーンコーヒーを求める市場が構築できないと、コーヒーはまずくなり、コーヒー離れさえ起きる危険性をはらんでいます。品質に対価を払う市場を構築、維持できないとコーヒー産業の先行きは暗いと考えます。

おいしさは品質からしか生まれません。
品質を追求する農園主、輸出会社、輸入会社、ロースター、自家焙煎店が生き残らなければコーヒーのおいしさは維持できないでしょう。おいしいコーヒーを提供していくという理念を維持、まっとうすることはコーヒー産業の維持に寄与すると考え、テイスティングセミナーを開催しています。

 

 

なお、コーヒー文化学会の30周年記念講演を、私がSCAJの展示会で行います。
「スペシャルティコーヒーを 官能評価と理化学的数値及び味覚センサー値の相関性から検証する」というテーマで90分話します。

品質の優れたおいしいコーヒーの定義付け(例えばスペシャルティコーヒーもその一部)が、曖昧になりつつある中、もしくは曖昧にしたいコーヒー関係者がいる中、あえてこのテーマにしました。